ヒキョウモノ
私は卑怯者だ。ずっとそれが心の底にある。
彼らは小学校から中3まで両片思いだった。
中学卒業と同時に引っ越すことになった内気で大人しい彼女は、彼に渡してほしいと連絡先の紙を預けた。
でも私はそれを渡さなかった。私も彼が好きだったから。
春休みに彼女の連絡先を彼に訊かれた。でも知らないと答えた。
私は卑怯者だ。
彼と同じ高校に進んだ私は彼に告白して、押せ押せで彼女の座を得る。
でもどこかで声がする。ヒキョウモノ、と。
そのまま10年経った頃、私はある噂を耳に挟んだ。
*
「別れたいの」
「何で」
「……彼女、結婚するんだって。でも相手の人には悪いけど本当に好きな人同士が結ばれるべきだと思う。今なら間に合うかもしれないから」
そうして私は中3の春の愚かな行為を打ち明けた。
沈黙が痛い。早く責めてほしい。
「あのさ」
彼が私の手を取る。
「確かに彼女のことはあの頃好きだったよ。で高校入ってお前に告られて、そりゃ押され気味で付き合いだしたけどさ、でも好きでもない子と10年も付き合うと思う?」
彼の指が私の頬を拭う。
「お前のこういうとこも含めて大好きだよ。だから別れない」
私は卑怯者。でも、彼がいてくれれば、もうそのままそれでいい。




