【フードコート】超・試食会 実食⑤ 手打ちラーメン:ユウタロウ・リエ
料理人さんの新ネタの試食会と聞いてリエちゃんと一緒に【フードコート】に来ました。給仕のお姉さんたちに冷やかされたけど、何とか間に合って料理を食べることができたんだけど。
給仕のお姉さんが出してきたものは…
濃厚に出汁が香る、琥珀色の透き通るなスープ。申し訳程度な大きさに切られた角煮も、旨そうな匂いを出しているが、たった一つ。そして決定的なことに麺が入っていなかった。
「ちょっとぉ‼このラーメン、麺が入ってないわよっ。」
なんてこったぁ、僕が言う前にリエちゃんに言われてしまった。だけど、料理人さんがそんなミスなんてらしくないなぁって、ラーメンを眺めていたら。スープの中で何か動いたような気がした。
なんだろうって思ってお箸を入れて動かしてみたら、何かに触れた感触があった。
「リエちゃん、ちょっと待って。」
これを見てと、お箸でスープの中の何かを掬い上げたらやっぱりあった。糸みたいにすごく細い麺だった。麺どうやったらできるんですかって位細いんですけど。これぐらい細かったら、スープがどんなに澄んでいても、見えないよ。
もう、料理人さんったらこっち見てニマニマして意地悪なんだから。始めっから言ってくれればこんな恥ずかしい思いしなくてもよかったのに。いや、恥ずかしい思いしたのはリエちゃんなんだけど。
激オコから、勘違いに気づいてからの羞恥で赤い顔してうつむいているリエちゃん…最高です。いや、とりあえずこの空気を何とかしよう。
「リエちゃん、冷めないうちに食べちゃおうよ」
「そ…そうよね。」
改めて、手を合わせていただきますをしてから、ラーメンにお箸を伸ばす。
豚骨のような獣系の出汁なのに、器の底が見えるくらい澄んだスープ。レンゲでスープを一口。
「美味っ」
細かいことは良く判らないけど、近所の人気の豚骨ラーメンなんか比べちゃいけない位に美味しい。お店のラーメンは、色は乳白色だし、脂ぎってるし、なんか臭いし、味もどこかぼやけているような感じがするしで。何が違うって?全然違うとしか言えないよ。
麺を掬えば、糸のような極細麺が、一本一本たっぷりとスープに絡んでキラキラと光を反射している。お互いの箸に掴まれている麺を見て。
「うわぁ…キレイ…」
お互いに感嘆の声を上げる。いつまでも見ていたいけど、麺が伸びちゃうから早く食べちゃおう。ちょっとお行儀が悪いけど、ズズッて音を出して啜る。ちゅるんと飲み込んだ麺は、スープと絡んだままで、噛むたびに口の中で麺とスープば混ざり合わさっていく。
よく学校給食で、牛乳は噛みながら飲むと体に良いって云われるけど、牛乳って噛めないじゃないですか。でも、このラーメンは麺がすごく細いのに、たっぷりのスープが絡んでいるから、まるでスープを食べているような感じがする。
「あぁ、液体を噛むってこんな感じなんだね。味が良く判るわ」
そうなんだ。リエちゃんの言うように、ゴクゴク飲むんじゃなくて、よく噛んで味わうからスープの味が良く判るみたいだ。スープの味がわかると、今度は角煮の味が良く判る。
スープの味付けはおそらく、この角煮の煮汁を使っているんだろう。角煮から出た煮汁・肉汁が少しずつスープと混ざって味に少しだけ濃い薄いが出来てるのが何となく判った。
でも、僕たちはまだこの味を表現できるような言葉を知らない。
だから、笑顔で、心からの素直な言葉で表現するしかないんだ。
「「とっても…とっても美味しいです」」
綺麗に同じタイミングで同じセリフがでてしまった。リエちゃんと目が合うと、クスリと僕に微笑んでくれる。そこからはもう、リエちゃんは止まらない。加速が付いたように僕のほうを見ずに一心不乱にラーメンを啜りにいってしまう。
争うつもりはないけれど、僕も負けじとラーメンに取り掛かろう。食べているところをじっと見られるのは少し恥ずかしいからね。
まぁボクにしてみれば、美味しいものを一生懸命食べているリエちゃんを見るのは眼福なのでやめられませんがね。




