二段ベッドのある風景
「私、二段ベッドがいいな」
配管がむき出しの高い天井を見ながら私は言った。
「二段ベッド? ダブルじゃなくて?」
私の横で寝ころんでいた彼がこちらを向いたのが気配でわかった。
休日で賑わう北欧系家具店にて、まさに今私たちは展示してあるダブルベッドに横たわっていた。
「私、一人っ子でしょ? 子どものころ、友達の家に遊びにいって、二段ベッドがあって、すごく羨ましかったんだよね。きょうだいがいたら、二段ベッドだったのになあって」
「俺は兄貴いたけど、別に二段ベッドじゃなかったけど……」
私も初めはダブルベッドのつもりだったのだ。けれど、展示してある二段ベッドを見て、むくむくと湧き上がってしまった。
――あれが、欲しい。
彼がおもむろに訊いた。
「つかぬことをお尋ねしますが」
「何でしょう」
「夜の生活についてはどうお考えで?」
「……ふむ」
でもなあ……、毎日するわけじゃないし?
*
ぎしぎしと梯子を上る音がする。
「ごめんください」
「はい」
「今宵はどうでしょうか」
「やぶさかではないですね」
「では下でお待ちしております」
「了解しました」
結局私が二段ベッドを押し通したわけだけれど、こんな風な茶番が彼は案外気に入っているらしい。
2022.5.6 Twitterにて初出




