決戦は日曜日
そのとき、私と彼は大学から帰る途中の電車内で。
一人の女子高生が近づいてきて「あの、これ。読んでください」と彼に手紙を差し出した。いきなりのことで彼がとりあえずそれを受け取ると、その子はすぐに降りてしまった。ちょうど駅に着くタイミングを狙っていたのかも。
「……え、と。これ。何だろう」
手紙を持って呟く彼。そんなの、私だって知らないよ。見当はつくけど。
実は、あの女子高生の存在は前から知っていた。以前車内で顔色の悪かったあの子に彼が席を譲ってあげたことがあるのだ。可愛い子だったから憶えてた。彼はお年寄りや赤ちゃん連れのお母さんとかにしょっちゅう席を譲ってるから忘れてるみたいだけど。
「えっと。次の日曜に会えないかって、連絡先が書いてある」
私の前で読む彼。それってどうなの。
どうしよう、なんて言われても知らない。自分で考えなよ。
「とりあえず会うぐらいしてみれば? 勇気出したんだよ」
「そうかな……」
彼女でもない私は、そう言うしかない。
日曜日。
彼から早朝テロ攻撃を受けた。
「デートしよう」
「……は? 女子高生は?」
「あの日のうちに断りの電話したよ」
好きな女の子がいるからごめんね。キミも見たでしょう? って。