【農協】|狂騒曲《カプリッチョ》 破章:最前線への道
【漆黒黄金の高貴な闇】の4人の使い走りが去り際に放った〈火球〉が見事にテーブルに炸裂した。周囲にそれなりの熱気と衝撃、そして煙を撒き散らし爆散する〈火球〉。
「・・・・・・は?」
周囲が呆然と〈火球〉が炸裂したテーブルを見守る中、煙の中から現れたのは、何事もなかったように所定の位置から動いていないテーブルと、それに乗った料理だった。
「そんな…あの攻撃でビクともしないなんて…」
コウタロウ君のパーティーのリンリン嬢が吃驚している。確かに普通に考えれば料理もテーブルも爆発して【フードコート】が火災になってもおかしくない状況かもしれない。
しかし、【フードコート】は運営さんも一枚噛んでいる物件なので、おいそれと事故・事案なんて起きるはずもない。むしろ強制的に介入されるわぃ。
そして、この料理人さんが目の前の料理に被害なんか出させる訳がない。〈料理魔法〉で料理とテーブルの時間を止めてしまえば良いだけのこと。鮮度保存のために料理の時間を止めてしまえば、如何様な物理的な干渉も意味をなさくなっていしまうのだ。
つい最近元国王様に教えてもらって、試していたのが幸いした。じゃなければ、〈料理〉の高速調理最高速で料理を回収しなければならなかった。どのみち料理には被害を出すつもりは一切ないがな。
遠から聞こえる4つの悲鳴を合図に、ユウタロウ少年のお誕生会を始めてしまおう。
乾杯の合図でグラスが重なり、和気藹々のなかお誕生会が進んでいく。リエ嬢の一生懸命作った料理に舌鼓を打つユウタロウ少年。途中酔っ払った給仕さんにそそのかされたリエ嬢ちゃんが。
「ほらユウタロウっ、口開けなさいよ。」
おおきく開けたユウタロウの口の中に、箸で一口サイズにカットした出汁巻き卵を放り込む。ユウタロウ少年もお約束で、箸が口内にあるうちに口を閉じる。
「こ…こんな事、家族以外じゃユウタロウにしかしないんだからね!」
要はツンデレ版の「あ~ん」ってことだ…くぅぅぅぅ青春だなぁぁぁ。まったくうらやま…けしからん。しかし、その隣のテーブルで、リンリン嬢ちゃんがコウタロウ君に同じように「あ~ん」をしているのだが、目先の料理に心を奪われているコウタロウ君の目には映っていないようだ。リンリン嬢ちゃん憐れ。
そんなこんなで大団円で終了したユウタロウ君のお誕生会でしたが、ここからはギルドの大人の時間でございます。
草木も眠る丑三つ時、生産職の作業場の休憩室を締め切り、明かりは部屋の中央、小箱の上の蝋燭一本。蝋燭囲む人影7人、全員険しい顔をしている。ちなみに、小箱の上には6枚の紙札が置かれている。
『奴らは料理に対して攻撃魔法を放った。これは食材に対する冒涜だ‼神をも恐れぬ行為だ‼よって死刑』
「確かに【フードコート】内での攻撃魔法は、われら【農協】を敵に回すと言っているようなものよ。」
「一応、【フードコート」から出た後にハクやクロベェ達に半殺しにされたみたいですが……」
「いや、此処でイモォ曳いたら奴らに舐められるだけじゃて。ヤるなら徹底的にじゃ。」
「そうですね、使い走りの責任は、責任者にあるんですから。責任の所在と責任をはっきりさせましょう。」
「でだ、彼奴らの所在はわかっているのか?」
「そこはほら、運営の権力使えばちょちょいって感じで。」
順番に、料理人さん・ササキさん・サカキさん・アカツキさん・オオガキさん・魔王様(仮)・元国王様の順での発言だ。各々これからおこなうこと、戦略・撮影方針などを話し合い。料理人さん以外の面子は小箱の上の紙札を一枚づつ取り小屋を出ていく。
その紙札にはこう書かれていた…【高級食材無料お食事券】と。
最後に残った料理人さんが蝋燭の火を消して、退室する。
さぁ、喇叭を鳴らせ‼ クランVSクランの戦争の始まりだ。




