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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

最強可憐なマフィア少女が出来るまで

作者: 紅玉りんご

※若干の移民・人種差別表現あり

※実在の国や組織とは一切関係ありません

※主人公が放火をする描写があります。苦手な方はご注意ください

お願い、誰か私をここから連れ出して—




「マリア、これ親父が帰ってくる前に片付けとけよ」

「…はい、アンドレス兄さん」


リビングに散らかった酒瓶や食い散らかした料理。父親のリカルドが仕事でいない間、友人連中を家に招いてバカ騒ぎをするのも、それの後片付けをマリアに押し付けるのもいつものことであった。


「いや〜聞き分けがいい妹を持って俺は幸せものだよ〜。アンヘリカは絶対やってくれないからさ〜」


そう言ってこの男は私の肩をつかみ背中をなぞっていく。気持ち悪い。

鳥肌が立って私はたまらず声をあげる。


「やめてください」

「ん?何を想像したのさ。ただの兄妹のスキンシップじゃないか。そういう歪んだ考え方をするのはやっぱり生まれのせいなのかな〜、後で親父に言っておくから説教してもらいなよ」


じゃ、あとよろしく〜と軽い調子で部屋を出て行くアンドレス。そのまま足音が遠ざかり外に出ていったのを確認してようやく体から力を抜き深く息をつく。


叫びだして目の前に散らかっている皿を全てたたき壊してやりたかったが、そんなことをしたら余計に面倒なことになるのは目に見えていた。

この他にも様々な家事や雑用を言いつけられているのだ。現実逃避したいのは山々だが一分一秒も無駄には出来ない。

なんとかリビングの片付けを終わらせ中断していた洗濯を再開しようと中庭に出るとそこには一人の女がいた。


「ちょっと!まだ洗濯終わらせてないの!?これ、今日の婦人会に着ていくって言っておいたじゃないの!」

「すみませんサリタ奥さ…「口ばっかり動かしてないでさっさと働きなさい!怠けるばっかりで養ってもらってるって全然理解しないんだからこのグズ娘!」

「申し訳ありません」

「ふん!」


ヒステリックにわめき散らしてさっさと自室に戻っていく。

また今日も婦人会だと言って夫に内緒で遊び歩いてくるんだろう。その時の気分でころころ着たい服が変わるので洗濯を一手に担っているマリアは彼女に言わせると洗濯物すらまともに干すことの出来ないグズ娘になるらしい。


やっと洗濯が終わり夕食の準備にとりかかる。食材を確認し下ごしらえをしていると後ろからいきなり髪をひっぱられた。


「っいった…!」

「ねえ、何回言ったらわかるの?私、ジャガイモ嫌いだって言ってるでしょう」


だからといって包丁を持ってる時に髪をひっぱるなんて怪我をしたらどうするんだ!と思ったがこの家の人間にとってマリアが怪我をしたところでどうもしないだろう。

いつもどおり働かせるだけだ。

睨みつけたい気持ちをなんとか抑え表情筋をこわばらせながら振り返ると、この家の長女アンヘリカがこちらを睨んでいた。


「ここのところいつもジャガイモ料理よね。なあに?嫌がらせ?」

「違います。食材は旦那様が用意したものを使っているだけです」

「またそうやって言い訳して…あぁ、それとも嫉妬してるのかしら?ざ〜んねん、兄さんもヘラルドもアンタなんか眼中にもないわよ」

「違います!嫉妬なんかじゃありません!」

「そうやってムキになってるところを見ると図星ね。ま、夢見るだけはタダだもの。誰も移民のアンタなんか相手にしないから好き勝手に妄想してるといいわ」


何をどう言ったところで無駄らしい。黙ったままのマリアを見て悔しさに何も言い返せないと勘違いしたのだろう。優越感に浸りきった顔でくすくすと笑いながらアンヘリカはキッチンから出ていった。

小さい溜め息を一つ吐いてマリアは調理に戻る。こんなことは日常茶飯事なのでもういちいち構ってもいられない。

正面きって移民と罵られたがこんな一家と血が繋がっているなどそれこそ悪夢なのでまったく気にもならないし逆に清々するくらいだ。



完成した料理をリビングに持って行くとそこにはすでに父親・息子・娘が椅子に座り料理が運ばれてくるのを待っていた。

手伝う、という概念がこの一家にはない。ついでにマリアの席というのも存在しておらずマリアはいつもキッチンで手の空いた時に食事をとっている。

配膳をすましてリビングから早々と退散しようとした時、父親であるリカルドが待ったをかけた。


「マリア、後で話がある。君の態度についてだ。あとで私の部屋まで来なさい」

「はい、かしこまりました」


にやにやとこちらを見る兄妹の表情からまたある事ない事吹き込まれたんだろうと容易に想像がつく。

しかし反論などすればまたそれもお説教につながってしまうため結局反論もせずお説教を受けるしかないのだ。

残り物の食事を急いでかき込み次々出てくる汚れた食器を大急ぎで片付けて先ほど言われたリカルドの自室の扉をノックする。

リカルドがアンドレスとアンヘリカから言われた内容はだいぶ脚色がなされており

『日頃の生活態度から自身の歪んだ妄想癖、その罪深い行いを悔いて神に祈りを捧げないからさらに神から見放されるような事になるのだ』

などとかなり一方的で日中の労働で肉体的にくたくたなマリアを精神的にももくたくたにするような説教がすでに一時間以上続いている。


説教が終わり自身に当てられた部屋(元は物置だった)に戻ると既に時間は深夜をまわっていた、早く眠らなければ、明日も朝からやることがいっぱいなのだ。




マリアはこの家に引き取られた元孤児である。


父親のリカルドは神父をしており敬虔で厳格な人柄だと町の人から一定の信頼を集めていた。だが、マリアに対する愛情などは皆無で孤児になった赤ん坊の処遇に困った町の人たちから押し付けられる形でマリアを引き取った。


妻のサリタはリカルドの前では大人しく夫の意見を尊重する貞淑な妻だがヒステリックで何かと表向きの用事を作っては夫の目の届かぬところで羽根を伸ばしているらしい。


兄のアンドレスは父親の前では真面目な好青年を演じていたが本性は軽薄で自己中心的、しかし要領がいいのとそこそこ整った顔のおかげでその本性に気づく人は少ない。


アンドレスの妹、マリアと同じ年で同じ学校に通うアンヘリカは目下マリアの最大の悩みの種だ。

マリアはこの国の大多数を占める人種とは違う見た目をしている。

この国の人間は薄褐色の肌に金髪や茶髪、目の色は青から灰・赤茶・緑色とカラフルな色合いが普通だがそれに対しマリアは黒髪黒目。しかも肌は抜けるように白く背中まで長く伸ばしたストレートの髪がその色の白さをさらに引き立たせている。少し痩せぎすではあるがその顔は見るからに整っており東国出身のオリエンタルな美少女と誰もが認めるところだ。


東国からの移民はこの国においてあまり珍しくもないが彼らの評判はよくない。裏家業—早い話がマフィアとして一大勢力を築き日々この国の治安の悪化に一役買っている。

たとえマリアと東国マフィアにまったく関係がなくてもアンヘリカは東国人を見下しきっており、そのマリアが人目を引く容姿をしていることがどうにも我慢ならないらしい。

家でも学校でも何かといっては嫌がらせをしてきてそれに便乗して他の生徒も東国人はこの国から出て行け!とマリアに攻撃をしかけるのだ。

さらにこのいじめをややこしくしているのはアンヘリカの意中の男子生徒、ヘラルドである。彼はクラスのリーダー的存在であり正義感が強い。しかも金髪碧眼で男らしい見た目も相まって女子生徒に非常に人気がある。マリアが嫌がらせを受けているとさりげなく助けてくれたり一人で行動していると何かと話しかけてくる。




マリアはそんなヘラルドが大嫌いだった。


ヘラルドがマリアに話しかけると結局そのしわ寄せがマリアに来るのだ。アンヘリカはマリアが色目を使っている!と決めつけるしヘラルドにもう自分に構わないで、とマリアが言えば何様のつもりよ!と頬をひっぱたかれる。



この国での成人年齢は15歳。あと一年我慢すればこの家から出られる。

自分に言い聞かせるがマリアの精神はもう限界だった。ここは自分の場所ではない、帰りたい—でもどこに…

そんなことをグルグル考えていたからだろうか。ベッドに入っても一向に眠れずあと一時間もすれば日が昇る時刻になる。諦めてベッドを出て外着に着替え部屋を抜け出し音を出さないよう慎重に家から出て行った。



家を出ても行くあてなどないが何となくその足は東国人街に向かっていた。

マフィアの根城と噂されるその区画は治安も悪く地元民は日が落ちてからは絶対に近づかない。行くのは同じ世界に身を置く人間や非合法の博打や娼館目当ての人間だ。

近づくにつれ治安の悪さが思い出され恐怖感がせり上がってきたがそれ以上にあの家に戻る気にはなれず歩みを進める。


東国人街の入り口にはわかりやすいゲートがあった。ドラゴンだろうか?それともサラマンダーと呼ばれるとかげの一種だろうか。東国では様々な動物を幸運の象徴として奉る習慣があると聞く。

柱に巻き付いた不可思議な動物は口を大きく広げながら上へ向かいアーチを形作っている。西方の国とは文化も装飾も一見して別物であるそれは不思議とマリアの心を落ち着かせた。



しばらくそのゲートを見つめていたマリアの後ろからバイクのエンジン音が聞こえてきた。

速度を落としてはいるがこのままゲートをくぐるつもりなのだろう、幅広な道ではあったが接触事故を起こさないよう念のため道の端に寄る。

バイクがゲートを通り抜ける瞬間、ふ、と運転していた男と視線が交差した。




その時の感覚を、マリアはまったく言葉にできなかった—



視線が交わったのは一瞬でバイクに跨がる人間の容姿などまったくわからなかった。そのままバイクは過ぎ去りエンジン音は遠のいていく…と遠くに響いていたエンジン音が引き返してきたのを思考が止まったままマリアの耳は、まるで世界にその音しか存在しないかのように捉えていた。


引き返してきたバイクがマリアの前でゆっくりと止まるとマリアの心臓はまるで今やっと動き出したかのように鼓動を打ち始めた。

バイクに跨がる男—年は二十代半ばだろうか。

マリアと同じ黒髪黒目、目つきは鋭くライダージャケットを纏う体は大柄で無駄な筋肉など一切付いていない。全身から醸し出される余裕は単に大人の男性だから、というだけでなく彼がこの界隈においても相当な実力を持っているのだと容易に想像出来る。


「乗れ」


短く言いながらバイクの後ろに向かって顎で指示する。

拒否するという選択肢ははなから存在せず男に促されるままマリアは男のバイクに飛び乗った。


「しっかり掴まっていろ」


言うやいなや走り出したバイクから落とされないようマリアは男の腰に手をまわした。

ゲートをくぐり初めて訪れた東国人街は流れるように視界を過ぎ去っていく。

オレンジ色に光る提灯がいたるところに釣下っており建物のみならず道の両脇に、まるで隙間を埋めるように屋台が立ち並ぶ。中には食事をするのではなく何かゲームに興じる為に卓をわざわざ道路に出している男たちもいる。

娼婦らしき女たちの姿も見えたが西国の女のようにやたらと肌を露出させた姿ではなく東国の民族衣装を簡易にしたようなドレスに身をつつみ手に持つ扇子で熱気に照らされ汗ばんだ肌に風を送っていた。


目的の場所はすぐだったようでバイクはごくゆっくりと停車した。

走る速度もそうだがマリアのために優しく運転してくれたということにしておく。

たとえこの後どんな酷い目にあうとしてもこの一瞬だけでも夢を見ていたいと思ったのだ。


バイクから降りるとすぐに目の前の店から数人のスーツ姿の男たちがこちらに来て丁重な態度と手つきでバイクを預かる。バイクから降りたマリアの姿を見ると男たちは一瞬目を見張りお互い視線を交わし合っていたが


「空いている部屋を借りる。これは俺のツレだ。」

「「「はっ」」」


やや威圧的な男の声で我に帰ったのか皆即座に腰を折り曲げ頭を下げる。

頭を下げ続ける彼らに一瞥もせず店の門をくぐる男に慌ててついていき(店というよりはお金持ちの邸宅のような場所だった)空いている個室に案内された。



部屋の中にはあらかじめお酒の瓶を収めた棚があり、テーブルと椅子それに大きめのソファが備え付けられていた。

照明は薄暗く、内心これでは男の顔がよく見えないかもと思ったがそれは杞憂だった。ドアを閉め二人きりになったとたん逞しい腕に思いきり抱き寄せられたのだ。

お互い熱に浮かされた瞳で数秒見つめ合い先に口を開いたのは男のほうだった。


「…名前は?」

「マリア…あなたは?」

「イェライ」

「イェライ…イェライ…」


忘れないよう何度も男の名前を繰り返す。

その間も鼻がつくくらいの位置に男の顔があり真剣な眼差しでマリアを見つめていた。


「マリアは今いくつだ?」

「14になったばかり」


年齢を聞くとイェライは小さく舌打ちした。


「成人まであと一年か…会ったばかりでこんなことを言うのもなんだが…

俺の側にいてくれないか。正直安全とは言い難い仕事についててな、だけどお前の事は必ず俺が守ってやる」

「! 今すぐがいい!! 一年なんて待てない!お願い連れてって!」


もう二度とあんなところに戻るのは嫌だ!どれだけ危険でもイェライの側にいたい!

絶対離れまいと強くイェライを抱きしめる。

私の鬼気迫る様子に驚いたのか震えながらしがみつく体を優しく抱きしめ返して耳元でわかった、と囁かれた。


「家はどこだ、迎えに行く、家族は…」

「そんなのいない。けどやりたい事があるの、明日の明け方迎えに来て」

「ああ、必ず行く」


どれだけ時間がたったのか—お互い名残り惜しいと思いながら抱きしめ合っていた腕を離す。離れていったイェライの手はそのまま私の顎を持ち上げ一瞬触れ合うだけのキスを落とされた。

ぼうっとしたまま手を引かれて店を出る。頭がふわふわして来た時と同じように彼のバイクに乗せられ家まで送ってもらったが今までのことが全部夢なんじゃないだろうかとすっかり明るくなった空を見て思った。




一睡もしなかったがいつもより体が軽く朝の朝食作りを終え学校へ行く仕度を整える。

今日は大仕事があるのだ。それが終わればこの家から出て彼とずっと一緒にいられると思えば体中に力が漲ってくる。


学校へ行くと教室にはすでにヘラルドがいた。


「おはよう!マリア!」

「おはようヘラルド、早いのね」


いつもは無表情で挨拶だけ返すが今日は声音も自然と朗らかになる。

ヘラルドは一瞬きょとんとしたかと思うと顔を赤らめながらこちらを見つめる。


「ど、どうしたの?珍しいね、君がそんなに奇麗な笑顔で…あ、いや奇麗なのはいつもなんだけど、あーそうじゃなくて、えっと何か良い事でも…」


しどろもどろになっているヘラルドに向かって満面の笑みで答える。これで最後なのだからこのくらいはサービスしてもいいだろう。


「ええ、ちょっと良い事があったのよ」


くすくすこぼれる笑みに見とれてヘラルドはますます顔を赤くした。




授業の間も上の空でこのあとの段取りばかり考えていた。

チャイムが鳴るやいなや駆け足で家に走る。

後ろでヘラルドが呼び止める声や睨みつけるアンヘリカとすれ違った気がするが今日ばかりは無視だ。そのまま猛ダッシュでリカルド夫妻の寝室へ行き現金を閉まってある棚を開け必要な額だけ頂戴する。

予想より少ない額しか入っていなかったが必要分があって良かった!

家の中にある使えそうな物も確認し、町で目当ての物を買い込む。買った物は見つからないよう自室のベッド下にしまい、ぜえぜえと荒い息を深呼吸で整え日課の洗濯をしに家中のシーツを交換していく。

ついでにいつもより多めの衣類(洗濯が必要ないものやアンヘリカのお気に入りのスカートにサリタのワンピースなど)も回収し洗濯物に紛れ込ませた。



やがてアンヘリカが学校から帰って、掃除に忙しいふりをしていた自分に向かってきゃんきゃんと吠えてきたがひたすら無視した。

いくらわめいても反応しないとわかったのか最後に掃除のため置いてあったバケツを蹴り飛ばして床一面を水浸しにしたことで気が済んだらしい。

床が水浸しのところに間が悪くアンドレスが友人を連れて帰ってきてしまい靴に付いた泥のせいで床が泥だらけになってしまった。


その後は昨日とまったく同じパターンで必死に床を磨いた後アンドレスからリビングの片付けを押し付けられ夕食作りと合間の嫌みに食後のお説教、とこの時になって心に余裕が出来たせいか「この人たちも毎日飽きないなあ…」と呆れてしまった。




深夜、一家が寝静まったころ行動を開始した。

なるべく動きやすい服に着替えると(と言っても服はほぼ全てアンヘリカのお下がりで悪趣味なフリルが付いたのが大半なのだが)数着の着替えだけ入れたバッグを窓から外に放り投げる。

中庭に隠しておいた衣類とシーツをそろそろと慎重に自室まで運び、再度一家が起き出す気配が無いか探る。

大丈夫みたいだと確認してからベッド下から用意しておいた灯油とキッチンから拝借した油を取り出し念入りに布に染み込ませていく。

自分に油がかからないよう集中しながら作業を進め、あと少しで明け方という時間になって部屋の扉を開けた。


足音を立てないよう油を染み込ませた布を家のいたるところに置いて行き、あらかた置き終わったところで残った布と油をリビングにばらまいた。

窓から外を見ると空はうっすらと明るくじきに夜明けなのが見てとれる。とその時、まるでマリアの待ち遠しい気持ちに応えるかのように遠くからバイクの音が聞こえてきた。

近づいてくるバイクの音に胸を高鳴らし、マリアは家の扉をあける。

外に出るとちょうど家の目の前の道路にバイクが止まり、愛しい人—イェライがいた。

バイクの疾走音と家の扉が開いた音で一家がそれぞれの部屋から何事かと起きだしてくる。


「きゃあ!何これ!?あたしの服が…!!」

「おい!この匂い、灯油じゃないか?!」

「マリア!!これはどういう事だ!?」

「その男は誰なの!?説明しなさいこのグズ娘!!」


「説明するつもりは一切ございません。では皆様お元気で♪」


それだけをにこやかに告げると最後の仕上げとマリアはあらかじめ作っておいた火炎瓶にライターで火を灯す。


「!!?お、おいやめろ…」

「きゃあああああ」

「いやあ!やめてお願い!」

「この…!悪魔め…!!」


火炎瓶を家の中へ投げ込むと炎はあっという間に燃え広がる。外に放り出しておいたバッグを素早く回収し、振り返る事も無くイェライのバイクに走り乗った。

燃え盛る家を背に走り出したバイクの上で「凄いな…」と感心したように彼が呟く。


「ん?幻滅した?」


何の躊躇もなく家一軒燃やし、笑顔でこちらを見つめる少女に向かってイェライは言う。


「いや、惚れ直したよ」

「そう!嬉しい!」


二人が向かった先は東国人街。

やがてこの少女が東国マフィアの首領が探していた実の娘だと判明したり敵対勢力を血も涙も無い手口で叩きつぶしたり成長し膨れ上がった巨大東国マフィアの女首領として君臨することになるのはまだまだ先のお話ー


登場人物紹介


マリア

14歳。東国系。黒絹のような髪と白い肌を持つ美少女。赤ん坊の時に神父一家に引き取られたが折り合いが悪く成人したら即座に家を出ようと考えている。

自分の幸せのためなら手段を選ばないし躊躇しない。罪悪感?何それ?

マリアという名前は引き取られた時に適当に付けられた名前で本人は至極気に入っていない。本当の名前はシャンユェ。


イェライ

25歳くらい。東国系移民。

マリアに一目惚れして即プロポーズしたがロリコンではない。マフィアの幹部で常に危険な身の上であり、未成年の少女を側に置いていいのか悩みながらマリアを迎えに行ったら予想の斜め上の事になってて吹っ切れた。

後にマリアの旦那兼腹心の部下になる。


リカルド神父

敬虔な信徒で仕事人間だが他人への愛情は皆無。複雑な事情で孤児になったマリアを町の人が誰も引き取りたがらなかったため押し付けられる形でマリアを引き取る。そのためマリアに良い感情は持っていない。


サリタ

リカルドの妻。婦人会だと言っては夫に内緒で遊び歩いている。夫の前では貞淑で真面目な妻を演じている。


アンドレス

リカルド夫妻の長男。友人たちとバカ騒ぎをするのが好きなチャラ男。

グラマラスな美女が好みだが美少女に育ったマリアにもちょっかいをかけ始めている。


アンヘリカ

リカルド夫妻の娘。マリアと同い年で同じ学校に通っている。

同級生のヘラルドが好きでアピールしているがまったく相手にされていない。マリアに対しては嫌いを通り越して憎しみに近い感情を抱いており一家の中で一番きつくマリアに当たる。


ヘラルド

クラスのリーダー的存在のイケメン。マリアにほのかな恋心を抱いているが当の本人からは嫌われている。空気が読めない。

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