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少年は、一線を越える。

優斗の母親が家に来てから数日、日に日に彼女はおかしくなり遂には、母に包丁を突きつけるほどになった。ぐしゃぐしゃになった家に寄り付かなくなった父と優斗の母親をなだめ続ける母。

それを見ているこちらもおかしくなりこれは夢だ。そう思い、痛い思いをしたら夢が覚める気がした。ほっぺをつねったが目は覚めない。それもそのはず。これは現実なのだから。しかし諦めなかった。死ぬほど強い痛みなら目が覚める気がした。そう思い、町の高台まで来た。途中でクラスの女子に会った。学級委員だった様で、優斗について少し話していたが

自分の、葬式に来なかったくせに。という一言で僕は歩き出した。彼女は少し残念そうな顔をしていたが、やがて何かを思い出した様に鼻歌を歌って駆け出して行った。町の高台に着いた時になって気がついた。足が震えていた。カタカタという音はしないが、そう聞こえそうだった。高台の展望台に震えている足を引きずって手すりまで必死に剣道のすり足の様に歩いた。周りに多少の人がいてこちらを可哀想な目で見ていたが、それを薄笑いで返して手すりの奥に目を向けた。そこには町の景色が広がっていた。しかし、本当に見ているのはそれよりも少し手前の崖の下。そこには小川が流れていて、底までは100メートルあると社会の実習で聞いた様な気がする。以前はここで自殺する輩がいたらしいが、手すりの設置と近くに公園が出来たことによって、年に一人くらいまで落ち込んだらしい。

そして、僕は今年の一人目になろうとしている。足の震えは止まっていた。

今だ。と小さく呟き、崖の下に身を投げる。その時、左の目に赤い物が映った気がした。

「縁起でもない。」と叫ぶと地面が迫っていてそこにいる蟻の姿も見えるくらいの距離になっていた。

そこで一旦記憶は途切れていた。

目を覚ますと、目を閉じていないのに周りが真っ暗だった。物分かりの良さを主張する様に頭の中に死んだという単語が出てくる。生きているうちにこの頭が使えたらな、とのんびりしていたが、

改めて周りを見回すと本当に何もない。ただ目の前に鏡があるだけ、

いや、鏡があった。なかったはずの鏡がそこにはあった。

ちょっと意味がわからない。

何もなかったはずの室内に鏡が現れた。

これから何が起こるんだろう。と思い、考える。地獄に行くんだろうか?

確かに自殺をしたのだから天国には行けないだろう。

もしかして、地獄に行って、閻魔大王とかにお前は、地獄行きだー。とか言われるんじゃないか?

そう考えると、なんとなく髪型を整えたくなってきた。

少しワクワクしてきた。

鏡まで歩く。一歩目を踏み出した瞬間に異変に気付いた。

靴を履いていない。

飛び降りる時は履いていたはずなのに。まぁ、気にする必要はない。地獄の床に画鋲が落ちてない限りは。

再び鏡に歩を進める。鏡の前まで来た。鏡を覗くといつも通りの自分の顔が見えた。

髪は乱れてない。これはバッチリだ。あとは目かな。目は充血しているのか、赤かった。

しかし、充血した時とは違い、赤い左目は不思議と透明感があった。

見るものは見たので座ろうとした。その時だった、

少し体を左に向け辺りを見回す、やはりなにもない、ひたいに汗が浮かんでいたのでそれを拭う、何かが肘に当たったような感触があった。

そしてひたいの汗をぬぐい終わった時、鏡がないことに気がついた。

まさか、と思い下に視線を下に向ける。案の定、鏡が割れている。

困った、地獄に行くかもしれない。それなのに誰の物かもわからない鏡を割るなんて、

これは終わったな、そう思い、鏡の破片を見つめ、しゃがみこむ。

鏡の破片は律儀に並んでいる。そこにはしゃがみこむ、自分の姿が写り込んでいた。

ぼうっと鏡の破片を見つめていると自分の影の後ろに一回りほど大きい影があることに気づいた。

思わず後ろを振り返ると、そこには20歳過ぎの女の人がいた。

「レディの鏡を割るなんて最低っ!!」

「いや、あの、その、それは、なんというか、事故というか、」

「うるさいっ!!この女神の所有物を壊したからには、罰を受けてもらうわ」

えええぇ、いやいや、おかしいよって、ねぇどうなんのこれから?!

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