表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/98

料理人さん どうするのか


おっさん達が【魔王領】から戻ってから、現実世界で2週間…ゲーム世界の時間で約1カ月が過ぎた頃。遂にそれはやって来た。

そう、【無限世界の住人】(ゲーム)の大型アップデートだ。いや、実際はアップデートとは名ばかりの、【魔王領】との交流が切って落とされたのだ。

隣の大陸である【魔王領】が解禁され、大量の亜人系のNPCと交流できるチャンスとしか流されていないが。運営側としては、新規顧客の開拓や、既存プレイヤー達へのマンネリ防止策などのビジネスチャンスとなる。

そんなもんだから、国や神殿(運営)の対応が少しでも後手後手に回ると大変なことになるので、元国王様はじめ騎士さんや神官さん達は大忙しだ。


そんななか、【始まりの町・春】にある生産職クラン【農協】のおっさん4人(メンツ)といえば…


「おおっ、煮えたぞい。お玉を取ってくれんか?」


「あぁ味噌と肉の匂いが合わさって実に美味しそうですねぇ」


「なんだか、日本酒が呑みたくなるな」


『ちょっと、アカツキさん。肉だけじゃなく野菜も食べてくださいよ。』


「はっはっはっ、肉は早いもん勝ちじゃ。」


クランの広い敷地のど真ん中で、七輪に火を起こし牡丹鍋で昼から酒を(一杯)やっていた。

【魔王領】で討伐した地竜(巨大なイノシシ)のもも肉を低温で熟成、更に料理人さん特性の味噌に付け込めば。旨味の元でもあるアミノ酸を増大させ、肉質も柔らかく臭みもなくなる三重奏。

そんな特別製の逸品を惜しげもなく使い、白菜・春菊・長ネギなどのアカツキさんご謹製の野菜もたっぷり入れて、味噌で味を整えた、野性味がある中にも優雅さも醸し出す超素敵な鍋だ。

さらに鍋の脇には、(ドラゴン)の唐揚げ・海竜(でっかいウナギ)の白焼きも人数分用意してある。これに、キンキンに冷えたビール・日本酒・焼酎などなど。


メニューだけ見ると、【無限世界の住人】(ゲーム)のプレイヤーだけではなくNPCでも羨むようなラインナップだが。今、この場にはこの4人しかいない。

この4人が仕事もせず、昼間から酒をかっ喰らっているのには訳がある。

【魔王領】から帰還して、地竜(巨大なイノシシ)の試食会を行い、日常に戻ったある日の事…


「おおぅ…どうやら、〈農業〉のスキルが最大値になったようじゃわい」


と言ったアカツキさんを皮切りに、


「ふむ。オレの〈大工〉もカウントストップ(カンスト)したみたいだな」


「私の〈飼育〉もレベルマックスのようです」


次々にメインのスキルが最大レベルに達したのだ。料理人さんの時は、史上最速でのスキルレベルカンストだったため…ってよりは、元国王様陣営やブラコン(一部のお偉いさん)が暇してたから記念式典(あんな事)をやってのけたのだが。

今回は【魔王領】の住人の受け入れ態勢を作るため、大忙しなためこっちにかまっている余裕がない様だ。なぜなら、元国王様ではなく元王妃様が3人にスキル宝珠2個とレアアイテムを【フードコート】に夜食の手配するついでに渡しに来るくらいだからだ。


さすがに、3人が3人ともメインのスキルがカンストしたんだから、ささやかながらお祝いでもしようって事で、一席ぶった訳である。

いや、【フードコート】内でも良かったのだが、少しでもお客が居ると落ち着かないのだ…料理人さんが。まぁ、視界の隅っこにチラチラ写る野次馬がいたりするが、気になるほどでもないので、手酌で酒を酌み交わす。


ほかにも新しい出来事があってな。

私たちのテーブルの脇で、餌を食べている暴突丑(クロ)巨大鶏(シロ)になんと弟分ができたのだ。

その名も空竜(ドラゴン)のミドリと陸竜(ベヒーモス)のチャイだ。オオガキさんの〈飼育〉スキルがカンストしたので、記念にストックしていたモンスターの卵をプレゼントしたのだ。カンストレベルが調子に乗って、バフしまくって孵化させたもんだから、これ以上ない位の最高品種のモンスターが爆誕してしまったってことだ。因みに、刷り込み(インプリンティング)によって親認定されてしまったのは…私だ。


だって、仕込みのため【フードコート】に来たら、厩舎の前で仁王立ち?しているクロとシロに首根っこを捕まれ、強制的に連れていかれて厩舎に放り込まれたんだ。そしたら孵化したばかりの空竜と陸竜が、つぶらな瞳で私を視てくるんだ…遣られたね。思わず名前を付けて、餌をあげてしまった。

その間、何度か血まみれで血涙を流しながらも倒れ伏すオオガキさんを踏みつけていたのに気が付かなかった…嘘だ。

ヤラレタ本人(オオガキさん)に話を聞いたのだが、一番に厩舎に入ろうとしたら、後ろからクロとシロに不意打ちを喰らったそうだ。ひと思いにヤっちゃうと、【神殿】に帰還(死に戻り)で何度でもチャレンジされるので、瀕死で身動きできないようにして転がしていたのではないか?との事だ。クロとシロ(あいつ等)頭良いな。

ってか、其処までヤられてもやさぐれないオオガキさん。アンタこそ真の動物王国の国王様だよ。


って事で、新しくクラン【農協】の仲間になった2匹のお披露目もパパッと終わらせ、こうして畑の真ん中で宴会なんかをしている。

ふと見上げた無限世界の住人(ゲーム世界)の空は蒼く、とても高く。しばらく前までの事故で鬱屈していた自分を忘れさせてくれる。目を凝らせばはるか上空、大きな空竜(ドラゴン)が、【農協】の上空を横切る。


その際何かを落としていったように見えた。…いや、【農協】(ここ)を目掛けて落としていったようだ。


「はっぁぁぁぁぁぁはっはっはっはっはっ‼【農協】よ、私は帰ってきたぁぁぁぁぁぁ」


ずがぁぁぁぁん!!!!!


「ぷげらぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ(ドップラー効果)


高笑いとともに空竜から落とされた簀巻きの魔王様(笑)(ソレ)は、ハクのブレスに狙撃され、明後日の方向へ飛んで逝った。まぁ魔王様(笑)だから死なないでしょう、ハク良くやった。


『ふっ、トラブルがそっちからくるんじゃ、おちおち感傷に浸ってられんか。』


魔王様(笑)が到着するまでに、テーブルの上の料理を早く食べよう(片付けよう)

さぁ、今回の厄介事は何だろう。おっさん連中は互いの顔を見ながら思いを馳せる。


「グンジ君、いい顔をしとるなぁ。」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ