表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/44

10話 仮面の女


「お前ら、前祝いだー!!」


 並々とビールが注がれているでっかい木製のマグカップを片手に大柄な男が叫んだ。


「うおぉぉー!!」


それに続いて、その男の取り巻き達もビールを片手に持ち上げ、気分よさそうに叫ぶ。


「お頭、そこにいる女達の味見しちゃ駄目ですかい」


 取り巻きの一人が十四、十五歳ぐらいだろうか、かなりおびえた様子の子供たちに指をさし、下卑た笑みを浮かべた。


「駄目だ。心が壊れて使い物にならなくなったらどうする」


 大柄な男の言葉を聞いて捕らえられた生徒達はひどい目に遭わないとわかり安堵した顔を見せる。


「それに、依頼主のお上品な貴族様のご機嫌を損ねたくないしな」


 大柄な男の言葉に子供達はポカンとした顔をした。

 

「お前達、レミナードの平民クラスだろ。お貴族様達は、お前らのことが気にくわないらしい。それでお前らを売り飛ばしてほしいって言う依頼が来たんだ。で、俺様はその依頼を受けたって訳だ」


 大柄の男は、ニタニタとした笑みを浮かべながらレミナードの生徒たちに言い聞かせる。

 それを聞いたレミナードの生徒達はパパー、ママーと叫びながら涙を流したり、顔を真っ赤にしながら貴族に罵詈雑言を吐いたりした。

 そんな生徒達の様子が面白かったのか、男とその取り巻き達が一斉に笑いながら酒を飲む。


「おおっと、こんなゲラゲラ笑ってねえでそろそろ行かねえとな。さっさと捕まえた奴らを連れてここから出るぞ、お前ら!」

 

 大柄な男の言葉に従って、いそいそと取り巻き達が荷物をまとめ始めた。


「そうさせるわけにはいかないな」


 大柄の男とその取り巻き達、レミナードの生徒含めて聞き覚えのない女性の声が響くと、入り口近くにいた取り巻きの一人が膝から崩れ落ち、仮面の女が現れた。

いきなり仲間が倒れたことで動揺した取り巻き達はガヤガヤと騒ぎ始める。


「おめーら、黙れ!」


 大柄な男が威圧感のある低く野太い声で叫ぶと、取り巻き達はそれに従うように静かになった。


「で、なんなんだ、てめーは」


 仮面の女は大柄な男を無視して、捕らえられた生徒たちの近くにいる取り巻き達の方に向き、魔方陣を展開した。その魔方陣から突風が吹いた。

 取り巻き達は真横に吹き飛び、壁にたたきつけられた。たたきつけられた取り巻きたちは、地面に倒れ伏し、動かなくなる。


「君たち速く逃げなさい」


 仮面の女がそう言うとレミナードの生徒達についていた手錠が外れ、生徒達は最初は戸惑いながらも逃げて行った。

 生徒達の中には足がすくんで動けなくなった者もいたが、他の人が肩を貸すものがいたのでぷるぷると震えながら逃げる。

 逃げていく生徒を追おうとした人さらい達を仮面の女がさっきと同じように風を起こして吹っ飛ばす。

 仮面の女がそのようにして人さらい達の行動を妨害することによって逃げる隙が出来たため、生徒達の姿が見えなくなるまで逃げだせた。


 大柄の男は得体のしれない仮面の女を警戒してか、何も行動をしなかった。

商売道具に逃げ出されたことに腹を立てたのか、大柄の男は顔を真っ赤にする。


「てめー、許さねーぞ」


「許さないからどうしたんだ。どうせ取り巻きがこの程度ならお前の程度も知れている」


 今にも走り出しそうなくらい前のめりになっていた大柄な男は急に姿勢と顔色が戻る。


「俺様の実力を計れないとは、たいしたことないな。しょうがないから無知なお前に俺様のことを教えてやろう。俺はC級賞金首のバッカス様だ。今からそのふざけた仮面を取って命乞いすれば、命だけは助けてやってもいいぞ」


 ぶん殴ってやりたくなるような腹立つ笑みを浮かべ、取り巻き達は「さすが親分」とか「身の程を知れ」などと騒ぎ立てた。

 仮面の女はさっきと同じように無視して、魔方陣を展開させると雷がバッカス達へと走った。

 雷にさらされた取り巻き達は気絶して動けなくなったが、バッカスだけはピンピンしていた。


「無駄だったな。取り巻き達にはそんな貧弱な魔法でも通用するが、俺様は違うぞ。確かにその無詠唱と魔法の展開力はそこそこだが、俺様には届かないぜ」


 バッカスは親指以外をグーの形にし、突き出している親指を自分自身に向けニヤニヤしながら言った。

 それに対して、仮面の女は何も言わず手をクッイクッイとし、挑発した。

バッカスは青筋を立て、顔を真っ赤にしながら襲いかかる。

 バッカスが仮面の女を斧で斬りかかろうとした瞬間、バンッと音を立てながら爆発した。爆発したところを見ると、魔方陣が展開されていた。

 バッカスはとっさの爆発に対して右腕を盾にして防いだが、利き手の右腕は使い物にならなくなくなった。

 仮面の女は防御魔法を張っていたため、爆発に巻き込まれることもなく無傷で立っている。

 好機だと思ったのか仮面の女は火、雷、風の魔法を放ちながら、バッカスの方へ近づいていく。


「なめるなよ、仮面やろぉー!」


 バッカスは近距離で戦うことを得意としてるのに対して相手は魔法師、つまりは遠距離戦を得意としている。

 いくら利き腕を負傷しているとは言え、魔法師が接近戦に持ち込んできたことにプライドの高いバッカスにとっては屈辱的だった。

 その屈辱的な行為による怒りと自分を奮い立たせるために声を張り上げながらまだ使える左腕に斧を持ち替え迎え撃つ。


 仮面の女とバッカスの距離がほんの数メートルになった瞬間、仮面の女の手に剣が現れた。

 その剣はバッカスが斧を振り下ろすよりも早く振り降ろされ、斧を握っている腕を切り飛ばす。


「ぐあぁぁぁ!」


 バッカスは、断末魔の叫びを上げながら膝をつく。

 仮面の女はその好機を見逃すはずもなく、雷を放ちバッカスを気絶させる。

 仮面の女は魔方陣を展開し、止血するために炎をバッカスのどばどばと血が出ている切り刻まれた腕へと放った。

 バッカスの腕は焦げ臭いにおいをさせながらも血が止まる。

 その後、仮面の女はバッカスとその手下達を生徒たちに使っていた縄を使って縛り、その場を去って行った。


ブックマークをしてくれたら、うれしいです。

高評価とかでなくていいので、評価してくれたらさらにうれしいです。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ