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特別配達人  作者: 東都新宮
1/19

1駅目

「はぁっ……はぁっ……」

 私は全速力で走っていく。

 歩いていては、間に合わない。

 このままでは……

 守らないと……

 失ってからでは遅い。

 間に合ってください……

 まだ守れるうちに……



「へえ、三等車で始発駅から終点のグリサまで向かうなんてね」

 夕方、国境の駅を過ぎてすぐ、乗ってきた女性に声を掛けられました。

 黒髪ボブで、私と同い年といえる感じの女性。

 瞳は緑色。茶色い軍服っぽい服を着ている。

 私の目の前にある、座席兼寝台に座っていた。

「はい! 折角だから、通しで乗ってみたかったんです!」

 感心したような表情をしている。

 ちょっと嬉しくなってきちゃいます。

「でも、この列車ってこの国に入ってから、首都のグリサまで半日以上掛かるよね?」

 結構停まったりするから、時間がかかる。

 速達列車だったら、その半分くらいで済む。

「まあ、比較的安いのもありますけれど……」

「そうよね。これって、寝ている間にグリサに着くのだから」

 皮肉っぽい言い方。

 でも、私的にはこの列車はあった方が良いけれど。

「あの、ところでそちらもグリサに?」

「ええ。三等車なのは、気まぐれね」

 やっぱり。

 グリサって、この国の首都だからね。

「あと、服が軍服っぽいですけれども、もしかして軍の人ですか?」

 ちょっと気になったから。

 そうだったとして、もし下手な事をしたら、逮捕されそうだし。

「違うわ」

 即答。

 ああ、良かった。

 そうだと思っていたけれど。

「まあ、この服ってオシャレのつもりで着たのよ」

「へえ……そうなんですね」

 ちょっと変わった人なのかな。

「ところで……グリサへは何をするのよ?」

 今度は私への質問。

 実は聞かれたい質問だったりする。

「それは……鉄道で働くためです!」

 趣味を話すみたいに、次々と言葉が出てくる。

「どこなの?」

「世界鉄道交通事業ですね」

「へえ、交通事業!」

 その名前を言った途端、目を輝かせて私をジロジロと見ていた。

 知っている人には知っているけれど、少しマイナーな企業。

 この人も鉄道好きなのかな?

 私以外にも居るなんて意外ですね。

「それは楽しみでしょうね」

 まるで自分の事みたいに嬉しそうにしている。

 ひょっとしたら、親しい人が交通事業で働いているからかな?

 だとしたら、この出会いって不思議。

「でも……」

「どうしたの?」

 私が思っている不安が口に出てきてしまう。

 会話が弾んだから、うっかりと。

「一緒に働く方が、少々ガサツで怒りっぽいみたいでして……」

 その瞬間、嬉しそうだった顔つきが険しくなってしまいました。

 まるで、自分の事みたいに。

 どうしてでしょう。

 別の人だと思うのですが。

「ガサツ……へえ、そうなのね……」

 わなわなと頬が震えている。

 ちょっと怖いです。

 もしかして、言ってはいけない事でも言ってしまったのでしょうか。

 失敗しました……

「あ、あの……」

「ちょっと考え事があるから、話しかけないでくれるかしら」

 そう言うなり、女性は窓を向いてしまい、それ以上は会話が出来なくなってしまった。

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