5駅目
通った瞬間、世界が変わったみたいな感覚に。
多くの列車が停まっていて、国内や国外へ行こうとするお客さんでごった返している。
ガヤガヤと人が喋っている声が耳に入る。
とてもにぎやかで活気がある。
「わぁ!」
前は一乗客として駅を見ていたけれども、それとは景色が違っている。
まるで神様になった気分。
「一番から四番ホームは、グリサ市内を走る交通局のホーム」
そこには、一両に三つもドアがあり、いかにも近距離で走る列車が。
スーツを着た乗客が乗り降りしていることからも、さらに際だたせている。
「他は世界鉄道のホーム。グリサ駅から西が上りで東が下り」
多くのホームには、一両に対してドアが一つや二つだけで、中距離や長距離を走るのが分かる。
スーツケースを持っているお客さんもいる。
「十六番ホームには、アランジェグラードへ行く列車が停まっているわね」
アランジェグラードは隣国、レーテジア帝国の首都。
そこへ行くのは、流線型が美しい、最新型の列車。
確か図鑑では、二百キロ以上は出ていたっけ。
「すごい……」
「やっぱり列車が好きなのね!」
「そうですよ! だから入ったのです!」
ちょっと興奮気味。
やっぱり、意気込んでしまう。
「へえ。じゃあ続けるわね」
ホームの説明が終わったら、今度は駅の事務室へ。
「失礼します」
そこには、学校の職員室みたいに事務机があって、数人が書類を作ったりしている。
「何をしているのですか?」
「帳票を作っているのね」
まるで事務員みたい。
でも、切符とかを調べていて、駅であるのを実感させる。
「こっちよ」
奥の椅子には、金髪の女性が座っている。
そこそこ年上のような感じ。
「あらモンパルナスさん、どうしたの?」
「お疲れさまです。新しい方が来たのでご挨拶を」
「こ、国府津舞衣です。よろしくお願いします」
「よろしくね。私はグリサ駅長のユーリ・メイです」
駅長だったのですね。
若そうに見えるけれども、すごい人みたい。
「じゃあ、行きましょ」
続いて案内されたのは、別の部屋。
事務机やパソコンが置いてある。
「ここは?」
「特別配達人用の事務室。ここに出勤することになるわ」
奥の部屋にはロッカーが並んでいる。
少し開けた所にテレビと椅子が。
「こっちは、更衣室兼休憩室。服や荷物はここのロッカーに入れてね。これがここの鍵とロッカーの鍵」
二つの鍵を渡された。
無くさないようにしないと。
「分かりました」
「あら、新人さん?」
女性の声で振り返ると、銀髪ポニーテールの女性がいました。後ろには、黒髪の少年も。同じようなクリーム色の制服を着ている。少年は、スカートがズボンですけれど。
「はい! 新しく入った、国府津舞衣です、よろしくお願いします!」
「わたくしは、ゼゼ・レルーテ、貴女と同じく特別配達人ですわ」
お嬢様みたいなしゃべり方。
姿もそんな感じ。
ちょっと憧れちゃう。
良いところで生まれたのですね。
「僕は猪谷トウヤ。ゼゼとパートナーなんだ」
黒の短い髪。
そこそこがっしりとした体つき。
どこからどう見ても男の子。
元気そうな感じ。
まるでハーレムみたいな感じ。
だって、女性ばっかりだから。
「メルザスと一緒ということは、新しいパートナーという事でよろしいですのね?」
「ええ。明日から働くのよ」
「よろしくおねがいします!」
頭を下げる。
「こちらこそお願いしますわ。頑張ってくださいね」
にこっと微笑んでいる。
少し嬉しい。
「はい!」
「そろそろ、列車の時間だよ」
「では、行きますわね」
「じゃあ、また」
二人は事務室を出ていった。
「出勤した時には、ここにあるパソコンで出勤をして」
「分かりました!」