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【フードコート】超・試食会 実食④  蕎麦:コウタロウパーティー

途中に蘊蓄が入りますが、あくまでもフィクションです。フィクションなんですからね。

VRMMOの料理人の世界観は、現在より多少未来ですので食糧事情が異なります。

ってことでフィクションです。

久しぶりに料理人さんのうまい飯が食えると思って、仲間を(無理やり)誘って【フードコート】に来てみたら、テーブルに出されたのは蕎麦?えっざる盛のつけ麺じゃないの?蕎麦って普通にどんぶりに麺ぶち込んで汁かけたものでしょ?


「それは駅で食べてる掛けそばでしょ、これはざる蕎麦っていって、つけ麺と同じようにつけ汁につけて食べるのよ。」


隣に座るリンリンが知ったかぶりで答えてくるけど、納得できない。駅の蕎麦と料理人さんが作った蕎麦とは何処がどう違うんだろうか。料理人さん、教えてください。


『まず食べてみなさい。納得できなければ説明するが、話始めれば長くなってしまう。蕎麦が美味しいうちに食べてしまいなさい。』


説明は食べた後にしてくれるみたいなので、たべちゃおう。箸で蕎麦を一口分つまみあげ、反対の手に持ったつけ汁の入った小鉢に恐る恐る持っていく。


「つけ汁に半分だけつけて、食べてみな。」


エツジのアドバイス通りに半分だけつけ汁につけて、蕎麦を一気に啜りあげる。ずずっと音と一緒に口の中に入ってきた蕎麦は、うどんとは違う独特の香りがあった。啜るだけでぶつぶつ切れる駅そばの蕎麦とは段違いの歯ごたえ。

噛めば噛むほど鮮烈に広がる蕎麦の香り。恐らくこの食感と香りの違い(これ)を料理人さんは言いたかったのかなと思う。ん、あれ?ちょっとまって…これ、蕎麦だけじゃない。

つけ汁の味が段々広がってきた。これは…海竜(シーサーペント)空竜(ドラゴン)の脂…じゃないな、もっとこう凝縮した何か。あぁ、これが枯節からとった出汁ってやつだ。濃厚な醤油の香りに負けず、蕎麦の香りを消さず、がっつり自信を主張してくる。


なるほど、エツジが半分だけって言ったのは強いつけ汁の香り(これ)だったのか。強烈な出汁の風味を、蕎麦につける量で調整しようってのか。食べてもいないのに良く判ったな…奴はエスパーかっ。


それはともかく、美味い。とにかく美味い。蕎麦ってモノがここまで美味いなんて知らなかった。箸が止まらないどころか、体ごとどんどん加速していく。


つまんで、付けて、啜って、噛んで、飲む…つまんで、付けて、啜って、噛んで、飲む…つまん、付け、啜っ、噛ん、飲…つま、付、啜、噛、の…つ、つ、す、か…っっすか…すかっ…スカッ。

一心不乱に蕎麦を啜り、箸がざるの上を空振りしたところで我に返った。ざるに蕎麦の欠片一つなく、もう片手には半分位つけ汁が残った小鉢。このまま飲むには少ししょっぱいんだよなぁ。


「すみません、蕎麦湯いただけます?」


『わかってるねぇ、あるよ。』


マサカツが料理人さんにそう聞くと、料理人さんが小さめのヤカンを調理場から持ってきた。それを受け取ったマサカツが、つけ汁の入った小鉢になかの液体を注ぎ込む。なぁ、それなんだ?


「ん?蕎麦湯っていって、蕎麦をゆでたお湯だよ。」


『茹でた蕎麦の成分が溶け込んでいるから、多少は栄養はあるが、成分ってより冷たい蕎麦を食べた後の一呼吸って感じだな。どうだ?』


料理人さんがヤカンを差し出してくれたので小鉢を差出し、蕎麦湯を注いでもらう。俺に続いて小鉢を差出したリンリンやエツジも同様だ。つけ汁のとの温度差で少しぬるめの蕎麦湯だが、飲んでみると…やっぱり美味い。

蕎麦湯でつけ汁が薄くなったので、ちょうどいい感じで飲みほせた。で、今度は蕎麦湯だけを注いでもらい、ふぅふぅ言いながらチビチビ飲む。少しづつ体が温まってきて、ほうぅと自然に息をついてしまった。


いやぁ、美味かった。この蕎麦湯を飲んで一息つくまでが盛り蕎麦って料理なんだなぁ。


『どれ、食べ終わって如何(どう)だ、駅そばと比べてどんな違いがあるか分かったか?』


なんか、全然違ったもの食べているようでした。俺以外の3人も頷いている。


『実はな、使っている調味料の良し悪しや、割合なんかを除けばほぼ同じモノなんだよ。』


はぁ、駅そばと今食べたざる蕎麦がほぼ一緒って何なんですか?


『まぁ落ち着けって。それを今から説明するから…


料理人さんが言うには、すべては原価…料理にどれだけお金を掛けられるかってことにかかわってくる事らしい。


(ここからは、読まなくても大丈夫。あくまでもほんの一例ですので気にしないでください。)

例えば駅そば…かけ蕎麦が一杯300円位だとする。この蕎麦を一日何杯売って、材料費・光熱費・土地代・人件費を払っても利益が出るようにするには如何すればいいか。一日8時間の営業で一時間平均の集客が30人だとしよう。

営業時間(8)×平均集客(30)×単価(300)=72000になる。ここから人件費が一人約10000で、店舗営業は一人じゃ無理だから二人必要ってことで約20000。

光熱費が約10000で、土地代ってか店舗料金で更に持っていかれる。

残りが40000だとしても、店舗の利益を10000とするなら、残りは30000。

では、この30000で食材を揃えるとして、一杯にかけられる金額は125。

一杯の原価が125が高いか安いかは別にして、240杯を作るのに30000ではどれだけのものができるだろう。


蕎麦は、恐らく原価率の高い蕎麦粉より小麦粉が大多数を占めるだろう。蕎麦(2)小麦粉(8)ならまだ可愛いモノで、蕎麦粉が更に少ないほぼうどんの様な蕎麦もあるだろう。それに蕎麦としての色を付けるため、ヒジキを細かく砕いて混ぜるのもある。

生産性を上げるため、機械で麺を打ち。調理速度の向上のため打った麺を蒸して火を通し一食分ごとに袋詰めする。この時点で蕎麦の香りは薄く、しかも火を通している時点で、客の手元に来るまでには麺は延び延びでブッツブツ。


調味料だってそうだろう。つけ汁は、濃縮した醤油と化学調味料・出汁っぽい何かで香りを付けたものを、お湯で伸ばしたものだろう。酒やみりんなんかは入っていると思いたい(たらいいな)。業者だって利益を作らにゃあかんから、大量に作ってより原価をどこまで下げられるかのチキンレースだ。


しかし、安かろう不味かろうでは商売が成り立たない。だから最低でも定価相当の味にしなければならない。まぁ其処に、業者の意地や拘りがあるんだがそこらへんは今回の話に関係ないので省きます。


(ここまで省略可能)


『な?』


いや、な?って言われてもどうリアクションすれば良いんでしょうか。

一応、料理人さんの言いたいことは何となくわかりましたけど…ちなみに、先ほど食したざる蕎麦は、お値段にすると御幾らなんでしょうか?


現実世界(リアル)で食べられない料理に値段付けてもしょうがないだろう。』


じゃぁゲーム世界(コッチ)の【フードコート】で出すならどうでしょう?


『あぁ~、コウタロウ君。空竜(ドラゴン)の討伐報酬知ってる?』


知ってますよ、料理人さんと一緒に行ったじゃないですか。その時にパーティー報酬でかなりの金額貰いましたもん。


『だよな。でな、海竜(シーサーペント)の討伐報酬はその2倍なんだ。その空竜(ドラゴン)海竜(シーサーペント)で本枯節を作る訳だが、ゲーム時間で半年掛かる。今回は作るときは大量だったが、本来レイドボスの落とすレアアイテムだから、無くなったからって直ぐに出来るわけじゃない。』


ですよねぇ~


『そうすっと、こん位だな…』


立てた指は、人差し指一本でしたが、1万Gかなと聴いたら鼻で笑われえました。なんと1の次に0が八つ付いてました。びっくりです。


『でも、私はそれらをスキルを使って(幾らでもパスして)値段を安くできるんだが、周りってか運営(元国王様)がそれを許してくれないんだ。』



リアルもゲームも世知辛いっすねぇ…



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