12
ローズに力を入れてもらった、その日の午後。
(ジョナなら何か知ってるかもしれない)
そう思ってお兄様に無理に許可を取りジョナの部屋に行く。
心配だからとお兄様とアッシュが相談して、アッシュが部屋の外で待機してくれる事を条件に許可してもらった。
ジョナは突然の訪問に驚いていたが、私の問いに目を丸くしもっと驚いている。
「えっ!何その設定」
目の前にいるジョナもビックリしていて、わからないみたい。
(私にもわからないの)
「吸収能力かぁ。どっか隣国の姫が持ってたような」
ジョナは箱の中からノートを取り出しパラパラとめくっている。
「あぁ、あった。うーん。でも違うんだよな。これ童話の話だった」
(何?)
ノートを見ながら首を傾げてるジョナの服を引っ張る。
「あぁ、ごめん。童話の本にそんな話があっただけだった。うーん。本当にわからないな。やっぱり隠し設定とか」
(そうかも。ジョナでもわからないなら仕方ないね)
「ごめんね」
ジョナでもわからないと私なんてもっとわからない。私は深いため息をついた。
「リアーナ、この世界の事思い出したんだよね」
(リアーナに関しては余り覚えてないの。それに、思い出した記憶も少しづつ消えて来てるみたいで。誰にどんな事があったの少しかわからない部分もあって)
紙に書いて見せると不思議そうな顔をしていた。
「私ははっきり覚えてたから、さっきのノートに日本語で書いてたんだ。生まれた時から、前世の事覚えてたから」
少し悲しそうな顔をしたジョナが一変しニコニコと笑ったしたジョナの顔が近い。
「それよりも、アッシュと何かあった」
突然の言葉にびっくりしてあたふたする。
「やっぱり。……アッシュの目が私を殺しそうなぐらい凄かった」
一瞬、ジョナは遠い目をしながら私に詰め寄る。
ジョナの圧に負けて、私は紙にアッシュから告白された事を書いた。
「うわぁ。本当に?リアーナはどうなの」
(昔から一緒にいたし。アッシュが近づいたり触れたりするとドキドキする。でも、自分の気持ちがわからない)
書いて文章にするとなんか恥ずかしくなる。ジョナが書いた紙を覗いてニヤニヤしてる。
「そっかぁ。アッシュは一途で思ったら一直線だもんね」
ジョナは1人で妄想の世界に飛び出していった。
私は面白くてジョナの話を聞いてる。
「本当にゲームとみんな性格少し違うのよね。ローズを売り込みに行った時にはみんな興味示さないし。普通1人ぐらい聖なる光で興味持つよ。でも、リアーナがいい人で良かった。私1人で寂しかった。こんな話したくてもできないもの」
初めて会ったときのジョナとは思えないほど柔らかい笑顔に、なんだかホッとする。
「そう言えば、アッシュって婚約者いなかった?」
(え?)
突然のジョナの言葉にアッシュがゲーム内で婚約者と言い争いしていたのを思い出す。
でも、今の私は聞いたことない。
(聞いた事ない)
「じゃ、いないのかもね。もしかしたら、昔からリアーナ一筋だったりしてね」
(ジョナ)
「ちょっとは、本気でアッシュの事考えてみたら?」
ジョナの言葉にアッシュの笑顔が思い出されて顔が赤くなる。
こんな時に思い出さなくても。
「今のリアーナならみんな好意を持ってる気もするわ」
ジョナの言葉が終わるや否や、ジョナの顔色が悪くなり後ろを振り向くとアッシュが冷たい目でジョナを見てる。
こんな表情もするのだと驚いた。
「リアーナちょっと遅いよ。ジョナ・ダイナもう話はいいよね」
「はい!」
「リアーナ行くよ」
ジョナは青い顔で元気良く返事をすると、アッシュは私を連れて部屋を出ていく。
「あの子に相談できて俺に相談出来ないの」
エレベーターに乗ると同時にアッシュが少し怖い表情で聞いて来た。私の頬を触るアッシュにビクッと驚いてしまった。
「……ごめん。恐がらせたかったわけじゃないんだ」
優しく笑い私の頭を撫でる。
急にジョナに会いたいと言い出した私を不安に思ったのだろう。
能力の事を言っても良いのだろうか。ジョナには考えなしで話してしまったがこの世界の事を知っていたから。でも、アッシュになら話しても大丈夫かな。
(誰もいない場所で聞いてくれる)
「うん」
嬉しそうに笑うアッシュを見て私も少し嬉しく思う。
アッシュの部屋で話すことになりアッシュに手を握ってもらう。
アッシュの炎の力も私に取り込めるんじゃないかと思いアッシュに力を少し入れてもらう。
「本当に大丈夫?」
(うん)
頷くと少しづつ力が入ってくるのがわかる。
アッシュが手を離すと私は指先に集中する。
指先に炎が灯る。
「俺の力?」
(吸収の能力みたい)
スッと火が消える。アッシュの顔を見ると何か考えているようで頭に手をあてている。
「おとぎ話の少女みたいだな」
(おとぎ話?)
「リアーナの力の事を知ってるのは俺とジョナだけ?」
(ローズも。ローズが私に力を入れてくれたからわかったの)
アッシュは後ろを向きまた考えてる仕草をする。
凄く不安になる。
「そうか……。危険な能力かもしれない。まさかリアーナがなんて。……ファディスには伝えた方がいいか」
アッシュは私の方を向き、柔らかく笑った。私を安心させるみたいに頭を撫でる。
「リアーナは心配しなくて大丈夫だから。何かあったら俺が助けてやるから。そんな不安そうな顔するなよ」
優しく抱きしめてくれる。
一瞬アッシュが難しい顔をしていて不安になるが、私は頷くだけだった。
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