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オッサンども 好き勝手

魔王様(仮)のご高説の後、おっさん達(我々)はVIP扱いとして魔王様(仮)を乗せたままの牛車で魔王城までのパレードに参加した。牛車の牽引については、魔王城で使役獣を出すとの申し出があったが、丁寧にお断りをさせていただいた。

クラン【農協】の牛車を牽くのは、召喚したクロベェしかいない。いや、クロベェにしか牽かせない。

で、その牛車の後ろをご都合主義的(ササキさんのスキル)小さく(で石化鶏に)なったシロが着いてくる。そして、ハクがクロベェの頭の上で先導役だ。

即席ながら馬装などで着飾ったシロとクロベェは何処かしら誇らしく、立派に見える。もちろんハクもおめかしをしているが、こっちは完全にキャラが違っている…いや、馬子にも衣装とはよく言ったもんだ。白龍(ホワイトドラゴン)だけど。


さて、喝采を浴びるのは気持ちいいのだが、慣れないことをするのは疲れるってことで。魔王城に入ったら、その後の事は放っておいて客間で休ませてもらうことにした。

ゲーム世界だから肉体的な疲れはないけれど、精神的な疲労を回復させるため、一旦ログアウトして気持ちを入れ替えるか。


堅苦しい式云々(面倒臭い事)は元国王様にまかせて、おっさん達はフリーダムに【魔王領】生活を満喫している。


大工のオオガキさんは、【魔王領】(この国)の建築様式を視るために、【王都・グランドクロス】を縦横無尽に行き来している。

農家のアカツキさんは、まんま【王都】の穀倉地帯へクロベェが牽く牛車でお出かけ。

残念飼育員のササキさんは、アカツキさんのお供兼【魔王領】の動物たちを…野生・家畜問わずに見に行ったようだ。


そして、わたしは…【王都・グランドクロス】の目貫通りに面した食堂で御世話になっている。【魔王領】(こっち)には人間という種族が存在しないため、“食”生活が全然違う。一番近いのは土眷属人(ドワーフ)という、鍛冶や細工を行う職人気質だが背が低くがっしりとした体形の種族で、こいつらは大量の酒とそれに合う味の濃い料理を好む。

逆に風眷属人(エルフ)半馬人(ケンタウロス)達は酒は飲むが、肉は食わない…むしろ野菜しか喰わねぇ。菜食主義者(ベジタリアン)のきらいがあるわけではなく、舌に在る味を感じる器官(味蕾)の一部の密度が高く、肉に含まれる血と脂の味がダメなんだそうな。苦手なだけで食べられないってのが、こう料理人の魂に火を点けてくれる。


無限世界の住人(この世界)は宗教というものが曖昧(=運営の回し者)なため、現実世界(リアル)での宗教問題がないので、教義的に食べられない食材ってのがないからやりやすい。

ただ、むやみに【フードコート】よろしく全力全開で料理をしては、私たちが【魔王領】から去ったあとが大変なので、そこは様子を見ながらちょこちょこっと(笑)


ってことで、私はキャベツ・ニンジン・タマネギの千切りを大量にこさえているわけだ。特にこの野菜の千切りは、料理人としての技量が簡単に判るもので、野菜の繊維を確り斬れるか潰すかで味・舌触り、さらに保存性にまで差が出てくる。

そして、この野菜3種類の千切りはそのまま食べても美味いが、アレンジで色々と利用できるのだ。キュウリ・レタスなどの野菜を足せば、彩りのいいサラダに。水溶き小麦粉に落としてかき揚げにもできる、コツは先に小麦粉少量をまぶしておくことだ。塩をして漬け込み、醗酵させればザワークラウトだ。


【始まりの街・春】の食堂では、その見た目で客を引き込んだが。|【王都・グランドクロス】《こちらの食堂》では、刻んだ野菜の味で勝負した。特に風眷属人(エルフ)半馬人(ケンタウロス)の皆様にはよく足を運んでいただくことになった。まぁ、調子に乗って野菜の飾り彫りなんてしたりもしたが、ご愛敬ってことで。


【魔王領】(こっち)では万人受けする料理ってのは難しいが、各種族ごとの好みは把握できたので、色々試している。

特に揚げ物に使う油に拘ってみた。胡麻や向日葵の種は、粒が小さいし量を集めるのが大変なので、落花生と扁桃(アーモンド)で油を搾る。

石臼で粉々にした落花生と扁桃を麻袋に入れて重しを乗せてカラッカラになるまで搾りつくす。次に目の細かい…綿ないし絹の目の細かい袋で、細かいゴミを漉しとれば現実世界では超高級品の食用油ができる。


サラッとしていて、腰が強く、酸化し難い。ラード特有の脂臭さが無く、カラッと揚がるので【魔王領】での料理には向いているだろう。


この油を使って揚げる食材は豆腐だ。


大豆自体はなかったが、それによく似た豆科の植物が【魔王領】にもあったので、乾燥した豆科の植物(それ)を水に浸して戻す。たっぷり水を吸ったら、臼で細かく潰していくと水がだんだんと白くなってくる。

濁っているわけではなく、豆の成分が出てきているのだ。これを鍋に移し替え火にかけ、焦げ付かないようにかき混ぜながら沸騰させる。豆特有の青臭さがなくなれば、鍋を火からおろして、布で濾す。

このとき漉しとったモノが“オカラ”、白い液体が豆乳。オカラは別口で使うので取っておく。

豆乳がまだ熱いうち…大体75℃前後で、海水を煮詰めて作った“にがり”をヘラでかき混ぜながら入れていく。このまま笊に入れて固めればザル豆腐になるが、今回は型に流し入れて少し重しをかける。そうして出来上がるのが通称木綿豆腐だ。

ちなみに、この木綿豆腐と絹豆腐の違いは、豆腐として形成される際に重しを載せるか載せないかだけ。水分を抜いて多少固いのが木綿豆腐で、水分を抜かずに()のような滑らかな舌触りになったのが絹豆腐ってわけで、別に木綿や絹で豆乳を濾して作ったわけではないので勘違いしないように。


そのまま葱・生姜を載せた冷奴で食べても、湯豆腐でも大変おいしい【魔王領】産のお豆腐だ。しかし、この私がそれだけで終わらせたりするわけがない。


木綿豆腐の水を軽く切って小麦粉をまぶして油で揚げれば、揚げ出し豆腐だ。キノコをたっぷり入れた餡を掛けて召し上がれ。

豆腐に重しを更にかけ、水分をしこたま抜く。厚さによって名前が変わるが、そのままの厚さで揚げれば、厚揚げ。薄く切ってあげれば油揚げになる。

どちらも火で炙って焦げ目がついたところで、生姜醤油を掛けただけで立派なつまみだ。

油揚げに関しては、甘辛く煮揚げたものに酢飯を入れた稲荷寿司(おいなりさん)を忘れてはいけない。しかも狐獣人(ワーフォックス)の皆様はこの稲荷寿司(おいなりさん)に目がない様だ。また、酢飯の替わりに炊いたオカラを使った稲荷寿司(おいなりさん)はヘルシーで女性に人気が出るだろう。


更に、この水分を抜いた豆腐は、そのまま鉄板で焼けば豆腐ステーキとなるので、脂や血の匂いが苦手な種族でも肉の代用品として食べていただくことができる。


他にも、豆乳で湯葉を作ったり。豆腐を凍らして凍み豆腐、乾燥させて高野豆腐などの加工方法や、豆腐のサラダ、豆腐アイスなど調理方法などを【王都・グランドクロス】の食堂に落とし込んでみた。


そうだよね、和食の基本は卵料理と豆腐料理だから、多少やりすぎたかなって思わなくもないけど、まぁ基本中の基本だから大丈夫だよね?ね?







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