表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/98

【フードコート】超・試食会 実食③ ゼリー寄せ:元国王様(+魔王様(笑))

表現に一部おかしなところがありますが、お気になさらず読み進めてください。

「(囁くように:なぁ元国王様(神官長)よ、勝負をしようぜ。)」


(小声で:勝負ですか?)


「(囁くように:そうだ。料理人(グンジ)さんとまでは行かなくとも、貴殿も大層料理上手だと聞く。)」


(小声で:何処からその情報を)


「(囁くように:情報は何処だっていいだろう?でだ。勝負内容は、料理人さんの料理(今回の一皿)をどこまで上手・旨そうに言葉で表現できるかって事でどうよ?)」


(小声で:…ほう、面白そうですね)


「(囁くように:だろ?)」


(小声で:でもよろしいのですか?私には、今まで料理人さんの料理を食べて評価してきた実績がありますよ?)


「(囁くように:それもまた一興。あくまでもガチじゃない(趣味の範疇)の勝負ってことで、判定はお互いに認めれば勝ちってことで。)」


(小声で:良いでしょう、健闘を祈ります。)



「素晴らしいなこの皿は。周囲のソースも鮮やかだが、メインのゼリー寄せが、色とりどりの宝石を集めた宝箱のようだ。美しい…」



くっ…早速、魔王がぶち込んできやがった。この率直な意見、まさにその通りだ。ここは慎重に野菜一つ一つに焦点を当てていくのが正道だろう。


カラフルなパプリカは焼き目をつけて薄皮を剥いてある。軽く塩で揉んで下茹でしたオクラは鮮やかな翠色、繊維を斜めに刻んだ長葱の白とのコントラストは目に鮮やかに。薄皮を剥いた蚕豆は薄い黄緑色。琥珀を集めたような出汁のゼリーは。薄く切った冬瓜に受け止められ、中に重ねられた具材を包みこんでいる。

帆布(カンヴァス)に描かれた絵画のような芸術、それが目の前にあるひと皿。フレンチのコースだと前菜(オードブル)に当たるこの野菜をふんだんに使ったゼリー寄せなのだが…存在感は本気(マジ)でラスボス級。

この一皿で前菜(オードブル)・スープ・魚料理(ポワソン)肉料理(ヴィアンド)までを賄えるんじゃないかと思える逸品だ。


魔王のドヤ顔に対し、こちらもドヤ顔で返してやる。確かに感想をストレートに表現してくる魔王の手法もいいが、私の理知的な表現も捨てがたい。今回の見た目の感想は引き分けでもいいだろう。


続いて実食だ。今回も魔王が先行する。箸で豪快に半分に切って口に放り込みやがった。しっかり咀嚼してゴクリと飲み込み、一息ついて出た言葉は。


「うむっ、一口で判るぞ。この料理の主役はゼリーの部分だ。野菜も丁寧に処理し、本来の味を楽しめるが、このゼリーと絡み合うとまた一段と味のボルテージが跳ね上がる。まるで命のスープだった原初の海を、野菜たちと共に泳いでいるようだったぞ。」



やべっ、なんとなく魔王の言葉が、すっげぇ旨そうに感じてきた。これは負けてられない。こちらも実食だ。お上品にナイフとフォークで切り分けて、個々の野菜とゼリーの組み合わせの妙を楽しんでみよう。



フォークを刺し、ナイフで切り分けるのだが。なかなかどうして、野菜はナイフの邪魔になることはないが、ゼリーが確かな手ごたえをナイフに伝えてくる。噛めば野菜一つ一つに浸み込んだ出汁の香りが、野菜の風味と一緒に口内に広がってくる。本来なら出汁が野菜の風味を引き立てるのだが、このラスボス感満載のゼリー寄せは、それぞれの野菜が出汁の味を引き立てているのだ。


例えば蚕豆だが、この出汁(ゼリー)と一緒に口に含むと、蚕豆独特の香りが最初に口内に広がるが、咀嚼するたびに崩れる蚕豆とゼリーが折り重なり、一つの味になっていく。

この時、蚕豆は口内での主役を出汁に譲り、露と消えゆくのだ。しかし、ただ消えてゆくのではない、出汁の背中を押しだし野菜(自身)の居たことをその心に刻み込むのだ。

そこに生まれる調和(ハーモニー)は、食べる者の心に響きわたる。まさに至高のゼリー寄せといっても過言ではないだろう。


この皿が真っ白になるころには、(そら)から降りそそぐ祝福に包まれ。私は運営()の元に召されるであろう…


「だから何だと云うのだ、たかが石ころ一つ、この魔王が押し返してみせるわっ‼」


これが…この光が、人類の心だというのか‼


「このままではぁぁぁ、このままではぁぁぁぁぁぁぁ、おねえさま‼アレを遣るわよぉぉぉぉ」


えぇ、良くってよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん(泣)」


くへへへへぇぇぇぇぇ、無駄だというのがまぁだわからんのかぁぁぁぁぁぁaqwsedrftgyhujikolp;@: ふぅぅぅふじこふじこ


「いやっ、辞めろショッ〇ーーーーーーー」


ひゃぁぁぁぁぁぁぁ、お前は今まで食べてきた米粒の数を数えたことがあるのかぁぁぁ‼


―――― 一部お聞き苦しい表現がございましたことをお詫びいたします〔運営〕 —―――-


「グンジくん、隣の元国王様と魔王様(笑)なんだが、目がうつろで戯言をほざいているぞ‼」


『すみませんっ、どなたか神殿に行って元王妃様呼んできてください。大至急です。』


「なんて伝えればいいですか?」


『気付けをお願いしますといえば、総て伝わります。』


「了解しました。いってきます。」





このあと、駆け付けた元王妃様のハンマー(気付けの一発)で目が醒めるまで、延々と錯乱大会を開いていた元国王様と魔王様(笑)は、恥ずかしさのあまり暫くの間【フードコート】に来なくなりました。そして錯乱時に口にしていた戯言は、運営(一部の有志)の手によって専用動画サイト(ムゲドウ)にアップされたとさ。


後日ひょっこり顔を出した元国王様に、料理の感想を聞いたところ。たいへんおいしかったとの事だったが、魔王様(笑)と表現の勝負をしていて、自信の語彙が追い付かず、お互いにバグが発生したようだと聞きました。

どこかのグルメ漫画に触発されたんだか知らないが、隣に座った魔王様(馬鹿)と表現の幅広さで勝負していたようで、云うに事欠いてあんな風になってりゃ世話ないわ。

私としては100や1000の言葉で飾り立てるよりは、素直に美味いと言ってくれたほうが嬉しいんだがなぁ。



其処らへん、いい加減にわかってください。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ