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ep.003 皐月の正体とペンダント・トップ

採血が終わり、私と皐月さんは救急救命センターの中庭のベンチに座っている。

皐月さんの話は、嘘でしょ?と言いたくなる様な話ばかりだった。

桜子さんを始め、こころさんや藍さん、他にも後数人は、直接的には繋がってないけどDNAを操作されて生まれてきた人間で、それが故に何かしらの特殊能力を持っている。と。

私は恐る恐る・・・。

「もしかして、皐月さんも?」

皐月さんはコクリと頷き、私を覗き込む。

《うわっ、皐月さんも無茶苦茶美人じゃない。女優さん出来そう》

「只ね、私の場合は・・・」

立ち上ってスーツのポケットから何か取り出すと、地面に投げ付けた。

軽い炸裂音と白煙が立ち込め・・・。

皐月さんは居なくなった。

消えた。と言うべきだろうか?

《えっ?もしかして、今の映画やドラマで忍者が使う煙玉?ドロンと消えるやつ?》

頭の中を疑問苻が埋め尽くす。

「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ、皐月よ、出てきてやったらどうじゃ?この女子(おなご)は、理解しかねているようじゃがのう」

しゃがれ声で話す藍さんが、ビロードのフード着きマントを羽織った外人の女の子と手を繋いで来る。

《えっ?今度は誰なんだろう?やっぱり、桜子さんのクラスメイトなのかな?》

「察しがよろしおすなぁ。ももせちゃん」

《又、声が変わった。藍さんて多重人格者?》

又、にぱぁと笑うと、

「惜しいけど、(ちゃ)いおす。ウチはウチどすえ。で、この子はベスちゃん。まぁ言うたら、“魔女”だす」

外人の女の子は、流暢な日本語でエリザベスと名乗り、

「藍、私が魔法使えるのは、一応秘密なんだからね」

エリザベスさんは左腕にした宝石の付いたブレスレットを右の人差し指と中指で優しく触れ、空中に何か描く。

魔法陣?だろうか?

そして、何か呪文を唱え、聞き取れる大きさで、

「・・・轟け(いかづち)、トォール・ハンマー!」

刹那、ベスさんが右腕を振り下ろすと、一筋の激しい稲妻が天から落ちて来た。

ベスさんは私に向かって優しく笑い、

「ちょっとは信用して貰えたかしら?ももせちゃん」

私は頷きながら、

《うっ、この人も可愛い・・・。どうやったら、こんなに美人でスペシャリストが集まるのかしら?》

「ふぉっふぉっふぉっ、ちったぁ理解出来たかの?お嬢さん」

藍さんが又しゃがれた声で話し、背負っているリュックサックから人形に切られた紙を数枚取り出す。

目の前でブツブツと呪詛を唱え、印を切ると一枚を私の額に張り付けた。

少しぼぅっとして・・・。


「ももせちゃん、ももせちゃん・・・、起きるよし」

優しく呼ばれ私は目を覚ます。

声の主は藍さんで、手には私に張り付けた紙を持っていた。

人形の紙の頭の部分が、うっすら紅く染まっている。

「今回の一件、何が問題でこんな事が起こってしもたんか、知りたいよし、記憶をこの紙に移さして貰いました。皐月ちゃんのもこれに・・・」

左手にもう一枚人形の紙が握られていた。

「あぁ、あれは私の記憶ね」

耳元で皐月さんが囁く。

振り返ると、皐月さんは救急救命センターのナース服を着て立っていた。

《いつの間に・・・》

「驚かせたかしら?私は本来、桜子お嬢さまの“影”。言うなれば、(しのび)ね。でも秘密よ。何故かは理解(わか)っているわよね?」

皐月さんは笑顔だが、目が笑って無かった。

《何?この人たち、怖い・・・》

藍さんは、人形の紙をくしゃくしゃっと丸め自身の口に放り込む。

目を閉じ、額に指を当てた。

何が起こってるんだろう。

ボソリと呟いた。

「そーゆー事どすか。大変どしたなぁ、ももせちゃん。ウチが、いえ、ウチらがももせちゃんの問題、桜子ちゃんに代わって解決したげましょ。よろしおすな」

藍さんは、皐月さんに顔を向け、

「そーゆー事やさかい、ローズちゃんにも浜松に・・・。あっ、よろしおす。ウチが寮に戻って、ローズちゃんも連れてくるえ・・・」

藍さんは、中庭にある倉庫に近付くと、リュックサックから文字の書いたお札を取り出し、倉庫のシャッターに張り付ける。

ババっと印を結び、又、しゃがれ声で、

「結空、えいっ!」

斜めに右腕を振り下ろした。

シャッターの向こうがぼうっと一瞬光り、藍さんはにぱぁと笑うと、

「これで、ここと聖クリのガレージが繋がりました。ウチはローズちゃんに話して、“血風丸(けっぷうまる)”をアパッチ運んで貰う様に言うてくるよし。皐月ちゃんは、今回の火種になった遠州葵組と傘下の暴走族どうにかしておくれやす。桜子ちゃんなら、きっとそうしたとウチは思います」

藍さんは倉庫のシャッターを開ける。

チラリと見えたのは、整備中のオートバイだった。

藍さんがシャッターの向かいに消えて行きながら、

「せや、ベスちゃん。ももせちゃんにも、ドワーフさんの造ったペンダントあげたっておくれやす。ほな、頼んだえ」

声だけ残して消えてしまった。

ベスさんは軽くため息を()き、自身の首に着けているペンダントを外し、私に差し出した。

「藍ったら強引ね。神戸の借りがあるから仕方ないか。ももせちゃん、これ着けて、プレゼントよ」

手渡されたのは細かい銀細工が施されたペンダント。

私がよくペンダントトップを見ると、震えながら形が音符に変わった。

ベスさんは驚きもせず、

「あら、貴女は生まれ持ってミューズの御加護がある様ね。身に着けてみて、これで何かトラブル在ったら、私に連絡入るから。後、音楽の才能も花開き易くなるわ」

そう言ってはにっこり微笑んだ。

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