表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/98

必殺!! 料理人(笑)

このお話は、22時以降に読む場合は覚悟が必要です。

最近お約束になってきたカツ丼バトルロワイヤ(昼食前のアレ)ルも終わり、お昼のラッシュも乗り越えれば、一息ついて夕食までの仕込みの時間だ。最近、お茶やお菓子に目覚めたウェイトレスのお姉さま方が、交代でアフタヌーンティーと称して喫茶店なるものを青空食堂(外のテーブル)で行っているが、それ以外の【フードコート】のスタッフはある程度自由な時間を持つことができる。


今日も今日とて新しい無限世界の住人(この世界)の料理の開発に挑戦している料理人さんやナナセ(女料理人)さんは、調理場に引っ込んで食材を調理している。そして、その試作品をご相伴にあずかろうと、元国王様が虎視眈々と料理人さんの手元を凝視している。元国王様(アンタ)、いまさっきカツ丼食ったばかりでしょ?しかも三杯も。




小春(うらら)かな日差しの中、畑ではアカツキさんの耕運機無双(喧しいアレ)が轟き、暴突丑のクロベェが嘶く。そして、石化鶏のシロや白龍のハクが、変なチョッカイをかけてくるプレイヤー達を一撃で屠る。


まさに【始まりの街・春】に相応しい穏やかな昼下がり・・・に、恐怖の大王(ソノ人)はやってきた。



「あなたっ!! 何時も何時も!! 仕事をほっぽり出して!! いったい何様のつもりですか!!」


建物が震えんばかりの大声と、般若のような形相で【フードコート】の扉を乱暴に開け放ったのは、ひと目で上等だと判るドレスと高貴なオーラを纏った妙齢の女性だった。

|逆らったらエライ目にあう《絶対的な》雰囲気をその身に纏い、足早に歩くも足音は立てずあくまでも優雅に。他人の視線をその一身に浴びながらも威とも思わず、その女性は元国王様の前に立ちはだかったのだ。


「え・・・い・・・いやぁ、あの・・・その、な?」


顔面を蒼白に染め、しどろもどろに答え(言い訳)になっていない答え(言い訳)を口にする元国王様。まぁ、お察しの通り国王様を見降ろすように、仁王立ちする女性は元王妃様な訳なのだが、なんか雰囲気ちがくね?ってより尻に敷かれ過ぎてね?


「今日という今日は、たまりに溜まった仕事を、片付けていただきますからね!!」


有無を言わさぬそのままに、元国王様の首根っこを引っ掴んで【フードコート】を出て行ってしまった。


『…元国王様(オッサン)、お代…』


食い逃げの現行犯であったりする。しかし、あの状態で声をかけ、代金を徴収できるほど肝が据わっている者はフードコート(ココ)には残念ながら居なかった。


『すんません女将さん、私が出しときます。』


徴収し忘れた責任は私にあると、料理人さんが自分の財布から代金をウェイトレスに渡す。お金を受け取った女将が、毎度ありとレジにお金を入れてその日のトラブルは終了した。


そして、この話は翌日に笑い話になるはずなのだが、此処で終わらないのがこの小説。

その日の【フードコート】の営業時間終了ぎりぎりに、問題(トラブル)がスクラム組んでマイムマイムを踊りながらやってきた。


「料理人さんはいますかぁぁぁ!!」


勢いよく【フードコート】の扉が開けられる。そこに立っていたのは、【神殿】の神官服をきた男性だ。ひどく汗をかき、肩で息をしている様から、【神殿】からフードコート(ここ)まで走ってきたようだ。

女将さんの案内で、近くの席に座らせ(お冷)をお出しする。それを一気に煽ると、ブハーっと大きく息を吐きだす。ようやく一息ついたようで、乱れた服装を整え料理人さんに向き合う。


「夜分突然に申し訳ございません。どうしても料理人さんにお願いがございまして・・・」


話を聞いてみると、たまった仕事を片付け中の大神官(元国王様)がこの時間になって、腹が減ったと…料理人さんが作るご飯を食べないと仕事をしないと(のたま)ったそうな。しかし、直接【フードコート】に行かせると絶対帰って来なくなるのが目に見えているので、打開策として使いを寄越し何か夜食を作っていただこうという事になった。

で、時計を見たら【フードコート】の営業時間が終わりに近いため、こうして急ぎ走ってきたそうな。


ぶっちゃけレストラン(こう云った処)にはオーダーストップというものが在り、それは一般的に営業30分前だったりする。で、今の時間は営業終了間際…普通にダメ(ガチアウト)な時間だ。料理を作るにしても出汁はもう無いし、食材もほとんど残っていない。


しかし飯を食わせないと、あの元国王様(ダメおやじ)が仕事をしないというし。ここまで走ってきた神官さんを手ぶらで帰すのも可哀想だ。


まったくどこまで他人(人様)に迷惑をかければ気が済むんだあの元国王様(オッサン)は…あれでも元国王を引退した大神官だってんだから笑えるだろブラザー?


使えるものとして、翌日の賄いの炒飯用にとっておいたご飯と漬け物、味噌に漬け込んでおいた焼き物(ログアウト前の晩酌)用の(ドラゴン)巨大鰻(シーサーペント)位だ。


このまま竜や鰻を焼いて、ほぐしてご飯に乗せて出汁でもかければ香高いお茶漬けになるのは目に見えているが。生憎出汁を切らしてしまっているし、神殿に運ぶ前に出汁が冷めてしまうので却下だ。


ってことで、今回は焼おにぎりをつくろうと思います。なぜって?具材や握り飯を焼くための火は七輪で十分だし、どうせなら元国王様(大神官)以外の【神殿】で働く人、そして昼間襲来してきた元王妃様の苦労も労ってあげようじゃないかって事です。


大人の世界ってのは、長い物に巻かれたほうが勝つのです。そして、これで元王妃様からの印象が良くなれば、クラン【農協】が被る元国王様からの無理難題(無茶ブリ)が減るかもしれない。そう考えれば、面倒臭い仕事にも俄然やる気も出るし、虎の子の竜と鰻の味噌漬けだって出しちゃうぞって気になるってもんだ。



まずは七輪に火を起こす。次に味噌漬けの味噌を手でこそぎ落とし、焼けるようにする。七輪に乗せた金網がしっかりと熱を持ったら、火を弱くして味噌漬けを金網に乗せる。

弱火にすることで、じっくりと中まで火を通すだけではなく、表面に残る味噌が焦げるのを遅くすることができる。

味噌漬けを焼いてる最中も手は止めない。ご飯をおにぎり大に、具を包んだらすぐ握れるように小分けしておく。

この匂いだけでご飯3杯、日本酒なら5合は逝けそうな味噌が焼ける香ばしくも甘く、そしてほんの少し苦みのある良い匂いが厨房内に漂う。女将さんやウェイトレスのお姉さま方の胃袋を直撃したのか、唾を飲み込む音が聞こえるが、これだけでは終わらんのだよ。


焼きあがった味噌漬けは、うちわで煽ぎ粗熱を取ったあと、軽くほぐして小分けにしたご飯の上に乗せる。おにぎりは具が中心になるように丸みのある三角形に握っていく。ちなみに元国王様分の一つだけスペシャル(ワサビてんこ盛り)な具材でお握りを一つ作ったりしているのは内緒だ。


七輪の金網は取り換え、再度熱くなったら今度はお握りを乗せる。パチパチと表面が焦げて来たらひっくり返し両面を同じくらい焼いていく。裏側が焼けたら、表側を醤油を日本酒で伸ばしたタレを刷毛で薄くサッと塗って再度ひっくり返す。


ジュワァァと金網の上でタレが焦げる音と薫りが、再度【フードコート】にいる皆さんの胃袋を刺激するが、もう少し我慢してほしい。

タレは2度付け、中の具は希少食材の(ドラゴン)巨大鰻(シーサーペント)の味噌漬け焼き。アカツキさんご謹製の野菜の糠漬けを添えた、料理人さん特製の焼おにぎりが完成です。


元国王様・元王妃様の分は個別に筍の皮で包み、【神殿】の職員さんたちの分は大皿に詰め込む。クロベェの牛車でお帰りになる職員さんへ、元国王様の焼きおにぎりを食べる順番をレクチャーして、【農協】の入口でお見送り。職員の皆さまお疲れ様です、焼おにぎりを食べて頑張ってください。そして元国王様は最後の焼きおにぎりを食べたらくたばってください、お願いします。


振り返り、【フードコート】の扉を開けると、あら不思議。餓えた狼さんが私を睨んでるではないですか。


…あのですね、実際(こんな時間)ご飯(炭水化物)は太りますよ?


「「「「「「あぁぁん?」」」」」


はい、判りました。すぐに作らせていただきます。




翌々日、お昼を食べに来た…なぜか顔に青たんをつくった【神殿】の職員さんから焼おにぎりの感想をいただいたのだが…


「あの焼おにぎり、見ただけでも美味しそうなのに、焦げたタレの薫りが胃袋を刺激し口の中を唾液の海に変えてしまいました。

勢いに任せて一口噛めば、表面はカリッと、そして中はホロッと崩れて口の中に広がります。噛めばタレの部分と白い部分のご飯が混ざり合い少し薄味ですが確かな触感と、薫りが脳髄を刺激していきます。

そしてもう一口、おにぎりの中心部分には味噌漬けの焼き物が入っており、タレの薫りと味噌の薫りが混ざり合って、えも言えぬ快感が口中いっぱいに広がり爆発する。

さらにその味噌漬けにされた具から滴る脂が、ご飯・タレ・味噌と混ざり合ったとき、其処には宇宙があった…いや、何もなかった筈なのに突然爆発し、そこに宇宙が誕生したと錯覚するほどの衝撃が奔り意識を振っとばしたのだ。

そして気が付いたら、職場(そこ)は戦場になっていました。そうです、その素晴らしい焼おにぎりを取り合ってバトルが始まってしまったのです。


匂いに誘われて集まった来た職員に対して圧倒的に足りない焼おにぎり。もう職員達は食欲(本能)が赴くまま手を出し足を出し、そこは阿鼻叫喚の地獄絵図でした


いや、本当に焼おにぎりは美味しかったんですよ。でも、焼おにぎり(アレ)はもう夜食には勘弁ですね。」



アハハと笑う職員さんの背中は何処か煤けて見えたが見ないふりをしておくことにして、元国王様のことを聞くと。

「最後の焼きおにぎりを食べるまでは、すっごく調子よく仕事していたみたいです。仕事が終わって最後の焼きおにぎりを食べたとたん気絶してしまったんですが、何かしたんですか」


はい、ワサビを大量に握り込んでありました。バレない様にご飯に刻んだ山葵の葉を刻み込んで匂いでわからない様に誤魔化して、しかも一口で具まで口に入るように気持ち小さく握って…

やっぱり、人に迷惑をかけたらダメと体に刻み込んでもらわないと再発しますからね。


後日、元王妃様から密かに詫び状と感謝状をいただいたのは秘密だ。




何と言いますか、ほかのキャラの書き分けもできていないのに、新キャラを出してしましました。

元王妃様ですよろしくお願いします。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ