【フードコート】超・試食会 実食③ ゼリー寄せ:元国王様(+魔王様(笑))
表現に一部おかしなところがありますが、お気になさらず読み進めてください。
「(囁くように:なぁ元国王様よ、勝負をしようぜ。)」
(小声で:勝負ですか?)
「(囁くように:そうだ。料理人さんとまでは行かなくとも、貴殿も大層料理上手だと聞く。)」
(小声で:何処からその情報を)
「(囁くように:情報は何処だっていいだろう?でだ。勝負内容は、料理人さんの料理をどこまで上手・旨そうに言葉で表現できるかって事でどうよ?)」
(小声で:…ほう、面白そうですね)
「(囁くように:だろ?)」
(小声で:でもよろしいのですか?私には、今まで料理人さんの料理を食べて評価してきた実績がありますよ?)
「(囁くように:それもまた一興。あくまでもガチじゃないの勝負ってことで、判定はお互いに認めれば勝ちってことで。)」
(小声で:良いでしょう、健闘を祈ります。)
「素晴らしいなこの皿は。周囲のソースも鮮やかだが、メインのゼリー寄せが、色とりどりの宝石を集めた宝箱のようだ。美しい…」
くっ…早速、魔王がぶち込んできやがった。この率直な意見、まさにその通りだ。ここは慎重に野菜一つ一つに焦点を当てていくのが正道だろう。
カラフルなパプリカは焼き目をつけて薄皮を剥いてある。軽く塩で揉んで下茹でしたオクラは鮮やかな翠色、繊維を斜めに刻んだ長葱の白とのコントラストは目に鮮やかに。薄皮を剥いた蚕豆は薄い黄緑色。琥珀を集めたような出汁のゼリーは。薄く切った冬瓜に受け止められ、中に重ねられた具材を包みこんでいる。
帆布に描かれた絵画のような芸術、それが目の前にあるひと皿。フレンチのコースだと前菜に当たるこの野菜をふんだんに使ったゼリー寄せなのだが…存在感は本気でラスボス級。
この一皿で前菜・スープ・魚料理・肉料理までを賄えるんじゃないかと思える逸品だ。
魔王のドヤ顔に対し、こちらもドヤ顔で返してやる。確かに感想をストレートに表現してくる魔王の手法もいいが、私の理知的な表現も捨てがたい。今回の見た目の感想は引き分けでもいいだろう。
続いて実食だ。今回も魔王が先行する。箸で豪快に半分に切って口に放り込みやがった。しっかり咀嚼してゴクリと飲み込み、一息ついて出た言葉は。
「うむっ、一口で判るぞ。この料理の主役はゼリーの部分だ。野菜も丁寧に処理し、本来の味を楽しめるが、このゼリーと絡み合うとまた一段と味のボルテージが跳ね上がる。まるで命のスープだった原初の海を、野菜たちと共に泳いでいるようだったぞ。」
やべっ、なんとなく魔王の言葉が、すっげぇ旨そうに感じてきた。これは負けてられない。こちらも実食だ。お上品にナイフとフォークで切り分けて、個々の野菜とゼリーの組み合わせの妙を楽しんでみよう。
フォークを刺し、ナイフで切り分けるのだが。なかなかどうして、野菜はナイフの邪魔になることはないが、ゼリーが確かな手ごたえをナイフに伝えてくる。噛めば野菜一つ一つに浸み込んだ出汁の香りが、野菜の風味と一緒に口内に広がってくる。本来なら出汁が野菜の風味を引き立てるのだが、このラスボス感満載のゼリー寄せは、それぞれの野菜が出汁の味を引き立てているのだ。
例えば蚕豆だが、この出汁と一緒に口に含むと、蚕豆独特の香りが最初に口内に広がるが、咀嚼するたびに崩れる蚕豆とゼリーが折り重なり、一つの味になっていく。
この時、蚕豆は口内での主役を出汁に譲り、露と消えゆくのだ。しかし、ただ消えてゆくのではない、出汁の背中を押しだし野菜の居たことをその心に刻み込むのだ。
そこに生まれる調和は、食べる者の心に響きわたる。まさに至高のゼリー寄せといっても過言ではないだろう。
この皿が真っ白になるころには、天から降りそそぐ祝福に包まれ。私は運営の元に召されるであろう…
「だから何だと云うのだ、たかが石ころ一つ、この魔王が押し返してみせるわっ‼」
これが…この光が、人類の心だというのか‼
「このままではぁぁぁ、このままではぁぁぁぁぁぁぁ、おねえさま‼アレを遣るわよぉぉぉぉ」
えぇ、良くってよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん(泣)」
くへへへへぇぇぇぇぇ、無駄だというのがまぁだわからんのかぁぁぁぁぁぁaqwsedrftgyhujikolp;@: ふぅぅぅふじこふじこ
「いやっ、辞めろショッ〇ーーーーーーー」
ひゃぁぁぁぁぁぁぁ、お前は今まで食べてきた米粒の数を数えたことがあるのかぁぁぁ‼
―――― 一部お聞き苦しい表現がございましたことをお詫びいたします〔運営〕 —―――-
「グンジくん、隣の元国王様と魔王様(笑)なんだが、目がうつろで戯言をほざいているぞ‼」
『すみませんっ、どなたか神殿に行って元王妃様呼んできてください。大至急です。』
「なんて伝えればいいですか?」
『気付けをお願いしますといえば、総て伝わります。』
「了解しました。いってきます。」
このあと、駆け付けた元王妃様のハンマーで目が醒めるまで、延々と錯乱大会を開いていた元国王様と魔王様(笑)は、恥ずかしさのあまり暫くの間【フードコート】に来なくなりました。そして錯乱時に口にしていた戯言は、運営の手によって専用動画サイトにアップされたとさ。
後日ひょっこり顔を出した元国王様に、料理の感想を聞いたところ。たいへんおいしかったとの事だったが、魔王様(笑)と表現の勝負をしていて、自信の語彙が追い付かず、お互いにバグが発生したようだと聞きました。
どこかのグルメ漫画に触発されたんだか知らないが、隣に座った魔王様(馬鹿)と表現の幅広さで勝負していたようで、云うに事欠いてあんな風になってりゃ世話ないわ。
私としては100や1000の言葉で飾り立てるよりは、素直に美味いと言ってくれたほうが嬉しいんだがなぁ。
其処らへん、いい加減にわかってください。




