完成、親子丼!!
ご飯が炊き上がり、蒸らしも終った処を見計らい、俺は鶏がらスープの具合を確認する。丁寧にアクを掬う事により、上品で澄んだ味わいのスープが出来上がった。余ったスープは他にも使えるため、これも保管してもらおうか。
では、早速作ってしまおうか。今回は親子丼鍋(これが正式名称)が無い為、フライパンを代用する。ここは、食堂だけあり、大きめの茶碗は有るので其れを使わせてもらおう。
フライパンに薄くスープを張り、其処に調味料(醤油・酒・みりん)を混ぜ合わせ火にかける。其処に湯通しした鶏肉と切った玉ねぎを入れ蓋をする。卵は別の容器に割入れておく。
茶碗に出来上がったばかりのご飯をよそい、フライパンの中を確認する。ほどよく鶏肉に火が通ったら、軽くかき混ぜた卵を投入し再度蓋をする。
タイミングはホンの一瞬、卵が半熟になったのを見計らい火から下ろし、熱々のご飯に載せる。最後に三葉を乗せ、親子丼の完成だ。
『どうぞ、お試し下さい。』
お女将さん・ご主人の前に出来たての親子丼を差し出す。芳炊きたてのご飯と、鶏肉・卵・出汁の合わさった親子丼独特の香りに、口内に湧き出す唾液を飲み込む二人。自分でもかなりの出来だと思う。
それを、匙を使い、まずは一口。少し固めに炊いたご飯だが、鶏の旨みが十分に滲みでた出汁を含んだ事により、何とも言えない美味を醸し出す。鶏肉も火が通り過ぎで固くなることもなく、程よい弾力があり、噛めば溢れる肉汁がさらに食欲を刺激する。半熟の卵も、シャキシャキの玉ねぎも、それだけでは少し物足りないかも知れないが、全てが混ざり合わさり一つの芸術品として昇華していく。
「「おかわりっ!!」」
アッと言う間に、親子丼を平らげてしまったばかりでなく、お代りを要求してくる二人を見て満足そうに微笑む料理人。
翌日より、この食堂の看板メニューが親子丼になったのは言うまでもない。