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【フードコート】超・試食会 実食② 焼きナス:シャチョー

今回、所用で申し訳ないが短いです。

コウチョーの奴に連れられてきた【フードコート】の試食会。私の前に出された皿、それに盛りつけられていた焼きナス。一口サイズに切られたそれを一つ口の中に放り込む。


「…命の海だ。」


以前の試食会でも同じようなことを言った気がしないこともないが、焼きナスを口に入れた瞬間。一瞬で目の前が真っ白になり、そこから宇宙が広がった。幾千・幾万の星が生まれ、すべての命の礎となる栄養素が濃縮された海ができる。

昔のアニメで、“惑星(ホシ)をも砕く一撃”と表現した必殺技があったが、衝撃という言葉で表現するならそれ以上だ。まさにこの一口(焼きナス)に宇宙開闢から生命誕生までの衝撃(ストーリー)を観た。


火はしっかりと中まで通っているが、それ以上でも以下でもない。焼きナスとしての風味・味わいを損なわない絶妙の焼き加減。冷蔵庫でじっくり冷やし、出汁をたっぷり吸いこんだ黄金色に輝く宝石。


そしてナスを咀嚼する度にじわりじわりと沁みだしてくるこの出汁。今まで味わったことのない、濃厚なのにしつこくない。滋味豊富なのに、あっさりしているではないか。醤油とみりんの薄い味付けは、出汁と焼きナスの風味を損なわず、繋ぎ合わせる役目をしっかりとこなしている。


最後に焼きナスの上にかかっている、出汁と同じ枯節で作った糸がきの香りが、味に芯を通し更に膨らみを持たしているようだ。


たった一口食べただけで、ここまで衝撃が走った料理は、空竜(ドラゴン)のカルビ丼以来だ。これは気を引き締めて取り掛からねばなるまい。


「料理人さん、この焼きナスを日本酒に合わせてみたくなった。相性のいい酒を頼む。」


『うむっ、了解した。』


料理人さんの指示で、給仕娘さんが出してきたものは、人肌ほどの燗酒の徳利だ。特に銘柄はないが、料理人さんもよく調理酒として使う癖のない味だそうで、【農協】の生産職自慢の逸品だそうな。

一杯目だけ、と給仕娘さんのお酌でお猪口に注いでもらい、仰ぐように喉に流し込む。さほど強くない酒精と癖のない米の香りが、舌と口内を綺麗に洗い流していくと思いきや、日本酒の程よい暖かさが、舌に残っている焼きナスの出汁と混ざりあい、引いた波がまた戻ってくるかの如く、ほのかな香りがふうわりと口内に広がってくる。


焼きナスを一口、出汁とナスの味が口の中に広がる。それを人肌の日本酒で流すと今度は日本酒で暖められた出汁の香りが花開き、日本酒と出汁・焼きナスの一体感が生まれる。ほぅと吐き出す息もまた旨い。


「この一体感は、フランス料理で言うところのマリアージュ。焼きナスと日本酒、二つの料理がいま、ひとつとなり、遥か天空(そら)を駆けめぐるのです。」


気が付けば、カラの小鉢を両手で天に掲げるように持ち、立ち上がっていた。めちゃくちゃ恥ずかしいセリフが次から次にと自然と言葉に出てくる。その様はまるで中学2年生の男の子が患う、通称中二病(あの病気)のようだが、まだこちらには人生の重み分だけの蘊蓄がある。

まぁ、どれだけの美辞麗句を述べようとも、やってる事は恥かしいの一点張りのため、後で死ぬほど後悔するかもしれないが、ここは経験と実績に基づき、勢いで何とか場をごまかそうではないか。


「すまないが、お代わりをいただこう。」


えっお代わりは無い?うわっすっげぇこっぱずかしい(泣)


でも、隣の揚げナスは私の分?食べ比べていいの?

なんだろう、この落としてからの上げられる、躾け感満載のやり取り… ハマってしまいそうです。




焼きナス回です。揚げナス回は次の投稿になります。

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