伝言ゲーム
本日時間差で5篇upします
7時・10時・13時・16時・19時の予定です
3月に入って、卒業まであと少しになった。
私の片思いもほぼ3年。進学するのはもちろん彼と違う大学。もうお別れだ。けれど、どうしても行動にうつす勇気は出なかった。
でもせめて。何か。ほんのちょっとだけ行動して思い出を作りたい。
そこで。
同じクラスである彼の机の上に放課後こっそり書いた。
『すきです』
でも校門を出てちょっと歩いて、やっぱり後悔して消そうと教室へ戻る。すると『すきです』の下に
『ありがとう。で、君は誰?』
え?いつの間に?慌てて教室内を見まわし、廊下も見たけれど誰もいなかった。
結局消すのはやめて、
『名乗るほどの者ではありません』
と更に下に書いて教室を出た。
翌日さりげなく彼の机を見ると『イニシャルだけでも』と書いてあった。
周りを伺いながら『だめです』と書く。
『すきならお願いをきいてくれても』
『それはそれ、これはこれ』
『このままでいいの?』
『いいのです』
こっそり書くのがなかなか難しいので毎日ではなかったけれど、彼とのこの伝言ゲームは楽しかった。
そして卒業の日。
朝まだ誰もいない教室で、最後の伝言を書こうとして。
『自分の机みて』
「え?」
そして自分の机を見て──
『オレもすき』
背後で足音が聞こえた。




