【農協】狂騒曲《カプリッチョ》 急章:必殺‼農協戦隊ゴニンジャー⑦
大変遅くなりましたが、最新話を書き込みます。
今回は食に関わることは事は一切ありません。
「観客のみなっさぁぁぁん‼ たいっへん、お待たせしましたわぁぁぁぁ。」
どれだけ食べても体型が変わらない、大食い女王な元王妃様。
天元もぶっちぎりなそのテンション会場を更に盛り上げる。ヒートアップした観客の歓声が怒号のように降り注ぐその中心で、本日の最終戦の開始を告げる。
「もう後がない元【漆黒黄金の高貴な闇】の悪戯小僧4人組VS農協戦隊ぃぃぃぃぃ……ゴニンジャァァァーーー。これが最終戦だぁぁぁぁぁぁ‼」
軽快なドラムロールが鳴り響くなか、元王妃様は用意された二つの箱をあさる。中からボールをひとつずつ取り出す。会場の視線を一身に受けた元王妃様が軽く手を挙げると、ピタッとドラムロールが止まり、静まり返った会場のなか、視線だけが元王妃様に注がれる。
「喜べお前らぁぁぁぁぁぁ‼ 最後の種目はぁぁぁぁぁ」
指をパチンと弾く。すると突然上空からコロシアム中央に3メートル四方の舞台のようなものが落下してきた。
その舞台は、四隅に柱がありその柱には3本のロープが張ってある。
「そう、【農協】でおなじみ、白いマットのジャングルで、血で血を洗う阿鼻叫喚。力と技と意地のガチンコ勝負‼みんな大好きプロレスだぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」
競技名を叫ぶ元王妃様。無駄に握りこぶしを天に向かって突き出して叫ぶその姿は。往年の誰の挑戦でも受け付けるプロレスラーそのもの。
観客のNPC達はほぼ毎日のように繰り広げられる|お昼のバトルロワイヤル《かつ丼争奪戦》を観ている人が大半なので、いやでも試合の期待値が高くなっていく。
・・・つまらない試合しようものなら暴動が起こるぞこれ(笑)
ちなみに試合のルールは、日本のプロレス準拠3カウントorギブアップ制。制約はスキルなし・レベル補正なし。ガッチガチのリアルの身体能力を参照。
しかし、HPが0になっても死に戻りなしで、ステータスにマイナス修正のみ。プレイヤーが気を失わない限り、試合は続行される鬼畜使用。
試合も、先にシングル30分2戦の後に、タッグマッチ《2vs2》60分の3本勝負。組み合わせは次のように。
元【漆黒黄金の高貴な闇】VS【農協戦隊ゴニンジー】
ヨンタ VS (最前線から)帰ってきた残念飼育員
サブロウ VS ミスターTKG
イチロウ・ジロウ VS 人間耕運機・大工
となっています。
解説席には元王妃様と元国王様、そして何故かゲスト席には黒いタイツの変態が陣取っている。
「いやぁ~~盛り上がってきました。最終戦ですよ、最終戦。楽しみですねぇ」
「オレが出たかった…」
「いや、ブラック出たら一瞬で決着つくでしょ(突っ込み)…却下で」
テンション上げて、隣の椅子で踏ん反り返っている黒いタイツの変態に、コメントを求める元国王様。しかし、予想の斜め上を行く返答に、青筋を浮かべながらも冷静に突っ込みを入れる元国王様…大人な対応である。
さて、リングの上にはすでに一試合目の選手がレフリーよりボディチェックを受けている。おなじみ【ゴニンジャー】サイドは全員トレードマークの全身タイツに身を包み、顔だけを出している。
そして【ノブリス】側は運営からの支給品、ゲーム初期装備の柔らかい革製のズボン。リングシューズ替わりの編み上げサンダルを履いている。上半身は何も着けていない。
ボディチェックも終わりレフリーの指示で両者コーナーに戻る。その時
を待ちかねた元王妃様がマイクを持つ。
「レディース&おっさんども、待たせたな‼ 第三種目プロレス一回戦、30分一本勝負を開始します。」
会場から歓声が沸き上がる。
「選手の紹介だぁぁぁ。ノブレス陰険担当ヨンタァァァァァ‼」
いや、その紹介どうなのさ?一応両手を挙げてアピールをしているヨンタ君だが、君、今までほとんど活躍してないからね。それでも盛り上がる会場。
「青コーナー、【農協】悲鳴担当、残念飼育員ゴニンホワイトォォォォォォ‼」
こっちも酷いな。今回は持ち上げてあげようよ。それでも、周囲にお辞儀しているよゴニンホワイト。やっぱり盛り上がる会場…大丈夫なのか此処?
「ゴング‼」
元王妃様の言葉を合図に、隣のゴニンパープルがゴングをならす。甲高い音が会場内に響く。
今、白いマットのジャングルを舞台に、男と男との熱い戦いの火蓋が斬って落とされたのだ。
*ここより解説のセリフは『』でお送りします。
リング中央で1mの距離をあけ、睨み合う二人。プロレスということで少し腰を落として徐々に距離を詰めていく。ゴニンホワイトはセオリー通りに左手を上げ、力比べの要求をする。しかし…
「セオリーなんか知ったことかぁぁぁぁ」
ヨンタの右ミドルキックが、がら空きのホワイトの左わき腹に綺麗に入った。突然の痛みに態勢を崩したホワイトの顔面にドロップキックが突き刺さる。
『ををっと、セオリー無視のミドルから顔面にドロップキックだぁ。卑怯だヨンタ、とっても卑怯だ。しかもそのまま倒れているホワイトにストンピングの連打だ!』
仰向けに倒れたホワイトの上半身に、容赦なくストンピングを落としていく。何度も何度も。そしてストンピングが20を超えたあたりで中止。頭部のタイツを掴み、ホワイトを無理やり立たせる。
「行って来いヤァ‼」
勢いを付けてロープに振る。自身も反対側のロープに走り、勢いを付けて戻ってくるホワイトめがけてジャンプ一番、ドロップキックを放つ。
だが、そこにホワイトは居なかった。代わりに伸び切った体がマットに落ちた衝撃で目をつぶった矢先に、腹にずっしりとした衝撃が襲い掛かってきた。目を開ければ体の上に馬乗りになった白いタイツが見えた。
『ゴニンホワイトぉぉ、ドロップキックを躱し、さらにロープの反動を利用してのトペ・レベルサァァァァ。ヨンタの腹の上に着弾だぁぁぁそのままマウントを取ったぁぁぁ』
「反撃開始かな?」ニヤリ
マウントを取ったホワイトだが、何するでもなくヨンタの腕を取り立ち上がると、手首をがっちり掴み、一本背負いで投げる。そして再度起き上がらせ、また一本背負いで投げる。
三度ほど一本背負いで投げた後、ロープに振って、反動を利用したボディスラムで背中からマットに叩きつける。
『さぁ、ホワイトの反撃だぁ、一本背負いで1回転…2回転…3回転、ロープに振ってからのボディスラム‼強烈ぅぅ、もろに背中から落ちたぞ大丈夫か』
「まだまだこれからですヨ。さぁ、ここからが教育の時間ですよ。」
ヨンタの本当の地獄はまだ始まったばかりだ。




