体重という概念のない世界(前)
朝起きたら、この世界に『体重』という概念がなかった。
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そもそも私が体重を気にしだしたのは彼の一言だった。
彼が友達と何気に話した会話を耳にしたのだ。
「俺の体重? 57」
聞いた瞬間、私は凍り付いた。何故なら私の体重は54.9㎏だったからだ。(決して55㎏ではない)
彼は175cm(私調べ)。私は162cm。身長は13cmも違うのに体重は2.1㎏しか変わらない、だと……!?
それから私の生活は一変した。ダイエットに取りつかれた日々。野菜中心の食事、毎朝1時間のランニング、お菓子は一切摂らず。なのに体重はなかなか減らない……。
「短期間のダイエットは危険よ。気長にやりなさい」
母親の言葉なんか耳に入らない。痩せたい、痩せたい、痩せたい……!!
私は半ば狂っていた。
*
「あれ? 体重計は?」
朝イチで体重を量るのに、洗面所にそれが見当たらなかった。
「たいじゅうけい? 何? それ」
母が不思議そうな顔で言う。
「え、体重計だって。ここにあったじゃん」
「たいじゅうけい……? え? 何それ」
「体重計だよ体重計!!」
母にいくら説明しても通じない。もういい。今朝は計測はパスだ!
そうして私は登校した。
そこで今朝の話を友達にしたのだが。
つづきます




