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【フードコート】超・試食会 実食②-2 焼きナス:シャチョー


さて、焼きナスが終わってしまったので、次に出された揚げナスに取り掛かろう。再度日本酒を注文したら、今度はキンキンに冷えた冷酒が出てきた。

この冷酒をお猪口に手酌で並々注ぎ、一気に煽る。冷たい冷酒のキリっとした辛口の爽快感が口内から胃の腑までの焼きナスの余韻をリセットしてくれる。


気持ち新たに揚げナスに箸を伸ばす。

小鉢の中、幾本と縦に包丁(切れ目)を入れられたナスは、油で揚げられることによりその一本一本が黒曜石のような輝きを放ち、茶筅のように円みをもって花を開かせている。隣で卵豆腐を夢中で啜っているコウチョーが云うには、茶筅ナスという調理方法らしい

揚げナスの上にちょこんと乗せられた糸ガキがの香りが、揚げ油と揚げたナスの皮の香りと相まって食欲をそそる。


ほぼ一口サイズの揚げナスを口にいれ咀嚼する。再び眼前に広がる宇宙空間。しかし今度のは少し違う。焼きナスが生命の誕生までの衝撃(ストーリー)ならば、揚げナスは生命の進化(躍動)衝撃(ストーリー)だ。


単細胞生物(アメーバ)が、分裂を繰り返し、多細胞生物へと進化。さらに進化・進化と繰り返し弱肉強食の時代を謳歌し、生活環境を水中から陸上へ。惑星を覆いつくすかのように爆発的にその生活圏を増やしていく。まさに古代生物の楽園のようだ。


同じ食材を使っているにも関わらず、調理方法を少し変えただけで、ここまで受ける印象が違う料理になるだろうか…


「っ‼…そうか…出汁が違うんだ」


そうだ、先の焼きナスは鰹や飛魚(アゴ)のような魚介の枯節から抽出した出汁だったが、揚げナスの出汁は違う。ナスがたっぷり吸いこんだ揚げ油に負けない強い主張、しかし我を通すのではなくナスの繊細な味を壊さない柔軟さも併せ持つ。

そう、まるで脂身が掌の熱で溶けだすと表現される最高級な豚肉…イベリコ豚の脂、その旨味を凝縮したような旨味。動物系の力強い出汁を使っているからこそできる、包み込むような味わいを表現できるって訳だ。


たった出汁を変えた(これ)だけなのに、味わいの表現が全く違うなんて、料理人さん…まったく恐ろしい子。


まぁ、料理人さん云々はどうでも良いとしといて、この揚げナスが、冷えた日本酒によく合う。濃縮された出汁の旨味・ナスの旨味が広がった口内を、冷えた日本酒がキリっと洗い流す。冷えた日本酒は、外気温と手の温度少しずつ温度が上がっているから、一口ごとに変わっていく口当りが面白い。


一口食べて、一口呑む。たったこれだけの事で、どこからともなく溢れる幸福感に包まれる。そして、この幸せは泡沫の様に消えていくのだ。まったく“ヒト()”の“ユメ()”とかいて“儚い”とはよく言ったものだ…



ねぇ料理人さん、他にツマミになるようなものないですか?流石に少し物足りないのですが…えっ、無い?

しょうがないので、女将さんにお伺いを立てましょうか。ををっアカツキ印の新生姜ですね、これに味噌を付けたものを3人前いただきます。

なぜ?隣のコウチョーとキョクチョーの分じゃないですか。もう、今日は冒険(クエスト)はしません。【フードコート】で呑みますヨ。そうすれば、ログアウト後のお仕事もへっちゃらです。




かきあげました。

後日前話とつなげる予定ですので注意お気を付けください。

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