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【農協】狂騒曲《カプリッチョ》 急章:必殺‼農協戦隊ゴニンジャー③

お久しぶりです。


「観客のみなっさぁぁぁん、お待たせしましたわぁぁぁぁ。」


このコロシアムの中央、【漆黒黄金の(ノブレス・)高貴な闇(ダークネス)】の4人組から少し離れたところに、マイクを手に持った少し豪奢な神官服をまとった女性が声高らかに叫んでいた。間違いなく元王妃様なんだが、この人もやっぱりストレスが溜まっているのか、最近はこんなイベントに率先して参加してくださる。もちろんアナウンスはノリノリだ。


「本日の【農協】コロシアム、通称【屠殺場(とさつじょう)】の催し物は趣向を変えまして、元【漆黒黄金の(ノブ)高貴な闇(ネス)】の悪戯小僧4人組VS(ヴァーサス)農協戦隊ぃぃぃぃぃ……(ためてためて)ゴニンジャァァァーーーーーーーーーーー‼‼」


一斉に観客が沸き上がる。


さて観客席は初めからクライマックスなので、ルール説明は簡単にしてさっそく試練のほうに進んでしまおう。

そう、ルールは簡単。4人組対ゴレンジャー選抜4人で3回勝負。種目と制限をランダムで選んで、1本でも4人組が取れれば試練クリア。負けたらその都度罰ゲーム、それだけ。

そのたった1回をゴニンジャーから奪い取ればいいのだ。簡単だね(テヘペロ


「さて、では一回戦の種目を決めましょう。」


元王妃様は二つの箱をあさって、中からボールをひとつずつ取り出す。会場が一瞬静まり返り、ドラムロールが響き渡る。会場の視線を一身に受けた元王妃様が軽く手を挙げると、ピタッとドラムロールが止まる


「発表します。種目は棒倒し、制限は……なし。何でもありです。」


また会場が湧き出す。長さ5メートル、一抱えもある太さの丸太が何処からともなく降ってきてコロシアムの両端に突き刺さった。もちろん運営さんのお力でございます。


今回のゴニンジャーはゴニングレイ・ゴニンブルー・ゴニンレッド・ゴニンブラックの4人に決定した。何で決めたって?じゃんけん(グーとパー)ですが何か?


「「「「農協戦隊ゴニンジャー・フォー」」」」


刺さった丸太の前でポーズをとり、記念撮影をしている変態(ゴニンジャー達)をしり目に、反対側で自身の装備を整えて、互いにバフを掛け合う4人組。


「何でもありってことは…」

「ヤッても良いってことだろ」

「棒なんて後でゆっくり倒しゃぁいいんだから」

「開幕ブッパすんぜ」


双方の準備が整ったのを見計らい、いつのまにか眼帯をした元王妃様が朗々と開始の合図を発する。


「農協ファイト・レディー・GO‼」


4人組が一斉にゴニンジャー達(敵陣地)に向けて攻撃系〈スキル〉を放とうとした瞬間。


「ゴバァッ」


一番右側にいる男が、盛大な音を立てて吹き飛んだ(・ ・ ・ ・ ・)…木っ端みじんに。


「「「・・・・・・はい?」」」


残った3人が吹き飛んだ男の居た場所を振り返り見る。そのわずかな間。


「おや、派手にやりすぎちまったかな?」


耳元で厳つい声が聞こえた。むしろ、体重をかけて2人と肩を組んできた。その姿は、漆黒の全身タイツをまとった変態だ。

だがしかし、変態から送られてくる精神的な重圧(プレッシャー)と純粋な腕力で腕に捕らわれたままの2人はピクリとも動けないでいる。



「だめですよブラック。突っ走って先行しすぎです。」


少し遅れて、黒いタイツの前に走ってきた赤いタイツが声をかける。


「すまんすまん。なに、挨拶代わりに一寸撫でてやっただけだ。我らに喧嘩を売ったんだどれ位の実力か見ておくのもいいかと思ってな。」


まったく反省していない黒タイツ。


「てめぇ、二人を放せよ。」


唯一拘束されていない1人が、身動きできない2人の拘束を解こうと黒いタイツに武器を振り下ろそうと振りかぶったその瞬間。


「レッド・〈スラッシュ〉‼」


赤いタイツの右手が煌き、武器を振りかぶった男の脇下から反対側の肩口までを逆袈裟に切り捨てた。


「…へっ?」


急に視線がずれたかと思ったら、急に低くなり、地面にぶつかった衝撃でようやく切られた事を自覚した男が気の抜けた声を上げる。視線を動かすと、自分と離れ離れになった胸元から下の部分と、身の丈ほどの斧を両手で振り上げたであろう赤いタイツの男が視界に入る。


「俺の存在を忘れてもらっては困るなぁ、今は団体(パーティー)戦だよ。」


普段から単独(ソロ)友達いない系(ボッチ)な赤いタイツの変態は。ここぞとばかりに、団体(パーティー)戦を満喫しているアピールをドヤ顔でしている。そんなドヤ顔を最後に男は意識を失った(死に戻りした)


しかしだ。どんなにアピールしようが、今の君は赤いタイツ(ゴニン)の変態(・レッド)であって。【農協】所属のソロボッチプレイヤーのシザンケツガさんではないのだよ。大事なのでも一度言うが、今の君は赤いタイツ(ゴニン)の変態(・レッド)であって。ソロボッチのシザンケツガさんではないのだよ。


それは置いておいて、黒いタイツが拘束している二人を開放し、二人の変態は一度自陣へ戻る。要は、仕切り直しを提案したのだ。しかし、自陣に戻った二人が目にしたのは、地面に胡坐をかき酒盛りを始めていた灰色と青いタイツの二人だった。


「をいをい、俺を抜かして酒盛りとは頂けんな…」


凄みを聞かせ、酒盛りしている二人に突っかかる黒タイツ。しかし、その目には怒りなど浮かんではおらず、いやらし~く酒の肴の方に向いている。


「して、肴は何だ?」


陸竜(ベヒーモス)干し肉(ジャーキー)。グンジくんに特別に作ってもらった、モモ肉の良い(い~~い)処じゃ」(干し肉を皿に山盛り用意する灰色タイツ)

「しかも厚切りじゃぞ」(干し肉の厚みを自慢する青タイツ)

「よし、ならばウイスキーだな。【農協】御謹製の赤ラベルだ」(瓶で3本用意する黒タイツ)

「「「さぁ、始めようか」」」(瓶のまま乾杯をする三人のタイツ)


対戦相手4人+変態1をそっちのけにし、突如始まっってしまった飲み会。グラスなんぞ面倒といわんばかりに酒瓶を片手にラッパ飲みし、干し肉に噛り付く。何とも野性味溢れる宴会だ。


「えっ…俺一人っすか?」(赤タイツ)

「お前さん一人で大丈夫じゃろ?」(灰色タイツ)

「うむ、先ほどの斧の切れ具合。主なら大丈夫だ」(黒タイツ)

「・・・・・・・・・・」(無言で干し肉を咀嚼する青タイツ)


「結局ソロですか…」


独りトボトボと敵陣に向かっていく赤いタイツの背中には、哀愁が漂っていた。



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