表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/44

14話 生徒会長の依頼①


 生徒会長から襲われて、さらには襲われた時から三日たった今日、生徒会長から連絡が来てロンウェイという店に来るように伝えられた。

 そして今、その店の目の前で突っ立ている。


「うわー、高そうだな」


 俺はこんな所来たことがないので、入っていいのかと気後れしてしまっていた。

 生徒会長と会うのは嫌だし、こんなところに入るのもしんどいし、正直帰りたい。

 料理はおいしそうだから、入ってみたら意外とよかったっていうのはあるかもしれないけど。


 少しの間、そんな葛藤をして店の前でうろうろしていたが、生徒会長を放置して帰るなんてことをしたらどうなるかとか想像したくないので、仕方なく店の扉を開けた。


「いらっしゃいませ」

 

 店に入ると身ぎれいな店員が恭しく頭を下げてきた。

 明らかに場違いな人間である自分に対して不信感を出してはいないがなんかそう思われているんだろうな、なんて被害妄想じみた、けどあながち的外れではなさそうなことを考えてしまう。


「ご予約ですか」


「あっ、はい」


「お名前は」


「黒上です」


「……はい、お名前ありました。お席までご案内させていただきます」

 

 店員の後をついて歩いている俺は辺りを見回しながら、いまいち自分がこういう高級なものに興味がないためよく分からないけど、品があるレストランとはこういう場所を指すんだろうななんてぼんやりと思った。


「こちらのお部屋となります」


 店員が部屋の扉を開けた先には生徒会長がいた。

そして、俺が部屋の中に入ると店員は「ごゆっくりなさって下さい」と言いながら扉を閉めた。


「時間ぴったりですね。……ひとまず何を食べるか決めましょう。こちらがメニューです」


「ありがとうございます」


 席に着くと、生徒会長がメニューを渡してくる。

 俺は確かに時間ぴったりだけど、店の前をウロチョロしたり、少し店から離れたところに行ったりとかをしてなければ、二十分ぐらい早くついてたんだけどなと思いつつも口には出さない。……やっていること、客観的にみてあほだし。


 渡されたメニューを見ると、俺が予想していたとおり高かった。

 ただ、こんな場所での食事だなんて思っていなかったので、持ち合わせ的に一品ぐらいしか頼めなさそうだな。……どうしよう。


「支払いは私がするので遠慮なく選んでいいですよ。お願いするのはこちら側ですから」


「えっ!?いいんですか?」


 一瞬俺はおごってくれるということで喜んだけど、この生徒会長にこういう貸し借りみたいなことをするのはどうなんだと頭によぎる。

 でも、レストランに入って料理を頼まないわけにもいかないし……。なるべく安いのを頼むか……。


「黒上君、先ほども言ったように遠慮しなくていいんですよ」


「……いや、これおいしそうだから選んだだけですから」


「別に何に対して遠慮しているか言っていませんよ、私」


 生徒会長はふふっと微笑む。


「いえ、大丈夫ですから」


 言ってる自分でも何が大丈夫なのか分からないが、このまま押し通すつもりでいる。


「そうですか?しかし、これでは量が足りないですよ。これとこれ、これも一緒にどうですか?」


 生徒会長はしょうがないなという感じを醸し出しながら、メニューに乗っている三つの品を指す。


「いやー、ええっと、まあその……」


 人が厚意で選んでくれた品を遠慮するのはどうなのかなというのと、たとえ生徒会長が相手でなかったとしても俺は遠慮してしまうような値段なので、厚意に甘えるのもなと思ってどう答えればいいか分からない。


「迷っているなら選んでしまいますね」


 生徒会長は注文をするための携帯端末の液晶画面をタッチして、俺がどうにか断ろうとしていた品も一緒に注文した。


「……あのだいじょ――」


「次ここに来るときは遠慮しないでくださいね。そうしてくれると私もうれしいですから。……あと、今何か言おうとしていましたか?」


「……いえ、別に。……というか、また、ここに来るんですか?」


「ええ。今回みたいに直接話し合うときはここにするつもりですから」


「なんでですか?」


「黒上君は、私と一緒にいると目立つので嫌ですよね。ですから、人の目につかないここで集まったほうがいいと思いまして」


 腹黒で人使いが荒い人だと思っていたが、意外と人のことを気遣えるんだな。


「でも、それなら現地集合でいいじゃないですか?」


「それでは味気ないですよ。こう言う話し合いの場はあった方が今後のことを考える必要になる可能性もありますし。それに、私と黒上君はパートナーなのですから、親睦を深め合うのは大事なことです」


 あまりにも正論すぎる。

 でも、そういう正論で自分の要望を通していく感じがやっぱり腹黒で人使いが荒い人っぽいな。

 あと、パートナー言われて、これからこの目の前の人物と長い付き合いをしないといけないのかと思うと、なんでこんな面倒なことになったんだろうと考えてしまう。


「それと、高位魔術士は高額な支援金を貰えるんです。ですから、先ほども言ったようにこれからは遠慮しないでくださいね」


 今回の食事、合計で軽く十万は超えるぞ。それで余裕っていくら貰えるんだ、その高位魔術師って?

 そんなことに疑問を持ちながらも、なんだかんだうまそうな料理が来るのを楽しみにしつつ生徒会長との会話は続いていった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ