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楽しんで頂けると嬉しいです!
(私は一体なんなだろう)
吸収する力ってどういう事なんだろう。
アッシュには心配するなって言われたけど、時間が経つにつれて不安で仕方がない。
妖精たちに聞いてもそれ以上は話してくれないし、レオ様には会えなかった。
お兄様に相談しようにも帰って来ない。
夕食の時間が過ぎてしまってもお兄様は部屋に帰って来なかった。
帰ってきた時お腹空いていたら食べられるように部屋にあった食べ物で簡単なサンドイッチを作り、アッシュと別れてから気分転換にとナナと作ったクッキーを机に置いた。
少し待っていたがお兄様は帰って来なかった。
私は部屋に戻りベッドに横たわった。
『ちょっとは、本気でアッシュの事考えてみたら?』
昼間のジョナの言葉を思い出した。本気で考えても私は誰とも恋なんかしないって思っていたし、そんな風に見られているとも思わなかった。
アッシュは小さい頃から一緒にいたし、側にいてくれるのが自然になっていた。
『アッシュって婚約者いなかった?』
婚約者か……。少し胸に痛みを感じたけど気付かないふりをする。
アッシュからそんな事聞いた事ない。ゲームでは居たような気がする。
思い出した時は確かに覚えていたはずなのに、なんでまたモヤがかかったように思い出せなくなったんだろう。
いろんな事が起こり過ぎて整理する時間も、誰かに相談する時間も欲しい。
(強くなりたい)
自分の事なのに私には解決出来ないのがもどかしくて仕方がない。
明日は、この力について記載されている本がないが調べてみよう。
ジョナも、童話の話であったって言っていたし。
ふと自分の掌を眺める。
今でも自分にあんな力があったなんて、全然実感がわかない。
アッシュはお兄様に話したって言っていて、お兄様はどう思っただろうか。
ため息をついて、ふとある考えが浮かんだ。
もしかしたらと思い、炎を出し聖なる光で周りを覆う。聖なる光はシャボン玉のように浮き炎はその中心で灯る。
(2つの力を組み合わせることが出来るのね)
しばらくするとスッと消えた。
初めて意識して力を使ったからなのか急に眠気が押し寄せてくる。
私は抗わずそのまま目を閉じた。
朝日が眩しくて目を開ける。
窓を見ると、鳥が飛んでいるのが見える。
気持ちよさそうに飛んでいて羨ましく思う。
窓を開けて冷たい風を感じた。
妖精たちはいつものように私の周りを回る。
『リアーナおはよう』
『無理しないでよ』
『おはよう。レオ様、まだ来れないんだ』
(おはよう。レオ様には聞きたい事がいっぱいあるのに)
『もう少しだからレオ様を待っていて』
(わかったわ)
悲しそうな顔をしている妖精たちに笑顔で答えた。
自分の部屋を出るとダイニングテーブルの上にはお兄様からのお礼の手紙が置いてあった。
『リアーナおはよう。昨日はサンドイッチとクッキーありがとう。とても美味しかったよ。アッシュから、リアーナの力の事について聞いたよ。突然の事で不安で心細いと思う。兄様が側にいてあげられたら1番良いんだけど、生徒会の仕事が忙しくてリアーナの側にいられないんだ。本当にごめんね。だけど、アッシュとディオが側にいてくれるから大丈夫だよ。今日もリアーナの顔を見て学園に行きたかったんだけど早く出る事になったんだ。おはようの挨拶ができなくてごめん。帰りも遅くなると思うから、ちゃんと眠るんだよ。いつもリアーナの事を思っているからね。愛してるよリアーナ』
お兄様の手紙を見て寂しく思ってる自分がいた。お兄様に会えると思っていたのに。話を聞いて欲しかった。でも、こんな朝から仕事なんてお兄様も生徒会が大変なんだ。
(我がまま言ってはダメね)
部屋に戻り手紙をそっとしまった。
寂しさを抑えて、ナナが来るのを待った。
ナナと朝食を食べ終え一息しているとエマが立ち扉を開ける。
「おはよう」
(アッシュおはよう)
アッシュが笑顔で挨拶をする。昨日の難しい顔したアッシュじゃなくて安心する。
「今日の予定はないから、リアーナが行きたいところに行こう。どこか行きたい所あるか?」
(図書館に行きたい)
「わかったよ。用意が出来たら行こうか」
これを読んでと紙を渡された。
『リアーナの力については誰にも言わないで欲しい。知っているのは俺とファディスとローズ・ダイナとジョナ・ダイナだけだ。今はディオにグライアドにもターラさんにも言わないで欲しい』
読み終えアッシュを見て頷いた。
やっぱ私の力は普通ではないのかと改めて思った。
私の不安に気付いたのかアッシュは私の頭を撫でて優しく笑う。
不安が全てなくなったかとなくなってないけど、側にいてくれるだけで気分が軽くなった気がする。
急いで支度をして部屋を出る。扉を開けるとディオが扉を開けようとしていていた。
「お嬢様、おはようございます。ファディス様に言われて参りました。お嬢様の力についても教えて頂いております」
「ファディスの奴、俺だけじゃ安心できないのかよ」
一気に不機嫌になったアッシュを避けて私の前に来て手を握る。
「お嬢様、体調はいかがですか。何かあれば私に言って下さい」
(ありがとう。私は大丈夫よ)
アッシュがディオから、握っていた手を離させ自分の手を繋ぐ。そして、私を連れて先に歩いて行く。その後ろからディオが付いてくる。前にもこんな状況になったなと思いながら図書館に向かった。
図書館に向かう途中に実習室に寄ってもらった。
(ごめんね。見て欲しいものがあって)
昨日の夜に為めした2つの魔力を合わせた魔法を作る。炎を出し聖なる光で包む。昨日の夜よりも炎が強く明るく見える。
「こんな事まで出来るのか」
「凄い」
(これは普通に出来る事なの)
私が1番聞きたかった事。私の力は普通なのかどうか。珍しいだけなのか本当に危ない力なのか。
「珍しく思います。二つの魔法を持てる人は限られます」
「俺も二つ使えるけどここまで繊細な事は出来ない」
使い方によっては大変な事になるかもしれないと感じた。2人の戸惑った顔も不安になる。
早くジョナの言っていた童話の本を図書館で見つけなければ。
実習室から出るとアッシュに手を繋がれるが手が冷たいのが気になった。
アッシュの顔を見るけどいつもと変わりはない。
アッシュと視線が合う。
「リアーナは何も心配しなくて良いよ」
そう、アッシュは笑って言ってくれたけど、一瞬難しい顔になったのを見逃さなかった。アッシュも不安なのかもしれない。後ろを歩いているディオも何か考えている表情をしていた。
図書館に着くと手を離してくれて、頭を撫でられる。
「あまり離れるなよ」
「何かあったら言って下さい」
アッシュもディオも自由に本を見ている。
私が普通に本を探していると思っているのだろう。
私がなんの本を探すのかは言わない方がいい気がして、いろんな場所を歩く。
いろんな本を手にして童話が置いてある棚に行く。棚の中で一際目立っている一冊が光ったような気がしてその本を手に取る。
ドキドキしながらパラパラとめくると、絵に私が昨日作った魔法のようなものが描かれている。
(この本かもしれない)
取り敢えず手に持っていた本と本の間に入れる。
あまり重たくないはずなのに何故か重く感じた。
読んで頂きありがとうございました!




