8駅目
駅を離れていって、グリサ市内の街並みを動いていく。
レトロな街並みが見るのを飽きさせない。
初めてだからと思いますけれど。
グリサ市内の駅を何個か過ぎていくと、巨大な城壁が。
「これって……」
「グリサの街の境界。かつては東西の城壁で、侵略者から守っていたらしいわ」
「へえ」
こうして残っているなんて。
ちょっと面白いですね。
城壁を過ぎると、建物が少なくなっていき、田園が広がっていく。
完全に都市を外れたみたい。
列車はちょっとした街に作られた駅に停車していった。
乗客が入れ替わっていく。
大抵は短距離の。
でも、この列車って快速みたいで通過する駅もちらほらありました。
「綺麗!」
やがて二時間位して小高い丘を登り切ると、左の窓から海が見える。
南の海ですね。
と見ていると、カーブの先に都市が見える。
「あれがマルセイブールですか?」
「ええ」
時刻表の時間的にも、ここなのですね。
列車は街中に入っていく。
建物は、新しくて反射するようなビルがいくつも並んでいる。
所謂摩天楼といえるような、高層ビルも。
流石、国内第二の都市と言える感じ。
レトロなグリサと現代的なマルセイブール。
どちらも良い街みたい。
「ご乗車ありがとうございました。終点、マルセイブールです」
列車はこの街の中心駅に。
駅舎は白が美しい現代的。
ドアが開いて、最後に降りる。
「ふう」
「疲れているの?」
「まあ……」
三時間くらい乗っていましたからね。
足が疲れ気味。
「さて、荷物を持っていくわよ」
「はい……」
駅の事務室へ。
入ったら、事務室奥にあるボックスの前へ。
メルザスさんが鍵を開けて入っていた封筒を取り出す。
「じゃあ、この鞄に」
持ってきた黒い鞄に書類を入れる。
そして鍵を掛けました。
おそらく勝手に開けないようにするためでしょう。
まるで警備員がお金を運ぶみたいな。
これくらい厳重じゃないといけないですからね。
「次の列車は……もうすぐね」
「じゃあ……」
「グリサに戻るわ」
「あ、あの……」
「どうしたのかしら?」
「きゅ、休憩は?」
とんぼ返りで帰るのって、結構……
「したいけれども、この荷物を届けてからね」
そうですよね。
下手に休憩をして、紛失でもしたら大事ですし。
またホームに戻って列車へ。
乗って来たのとは違って、そこそこ新しそうな電車。
何で同じ区間で電車と気動車が走っているのでしょうか。まあ、色々な事情があるのでしょうけれど。
その列車に乗って発車するのを待つ。
しばらくして列車は、マルセイブール駅を離れていく。
アナウンスを聞くと、急行みたいで行きよりもスピードが速い。
ちょっと大丈夫かと思ってしまう。
何となく貧乏性なので……
「これで大丈夫ですか? お金が掛かりそうですけれど」
「まあ、なんとか。仕事で乗っているから」
駅をいくつか通過していって、この調子なら行きよりも早く着きそう。
でもまた疲れてしまう。
だって座れないから。
「大丈夫?」
メルザスさんが心配そうな表情をしている。
「ええ……」
苦笑いで答える。
ああ、早くグリサに着かないかな。
窓の外を行きで見た景色。
けれども、まだ新鮮に感じる。
まだ一回だからだと思う。
何回も乗っていれば、この景色が見慣れたものに変わっていくのかな。
新しい景色から、見慣れた景色。
それになるのはいつぐらいかな。
半分呆けながら考えていたのでした。