【農協】狂騒曲《カプリッチョ》 急章:必殺‼農協戦隊ゴニンジャー②
「おおぉ、若者達よ死んでしまうとは面白い。」
死に戻りして、目を醒ました4人組が眼にした光景は、拠点にしている街の【神殿】ではなく。大きな十字架を正面に掲げた古代ローマ風のコロシアム、その中央部。周囲の客席は超満員で、4人組に対し野次を飛ばしている。
目の前にいる元国王様は、自分たちを見てニヤニヤしながら再度口を開いた。
「おおぉ、若者達よ死んでしまうとは面白い。」
「てめぇ、何しやがったっ」
「こんな事しておいて、タダじゃすまねぇぞ」
「んだこらぁ」
「いま馬鹿って言ったよね?馬鹿って」
混乱の中、口を開くも出てくるのは、恫喝にしか聞こえない八つ当たり。自分達が置かれた状況よりも、先ほどの蹂躙劇が頭から離れないため、近くにいる人間に当たり散らしているだけだ。
しかし、そこは大人として神官は4人に状況を説明する。
【漆黒黄金の高貴な闇】に所属している4人組は、トップクランの名前を笠に着て、他のプレイヤーやNPCへの恫喝・恐喝・窃盗などに始まり。街の外では、他プレイヤーに対し、悪質なモンスターの擦り付けや、仲間を後ろからの不意打ちでの報酬強奪、比較的弱いモンスターを乱獲し素材の独占など。
数え上げればキリがなく、現実世界なら懲役、国によっては死刑まで考えられる悪逆非道。運営に入ったクレームはプレイヤー・NPC問わず数知れず。
このまま一方的にアカウントを停止し、方々に掛け合いVRMMOから永久追放することは、簡単だ。
だがしかし、【無限世界の住人】の制作会社である八洲医療機器開発は、医療…しかも心も治療する事を目標にしている会社なので、悪人だからと切り捨てるような真似はできないし、してはいけない社風なのだ。
ってことで、4人組が更生できるように、絶望を与えようじゃないかってのが今回の企画です。
「こんなことやって、ギルマスが黙ってねぇぞ」
「「そうだそうだ」」
「ギルマスをここに連れて来いヤァ」
はい、では登場していただきましょう。元【漆黒黄金の高貴な闇】のギルドマスター、ヒガシグンジョウジ・ペガサスローリングモリモリさんです。
4人組の前に転移されてきた、鎧下の服姿の冷たい表情の男性は、彼らの所属ギルド【漆黒黄金の高貴な闇】のギルドマスターのヒガシグンジョウジその人である。
「ギルマスっ、助けてください」
「俺ら、変な奴らに捕まっちまって」
「アリもしない罪状で、晒し者にされているっす」
「誤解っす」
4人組がヒガシグンジョウジに縋りつくが、ヒガシグンジョウジの視線は冷たいまま。其の儘4人を一瞥すると振り返り。
「ギルド【漆黒黄金の高貴な闇】は解散した。お前たちを❘更生させる《まともにする》ことができなかった、私の力不足が原因だ。…すまなかったな」
数歩足を進め立ち止まり、今度は振り返らずに
「後のことは、運営とギルド【農協】の方々にお任せしてある。達者でな。」
と言い残し、元国王様に目配せし、転移される。
残された4人達は…
「馬鹿言ってんじゃねぇぞコラ」
「こんな事しておいて、タダじゃすまねぇぞ」
「んなもん、ログアウトすりゃ終わりだろ」
「そ…そうだな」
「「「「けっ、あばよ」」」」
しかし、彼らが消えるそぶりは一行に訪れない。
「「「「ログアウト出来ない…だと?」」」」
言い忘れましたが、今回に限っての特別処置で、君たちはログアウトできません。ご実家に当社の係員がお邪魔して、親御さんに事情の説明させていただいたところ、全員諸手を挙げてご協力して頂く事になりました。お前ら…現実世界でも素行不良なんだな(笑)
ってことで、敵前逃亡も途中退場もできませんので、張り切って絶望に打ち勝ってください。デスゲームではありませんので、死んだら現実世界の君達が死ぬことは絶対にありません。もちろん無事絶望に打ち勝てたならば、しっかりと報酬もお渡ししますよ。
「マジかよ…」
はい、本気と書いてマジです。挑戦しますか、それともしませんか?って言ったって挑戦するしかない状況ですね。せめて、今回の絶望の難易度くらいは選ばせてあげよう。
〖難易度:鬼 …vs農協戦隊ゴニンジャー〗
〖難易度:鬼畜…vs塵殺魔王ブッタギル+5匹のペット〗
さぁ、選ぶがいい(笑)おすすめは塵殺魔王の方だがね。
「判断基準がよくわかんねぇよ」
「なんだよ、鬼と鬼畜って」
「どっちもムリゲー臭しかしねぇ」
「馬鹿なの?ねぇ、馬鹿なの?」
では、早速選んでいただきましょう。
本日の、絶望の難易度は…ドッチ?
「わぁったよ、農協戦隊持って来いよ。」
4人組の1人が自棄になり、ゴニンジャーを選んだようだ。
すると、なぜかあたり一面が真っ暗になり、うるさかったほどの外野の声も聞こえなくなっている。そして、会場のところどころにスポットライトが当たり、そこに人影が現れる。その影は、単色の全身タイツを着こみ、一人ひとり順番に大見得を切っていく。
「背中に背負うは“農”の文字。大地耕す、ゴニン・グリィィィィン‼」
「背中に背負うは“建”の文字。建物造るぜ、ゴニン・グレェェェエェェイ‼」
「背中に背負うは“釣”の文字。引っこ抜くぜぃ、ゴニン・ブルァァァァアッ‼」
「背中に背負うは“卵”の文字。食すぜ絶品TKG、ゴニン・イエロォォォォッ‼」
「背中に背負うは“編”の文字。組んで縛るぜ、ゴニン・ブラウゥゥゥンッ‼」
「背中に背負うは“独”の文字。リアルもソロだぜ、ゴニン・ルェェドッ‼」
「背中に背負うは“マ”の文字。魔族のトップだ、ゴニン・ブラァァァック‼」
「背中に背負うは“営”の文字。運営?なにそれ?、ゴニン・パァァァプルッ‼」
しまいには、目の前にいた神官までもスポットライトを浴び、全身タイツの変態に変身をしてポーズを決めていた。
「ホワイトは現在こちらに向かっているってことで、先に始めるぞ皆の衆」
「「「「「「「「「農協戦隊・ゴニンジャァァァァァァァァ・・・・・まきしまむ‼」」」」」」」」」
下っ腹に響く大音響が降り注ぐ。見上げれば、夜空に大輪の花を咲かせる色とりどりの炎が広がっていたのだった。
さぁ、彼らにとっての地獄の始まりだ。




