表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/98

第一回 ユウタロウ君のお誕生日大作戦!!(後編)


「いきます…3・2・1・スタート!!」


はい、やってまいりましたユウタロウ少年のお誕生日大作戦、当日です。今回の《お料理、喰えるもんなら喰ってみろ!!》のタイトルコールは…


『…グンジのお料理、喰えるものならぁ…喰ってみろ(ボソッ)』


はい、料理人さんにボソッと言っていただきました。さて、今回は前回の続き…というよりは前回が仕込み回で、今回は調理回になりましょうか。

ゲストにおきましては、この世界(無限世界の住人)において、元祖食の伝道師・卵かけご飯バカ一代・King of TKGこと(サカキ)さんに登場いただきました。


「どうも、美味い飯が食えると聞いて、有休を使ってログインしていますサカキです。」


はい、よろしくお願いします。


「しかし、元国王様、前回ゲストの弟さんに聞きましたが…」


何でしょうか?


「前は外で隠れて実況していたと聞きましたが、なぜ今回は【フードコート】の客席で行っているのでしょう?」


なぜって、そりゃぁあんた、料理人さんが作った料理をその場でご相伴預かるためじゃないですか。

前回は、クレープを焼いたそばからトッピングしてお客さんやスタッフ達に大盤振る舞いしていたにも関わらず、私の元に一口分も来なかったんです!!

もうそれが悔しいやら口惜しいやらで、思い出しては枕を涙で濡らしたもんですよ。


「(あっ…これ、絶対アカンやつだ。)」


って事で、賢い私は考えたんですよ。食べたいならば食べられる場所に行けばいいじゃないかって。そういった経緯で解説席を【フードコート】内に設置したんですよ!!


「でも…それって、料理人さんが解説席(こちら)にお裾分けしてくれなければ意味ないですよね?」


そこはそれ、料理人さんのモラルと撮影スタッフの努力に期待いたしましょう。


さて、カメラを調理場に移しましょう。今回の撮影に関してですが、お誕生会当日という事もあり、タイトルの看板を外し、カメラも目立たないように配置してあります。


「スタッフさん達のちょっとした配慮が光ります。」


はい、主役はユウタロウ少年と少女の2人になりますので、あまりカメラが目立つと少年・少女の自然な表情が撮影できませんので…


「えっ…(…撮影する気なんだ)」


そして、今回の主役ユウタロウ少年ですが、まだログインしておりません。


「おいおい、大丈夫なのか?」


はい大丈夫です、これも事前に打ち合わせしてありますので。ユウタロウ少年の調理パートは、ジャガイモと鶏肉を油で揚げるだけなので、特に問題はありません。


なぜこの時間かと申しますと、料理人さんがお誕生会に出すサイドメニューや昨日仕込んでいたハンバーグ等を調理するからなのです。現在料理人さんは、大量のジャガイモを切って水に晒していますが、これが終ったら本番です。


薄く切ったハムを、貝割れ・チーズ・棒状に切った野菜などを巻き付けて、おしゃれなオードブルを作っていく。これは口直しにもってこいだ。

薄く削ぎ切りにしたマグロに、潰したアボガド・新玉葱のスライスをのせ手製のドレッシングをかけるなんちゃってカルパッチョ。マグロとアボガドの組み合わせって間違いないんだよなぁ。

お祝いの席って事で、寿司も作り始めた。握りやチラシではなく、カラフルな細巻きを巻き込んだ具沢山な太巻きだ。料理人さんの技が光る、そして桜でんぶのハートが粋な演出だ。


ユウタロウ少年の出す料理を邪魔しないような配慮であろうが、その一つ一つが美味そうであるのは間違いない。


ををぅ、余ったマグロを卵の黄身・醤油・胡麻油・ワサビと一緒に叩いたものを、これまた余った酢飯で胡瓜の千切りと一緒に細巻きにしたものを料理人さんがこっちに持ってきたよ。

なに?食べていいの?


『喧しいから、それでも食べて黙っててくださいよ。』


あ…はい、スイマセン。では、いただきます。では、一つ目をパクリっと…

あぁ、ユッケ風にした濃厚なマグロが口の中でほぐれて、酢飯・しゃきしゃきの胡瓜と一緒に噛むたびに一つに纏まって、心が自分勝手に空を飛んでいきそうな気持になってしまう。また、鼻から抜ける胡麻・ワサビ・胡瓜の香りが気分をさっぱりさせ、手が無意識のうちに次の細巻きに伸びてしまう。

私でも此処まで感銘を受けてしまうって事は、隣のTKGバカ一代は…


「・・・・・・・・・・・・・・・・・」


あぁ、もう何処かへ逝ってしまったのですね。かなり遠くから美味いぞと叫ぶ声が聞こえるから、一応生存はしているようだ。面倒臭いから、彼は放っておいてこのまま番組を進めてしまいましょう。


「おまたせしましたぁぁぁぁ!!」


来たか、今回の主役ユウタロウ少年。さぁ、うがい・手洗いをしてさっさと白衣に着替えるのだ。


「はいっ!!」


うむっ、元気一杯でよろしい。では、早速調理の方に移ってもらおうか…なに?タイトルコールをやってもらう?いいだろうそこら辺はスタッフの皆さんが取り纏めるがいいだろう。


では、元気よく言ってみよう。


「ハイ、行きますよぉ。3・2・1…スタート」


「ユウタロウのお料理、喰えるものならぁぁぁぁぁぁ喰ってみろぉぉぉ!!」


「ハイ、OKです。」


気合の入ったタイトルコールをありがとう。今回分のタイトルコールは、編集でCMを挟む際のアイキャッチに使わせてもらうみたいだ。

本日の調理分の打ち合わせを料理人さんとしてから、少年は揚げ油(フライヤー)の前に陣取る。そこに料理人さんが水分を十分に拭き取ったジャガイモを、二人分+αの分量をバットで手渡してくる。

まずは160℃のやや低温で油の温度を設定し、ジャガイモを揚げはじめる。ジャガイモを一気に全部入れると油の温度が下がってしまうため、少量ずつ左側から入れていく。油の中のジャガイモに火が通って浮いてきたら、揚げ色が付く前に油切用のバットに上げてしまう。


続いて、ユウタロウ少年がジャガイモを揚げている間に、料理人さんが片栗粉を打っておいた鶏腿肉を揚げる。これもジャガイモと同じで二度揚げが前提なので、油の温度は同じ160℃だ。これも左側から順番に油に投入し、温度と火加減の管理をしやすくしている。


さぁ、鶏肉も火が入り浮いてきたらバットに上げてしまおう。油の中に浮いている片栗粉などを除去したら油の温度を180℃に上げて、二度揚げ開始だ。

今回はさすがに油跳ねから火傷につながる可能性があるので料理人さんもギャラリーのお姉様がたも黙って観ているようだ。

手順は先ほどと同じで順番にジャガイモを入れていくだけ。ただし、油の温度が高い事と一度油で揚げているので油断しているとあっという間に焦げてしまうって事だ。ユウタロウ少年の視線は真剣に油の中で泳ぐジャガイモに釘付けだ。


『…いいぞ。』


「はい!!」


料理人さんの合図の元、ジャガイモを油から油切用のバットに上げる。ほんのりと狐色、ジャガイモが油で揚げられて漂うフライドポテトのいい薫りが【フードコート】に広がる。油が切れたら、熱いまま乾いたボウルに入れて塩・胡椒をふりかけ中華鍋を振る要領でザックザックと混ぜ合わせる。これでフライドポテトの完成だ、皿に盛り付けたら、料理人さんの【保温】の料理魔法をかけて保温庫に入れておく。

つづいて唐揚げだ。こちらも同じように左側から順に油に入れて、しっかりと狐色になるまで揚げていく。油が切れたら皿に盛り付けて【保温】の料理魔法をかけて終了だ。


そして、試食として私の前にユウタロウ少年が揚げたフライドポテトと唐揚げがひとつずつ。少年に無理を承知でお伺いを立ててみたら、あっさりといただくことが出来た。

まずはフライドポテトだ。…ふむ、外はカリッと揚がっているが、中はホクホクとジャガイモの触感をしっかりと残してある。味付けは薄い感じがするが、お子様が食べることを考慮すれば中々好いではないか。

次は唐揚げだ。…こちらも外はカリッと揚がっているが、肉自体に噛みごたえがあり、噛みしめる度にジューシーな肉汁があふれてきて…味付けも悪くない。いやぁ最高だねぇ。


さて、そろそろ少女が御来店の時間になりました。ここで〖お料理、喰えるものならぁ…喰ってみろ!!〗は一旦終了となります。続きは後日ダイジェストでお送りいたします。






―――――――――――――ダイジェスト――――――――――――


〖お料理、喰えるものならぁ…喰ってみろ!!〗ダイジェスト版です。解説の元国王様が、打ち上げの料理を食べ過ぎて解説できないため。不肖ながら私、スタッフAがお送りいたします。


まずは、お誕生会が始まってからですね。本日のメインディッシュでもあるハンバーグの調理場面をお送りいたします。調理するのはクラン【農協】が誇る女料理人さんことナナセさんです。

いつものコックコートではなく、パンツスーツタイプの給仕服での登場です。給仕の皆さんのメイド服も良いですが、男装の麗人よろしくパンツスーツも捨てがたいですね。特に後姿が良いんですよねぇ。(脱線すんなっ…ゴスっ)


痛たたたた…、先輩から怒られてしまいました。話を戻します。


低めのカートに七輪とフライパンを乗せ、少年・少女の座る席の前で調理を始めました。ハンバーグはあらかじめ2人分を形成してバットに乗せてあります。熱くなったフライパンにバターを落とし、よく油を馴染ませたら早速ハンバーグを焼くわけですが、いきなりナナセさんの技が炸裂します。

二つのハンバーグを重ね、側面を転がすように焼き目を付けていきます。十分な焼き目が付いたら重ねたハンバーグを二つに分け、片面にも焼き目を付けて即ひっくり返します。ここまでを手で触ることなく2本のフォークで熟していくナナセさんの技に少年・少女ともに吃驚しています。

さぁ、十分に焼き目が付いたらブランデーを振り掛けフランベさせアルコールが飛んだら蓋をして弱火で蒸し焼きにしていきます。ハンバーグに万遍なく焼き目を付けることで肉汁をハンバーグの中に閉じ込め溢れ流れ出すのを防ぐのだそうで、蓋を取った時にフライパンに肉汁が余りこぼれず、オーブンで焼いたようにふっくらと焼き上げることが可能だそうです。

ハンバーグを皿に取り、フライパンに残った油と肉汁に醤油・アルコール・砂糖等でソースを作り、あしらいとしてクレソンやベビーコーンで飾り付けて、ソースをかけたら完成です。


できたてのハンバーグにフォークを突き立てナイフで切っていくたびに溢れ出る肉汁に、口の中に唾があふれてきます。これ、間違いなく美味いですよね。あぁ私もこんなハンバーグを食べてみたいですねぇ。


感激で涙を溢れさせ、むせび泣く少女を慰める少年の微笑ましい一面も有りましたが、それはそれ。


最後は少年・少女がお帰りになった後の打ち上げでの場面ですね。

少年少女のテーブルを給仕のお姉様がたが片づけている最中に、料理人さんが本気を出しました。

まずは棒棒鶏です。昨日蒸しておいた鶏むね肉を載せるための胡瓜の千切りをパパッと作ります。これはよく中華料理屋で見る胡瓜を(ハス)に切ったものを細くスライスして上下に濃い緑色が残る切り方ではなく、胡瓜を桂剥きにしてから千切りにする刺身のツマの切り方ですね。胸肉もただブツブツ切るのではなく、薄く削ぐように切ってます。これにゴマダレを直接かけてしますと、胡瓜がダレてしまうので、小鉢に付けダレとして用意してあります。

胸肉で胡瓜を包んで、タレを付けて食べる…なんかオシャレな棒棒鶏になりましたね。


肉団子は、中華鍋で醤油・酒・砂糖・酢を合わせて作った甘酢ダレに絡めて、乾肉丸子(シャオローワンズ)の完成。


ベーコンを巻いたハンバーグはフライパンでまとめて焼いちゃいます。こちらも理屈としては先ほどのナナセさんが焼いたハンバーグ同様に、肉汁を閉じ込めておく工夫の一つです。補足として、ベーコンの肉汁・脂も加算されるって事ですかね。


で、チーズを包んだハンバーグは、強火で一気に全面に焼き目を付けたあと、作っていたデミグラスソースの鍋に突っ込んでコトコト煮込み始めた。肉そのものの味に、肉のうまみの染み出たデミグラスソースとチーズのコクが加わったら、間違いなく美味いでしょう。それも暴力的なほどに…


パンを巻いたハンバーグは鉄串に刺してから、強火の遠火の炭火で焼き上げます。遠赤外線で中まで火を通し、先ほどとは逆に溢れ出た肉汁は巻き付けたパンが吸収しますが、表面はカリッと焼いたパンに吸収された肉汁は、それ以上外に染み出すことなくパンとハンバーグを一緒に食べることでその旨みを十二分に発揮する事でしょう。


同じ炭火で、串に刺した鶏肉も焼いていく。まぁ焼き鳥なんですが、腿肉はユウタロウ少年(唐揚げ)の方で殆ど使ってしまったので、その残りを使ってって事ですが、そもそも巨嘴鶏が大きいので、かなりの量がとれます。

しっぽ付近のテール・首肉のネック・横隔膜のさがり・手羽先・手羽元・皮・軟骨・ハツ・レバー・砂肝・キンカン等など、そしてくず肉は叩いてつくね串に。

種類豊富に、塩・タレ半々で焼いていきます。


最後に、昨日作ったミルフィーユケーキを出して打ち上げの料理が完成です。


ちなみに私は、このダイジェスト編集のためにこの場に居なかったのですが、参加した先輩スタッフの話では、どの料理も大変美味しかったとの事です。あぁ良いですねぇ、羨ましいですねぇ、コンチクショウ。


…という事で、お料理番組〖お料理、喰えるものならぁ…喰ってみろ!!〗ダイジェスト版を終了します。編集・解説・その他もろもろはスタッフAでお送りいたしました。

それでは、みなさんごきげんよう。


                        完











次番組のスタッフになったら打ち上げに参加させてもらえる様にしよう。

たとえそれが、後輩を一人生贄に差し出すことになっても絶対参加してみせる!!

(某つぶやきSNSのスタッフAのページより)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ