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13 ファディスside

楽しんで頂けると嬉しいです。

 


「お父様その子は」


「お前の妹になるんだ」


「名前は」


「リアーナだ」


「リアーナはだって……」


「私とお前の約束だ。ファディス。母様にはリアーナは生きていると言ってくれ」


「……うん。リアーナに似ているね」


「この子に会えたのは天の思し召しだ」


「リアーナ。……可愛い」


「この子はお前が守ってやるんだ」


 ――私はその子に合わす顔がないからな






 生徒会室の扉を思いっきり開け、慌てたアッシュの顔を見て嫌な予感はしていた。

 そして納得した。リアーナが特別な子だという事を。



「吸収なんて能力が実際にあるなんて」


「俺も信じられない。でも確かに俺の炎を操ったんだ」


「ほかの国に知られたら大変な事になる」


「おとぎ話のようにか」


「あぁ。あの話は昔に起こった事だからな」


「七賢者に伝わる文献か」


 アッシュの言葉に屋敷の隠し扉の向こう側にある紫の表紙の文献を思い浮かべる。


「この事は絶対に公言させるな。このままリアーナを学園に置いとけない」


「リアーナの気持ちはどうするんだ。特殊な能力の持ち主で表には出たらダメだって言うのか」


「……そうだな。わかった。僕が卒業するまでだ」


「了解。俺がリアーナを守るから」




『リアーナが好きだから全力で落としに行くって事』


 アッシュの以前言った言葉が頭に響く。

 わかってる。僕がどれだけ想ってもこの気持ちは伝えてはいけない。

 僕とリアーナは兄妹なんだから。

 堂々と思いを告げられるアッシュが羨ましい。


『頼んだ』と言うべきか『僕が守る』と言うべきか。正解は前者なんだろう。

 だけどその言葉がなかなか出てこない。


「……頼んだ」


「任せておけよ」


 清々しいまでの笑顔で、生徒会室から出て行くアッシュを恨めしく思った。


 自分の腕を額に押し当て背もたれに体を預けた。

 嫌でも現実を受け入れなければならない。

 どうしたらリアーナは幸せになるんだろう。


 考えても考えても、自分じゃない奴の隣で笑っているリアーナしか想像できなくて苦しくなる。

 いっその事リアーナと一緒に命を落とせばと考えて頭を振る。


 大事に妹として接してきたんだ。

 自分の思考に苦笑いをして机に向き合った。


 手紙を書き、手紙に風の魔法をかけ窓を開けて空に飛ばす。手紙は鳥に変化して空を羽ばたいて行く。


(あの人はどう思うんだろうか)


 羽ばたいて行く鳥を見てそう思った。





「おにーさま」


 あの日から僕は君のお兄様になった。

 君は何も疑問に思わず笑顔で生活していた。

 可愛くて可愛くて仕方なかった。

 妖精が見えると庭園を駆け回り、何かあるとすぐ自分のところに来る。

 笑顔で僕の後ろをついて来る姿は思わず抱きしめてしまうぐらい愛しかった。


 2歳しか違わないのにとても幼く見えた君は、年を追うごとにどんどん綺麗になっていく。

 子供ながら、好きになってしまうのも当たり前のように感じていた。

 アッシュも、君を好きになっているのをわかって焦ったりして。

 だから、距離を置こうとした。

 これ以上好きになりたくなかったから。



 あの事件が起こるまでは……。


 君は自分が母親を殺してしまったと思っているかもしれない。母親は君を守れた事を喜んでいたんだ。優しかった母親はとうの昔に壊れていたのに、君を助け出した時に正気に戻った。

 わかっていたんだ。君が本当のリアーナじゃない事を、ごめんなさいと謝って息を引き取った母は優しい顔をしていた。


 だから、だれも君を責める人はいないんだよ。

 君が悲しそうに笑うのを見て心が張り裂けそうだった。


「気分はどう?大丈夫?」


 無理して笑顔になっている。前よりも、大人びた印象だと感じた。

 僕が側で守らないといけないと思ったんだ。

 リアーナを守れるのは自分だけだと。

 でも、そうじゃなかった。

 今はアッシュもディオも居る。





 夕食の時間をとうに過ぎ、生徒会室から自分の部屋に戻った。ずっとリアーナの事を考えていて仕事がはかどらなかった。夕食も食べるのを忘れてどうしようかと思っていた。


 ダイニングテーブルの上にはリアーナが作ったサンドイッチやクッキーが置いてある。


『夜遅くまでお疲れ様。夕食にはならないかもしれないけど食べてね』


 メモを見て、嬉しくて顔を綻ばせた。

 心が満たされていく。

 サンドイッチを、一口食べる。


「美味しい。リアーナありがとう」


 美味しくて、あっという間に食べ尽くしてしまった。



 リアーナの部屋をゆっくり開ける。

 ベッドで寝てるリアーナに近づいた。


(いろんなことがあって、ぐっすり眠れていなんじゃないか)


 少し顔色が悪い気がする。頬をそっと触る。


「リアーナが望めばなんでもしてあげる。だから、1人で悩まないで欲しい」


 頬を触った手を頭に移し、ふわふわな髪に絡ませる。昔から触っていた髪なのに、一段と柔らかくて綺麗に見える。


「……誰のモノにもならないで」


 自分が放った言葉に驚き、リアーナの部屋を出た。

 声に出してはいけない事を、また言ってしまった。

 さっきのリアーナの髪の感触を思い出し、1人で顔を赤くしてしまう。


「どうしてだろう」


 気持ちが抑えられなくなってきた。


 リアーナと距離を置こう。

 僕は一旦冷静にならなくてはいけない。







読んで頂きありがとうございました!

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