【フードコート】超・試食会 実食ラスト 卵ふわふわ+ごはん他:運営のスタッフAさん(女騎士コスプレ)
今、私の目の前には、蓋を押し上げる程、溢れる位の卵のムースが入った一人用の土鍋が置いてあります。料理人さんが珍しく自信満々に出してきた料理は、江戸時代から伝わる“卵ふわふわ”っていう名前の伝統料理でした。
今回私は現実世界運営でのバトルロイヤルを勝ち抜いてきたってこの場に立っています。私の必殺の一撃の犠牲になった諸先輩方…勝負は公平にトランプゲームだったんですから文句はナシの方向でお願いします。
しかし、試食会っていうから、以前のドラゴン肉のステーキやタンシチューなんかのガッツリ系かと思ってました。せっかくの試食会のためにと、鍛えに鍛えたってのに…出鼻を挫かれた気がします。
確かに土鍋の蓋を開ける前から、濃厚な出汁の香りが漂ってきて食欲をそそられますが、一人前の土鍋一つじゃ物足りません。先にご飯とお新香、佃煮ついでにお味噌汁も戴いちゃいましょう。大丈夫ですよね?(給仕の御姉様からOKを戴きましたので、ご飯大盛りでお願いします。)
完成しました、“卵ふわふわ”定食。ここは、先にアツアツのごはんをひと口。
「あふっ(熱っ)、あふっ(熱っ)」
ほふほふしながら、火傷しそうなほど熱いご飯を吐息で冷ましながら咀嚼する。白米特有の粘り気、確かな甘さがちょうどいい硬さの歯ごたえと重なって、噛めば噛むほどに美味しい。いつ食べに来ても【農協】の米は美味しい。
次に味噌汁を一啜り。味噌の風味豊かなお味噌汁は、今回のメインでもある出汁がしっかりと立っている。味噌の風味にも負けない力強さがありながらも、味噌の味を邪魔することなく塩味を柔らかくしている気がする。
漬物を一切れ口に放り込み、口直し。そしてメインの土鍋の蓋をご開帳。
閉じ込められていた土鍋の湯気が、卵と出汁の香りと一緒にブワッと広がる。爆発したんじゃないかってくらいの確かな圧力で、前髪を靡かせる。
「…香りが爆発したようだ。」
箸から持ち替えた蓮華を、さっそく“卵ふわふわ”に突き立てる。かすかな抵抗、泡を掬うように蓮華を持ち上げれば、上質なスフレのように肌理細かく泡立てた卵の気泡一つ一つに包まれた出汁が蓮華に流れ込んでくる。
そのまま口に運んだならば…
「っ‼…これも美味しいっ‼」
優しく弾ける卵の泡と出汁が絡まり、舌の上で滑らかに溶けていく。抵抗なく口内に広がり、出汁と卵、調味料の味と香りを記憶に刻み込んでいく。茶碗蒸しや卵豆腐のようなツルンとしたと食感では出せない、口で溶ける感覚。
「土鍋から掬って食べるガチ和食のクセに、食感は蕩けるスフレケーキってどんだけさ(笑)」
感想なんだか文句なんだか判らない言葉が、思わず口に出てしまう。それくらい自身の味覚に衝撃的だってことです。
しかし…卵ふわふわってどう見ても、卵と出汁の組み合わせ。そして私の左手には白いご飯。これはTKGをやれという、MrTKGからの思し召しでしょうか。料理人さんは…人差し指と親指で輪を描いていますので、OKという事でしょう。
では、早速実行に移します。少なめに掬ったを“卵ふわふわ”をご飯にON、そしてそれをご飯ごと掬い上げ口に入れる。
「うっ…‼」
目の奥から閃光が迸る。その閃光は一気に体の中を駆け巡り、目・鼻・耳・口…それだけでは足りず、毛穴という毛穴すべてから光線となり全方向に照射される。
「おぉぉぉいすぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ‼」(ゴメスっ‼)
装備品は、下着もろとも謎の光線に景気よく吹き飛ばされ。自意識不明の上に、あられもない恰好でお茶碗片手に、そのまま立ち上がり、奇声を発し、何処へともなく走り去るかと思われた瞬間。後頭部に小型のハンマーが後頭部に突き刺さっていた。
「間に合いましたね、まさに危機一髪。」
肩で息をしている元王妃様。どうやら先ほどの伝令を聞き駆けつけてくれたらしい。ちなみに、間に合ってませんよ。女騎士さんは、全裸で其処で伸びてます。あぁ女将さんが急ぎ毛布を掛けてくれたから大丈夫だとしても、奥の馬鹿二人を早くなんとかしてやってください。
しかし、【無限世界の住人】は卵かけご飯に対して怨みでもあるのかねぇ。日に日にリアクションが大げさになってくるんだが…そのうちどこかの料理少年漫画張りのリアクションをしそうで少し期待してしまう私がいるのは内緒だ。




