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なにかが始まる予感なんて、そうそうないはずなのに

よろしくお願いします。

まだ、ほんの始まりですが…

あの小説の彼女が憧れたJanne Da Arcみたいに、崇高で芯の通った女性になりたい。誰に認められるとかではなく、自分自身がそう心から信じられるような人に強くなりたいと思う。だから今は、我慢して、自分を大丈夫となだめて、その日の目を閉じるときを待とう。本当は、沸騰し蒸気となって、どうしようもない心の中なんだけど、これもきっといつか融解するはずだから。


そう思っていたら、こんな状況だ。今は、私の通っている女子高のクラスメイト二人と一緒にいる。仲良しこよし、ということなら、問題はなかったのだが、残念ながらそうではない。彼女たちは、いわゆるスクールカースト的な存在で、嫌悪の対象を私に向けている人物たちであるのだ。面倒くさい。


「真鍋さん、一緒に来てよ」


一人がとても可愛らしく笑う。きっと、友達とかだったら、真っ先に自慢するような美少女なんだけど、そんなふわふわの綿菓子のような柔らかなもので例えられるような人ではない。


「ごめん、用事があるから」


事実、母に買い物を頼まれ、その道中だった。にんじんとじゃがいもとブロッコリーと…今夜はポトフのようだ。


「えー、ちょっとだけだよ」


美少女は、かすみの花のような笑みをたたえ、私の右足を捻り踏む。


こういうときの対処法。黙って歯を食いしばる。すると、美少女は笑顔を崩さず、気高く光る鉄を私の腕に沿わせた。私は、生唾を飲む。小さいながらも、ナイフであった。身体中の血液が循環を早め、体内の水分が身体中の細かな穴から涌いた。


正直、ここまでとは、思っていなかったのだ。逃げなければ。脳内に出てくる言葉はそればかりであった。彼女たちの一挙手一投足に目をやる。


「いいから、来てよ」


美少女がナイフを持ち替えた一瞬の隙である。私は、元バスケ部の能力をフル活用し、身を翻して走り始めた。後ろで声がしたが、息が切れるまで走り続けた。


つまりは、夏休みに入っても、安心できないという警告だったのだ。クラスのライングループから外されていても、アンチ真鍋香ライングループが出来ていようとも、無視していれば支障はない。ただ、向こうから危害を加えて来られると、どうしようもないのだ。


気付けば、私の住んでいる町の境にある山近くまで来ていた。一つだけ、ポツンと壁のペンキが剥がれている一軒家が建っている。十六年この町で生きてきたが、この山近くに家があるなんて知らなかった。


町の外れ近くだから、人は住んでいないかもしれないと思ったが、黒の軽四車が停まっているから、現在も使用されているようだ。


「何か、ご用ですか」


先程のことが先程のことだったせいか、普段するであろう反応よりも、幾分も大きな驚き方をしてしまった。声を掛けてきた男性も、それに戸惑っている様子である。彼は、この家の住人なのだろうか。


「ごめんなさい。何でもないんです」


家を覗いていた怪しい子、として覚えられないために、うつむいて横を通りすぎようとしたが、それは叶わなかった。腕をつかまれていたのだ。


「何でもなく、ないようですね」


心臓が大きく一跳ねし、その衝撃で斜め上にある彼の顔を見た。二重の大きな目に高い鼻、整った顔つきなのに、それに似合わない茶色の太い縁の眼鏡をしている。彼のレコード盤のように縁取りのある瞳が、私を真っ直ぐに捉えていた。


ご覧いただき、ありがとうございます。

引き続き、よろしくお願いします。

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