お料理、喰えるものならぁ、喰ってみろ!! 第一回 ユウタロウ君のお誕生日大作戦!!(前編)
復活記念として書き上げました。ユウタロウ少年のお誕生日大作戦からの裏方…もとい元国王様の視点で当時の番組を振り返ってみてみましょうって事です。
『…グンジ。』
「ユ…ユウタロウの」
『「お料理、喰えるものならぁ…喰ってみろ!!」』
はい、始まりました記念すべき第一回のお料理番組、その名も…《お料理、喰えるものならぁ、喰ってみろ!!》です。このMRPGゲームの新規プレイヤー獲得に向けての対外的な宣伝と、現在のプレイヤーに此処までこのゲームはフリーダムな事ができるとアピールする為の企画として、クラン【農協】の尻馬に乗り勢いだけで始めてしまったこの番組。とりあえず、料理人さんが飽きるまでは続けていきたいと思います。
ちなみに、この番組の実況と解説は、わたくし元国王と、その時々にゲストを迎えてお伝えしたいと思います。
今回は飛び込みの第一回とのことで、料理人さんの追跡者にして一部では超有名な、攻略組トッププレイヤーのツギトシさんに御越しいただきました。
「…よろしくお願いします。」
追加情報としてこのツギトシさんは、現実世界では、我らが八嶋医療機器開発の出資者にして重役さんだったりしますが、プレイヤーで知っている人はごくわずかの為、そのまま内緒にしています。
そして、記念すべき第一回のメニュー(表Version)はこちら…
・苺を練り込んだクリームを使ったクレープミルフィーユのケーキ
・【農協】ご謹製のジャガイモを使った、皮付きフライドポテト
・巨嘴鶏の腿肉を贅沢に大きく切った唐揚げ
・暴突丑と猪豚の合挽肉で使った手ごねハンバーグ
以上の4品です。
あくまでもユウタロウ少年が手作りする範囲でのメニューとなっており、料理人さんはこれに追加で複数の品を作成していただく予定となっています。
さて、早速ですが調理場の方を見てみましょう。ユウタロウ君が肌理の細かい小麦粉と少々の片栗粉を篩にかけています。もう、この【フードコート】ではおなじみの景色となっています、製菓調理時のお約束のエアレーションですね。
次はたっぷり空気を含んだ小麦粉に、卵・砂糖・バター・牛乳などを混ぜてダマが残らないように丁寧に混ぜてクレープ生地にしていきます。
不器用ながらも一生懸命にボウルを混ぜていく姿に、様子を見ていた【フードコート】の給仕のお姉さま方から黄色い歓声があがっております…非常に姦しいですね。
さて、弱火で熱したフライパンに生地を流し薄く延していく訳だが。まぁ、始めっから上手くいく訳もなく、最初の3枚は生地が足りなかったり多すぎたりと均等に延す事がかなわず、次の4枚・5枚はひっくり返す際に破いたり落としたりと、生地を無駄にしてしまった。
だが、6枚目からは厚さはマチマチだが、一応クレープの体をした生地を焼き上げることに成功し、そこから合計10枚の生地を焼き上げる頃には、料理人も吃驚するような綺麗なクレープを焼き上げた。若いって…モノを覚えるのも、感覚を覚えるのも早いなぁ。
「いや、その後ろでクレープを焼いている兄さんにも、スポットを当ててあげてくださいよ。」
4カメが追っているし、解説が料理人さんのスピードに付いていけないから却下します。
だって、あいつクレープ生地を焼きながら、チョコバナナやイチゴやクリームのクレープを作って喰ってるんだもん。うらやm…んんっ…余裕をぶっこいて、けしからん事をしているので実況してやんない。
「…お子様かよ(笑)」
次はイチゴのクリームだが、先に生クリームを泡立てる前に、イチゴを目の粗い裏ごしで潰すようです。少しイチゴの果肉が残ったくらいが、イチゴクリームって感じがするって事でしょう。
生クリームは角が立つ一歩前くらいの固さにして、潰したイチゴを混ぜ込むのですが、この生クリームの泡立てが、またお姉さま方の琴線に触れたみたいです。
料理人さん曰く、泡立ては大きめのボウルとホイッパーを使うと作業が早くなるとの事で。ユウタロウ少年が料理人さんを真似て、体に不釣り合いなホイッパーを使う姿に黄色い声援がまたもや飛び交います…クソ喧しい!!
「それ、ぶっちゃけ八つ当たりですよね?」
さらに、跳ねたクリームがユウタロウ少年の鼻の頭に付いたりなんかして、会場内のお姉さま方のヒートアップが半端ない。これか?これが萌えってやつなのか?まったく理解できないぞ。
「いや、あんたの娘が同じ事をやってる処を想像してみなよ…」
……(妄想注意)……
ヤバい、有りだ。かわいい娘の鼻にクリーム。私の為に一生懸命ケーキを作るその姿…最っ高だなぁコンチクショウ!!
そうだ! これが!! これこそが萌えなのだ!!!
「(ヤベ…変な扉を開けちまったかも…)ってか、話を戻しますよ。」
そうであった…話を戻そうではないか。
さて、生クリームの泡立てを終わらせたユウタロウ少年だが、次はそのクリームに潰したイチゴを果汁ごと混ぜ込み、クレープ生地の上に薄く塗って、クレープを重ねてと交互に層を作っていく。
その数は9層、最期のクレープ生地を上に重ねて、ミルクレープケーキはほぼ完成。崩れないように箱に納め冷蔵庫にしまって冷やしてクリームを引き締めて、最後のトッピングはお誕生日当日に行うことになるようです。
「だから、もう少し兄さんも見てあげなよ。」
知るか!!いつの間にか同じ型のミルクレープケーキを10ホールも拵えた挙句、余ったクレープ生地で、アイスやクリームを包み込み、ジャムやチョコレートでトッピング、しかもフルーツを豪勢に盛り込んだクレープを作って、みんなに配っている料理人さんなんか知らん!!
なんで、あんな美味そうなものが私の所に来ないんだ!!
「そりゃ、隠れて視ているからねぇ…」
くそっ!!次は仮設調理場の前に解説席を作ってやる。最高権力者の実力ってやつを見せてやるぜぃ。
「(……こんな処に、我儘な見た目はオッサン中身はお子様がいます。助けて運営さん。)」
「気を取直して。次の料理は…ハンバーグのようですね。大量の挽肉を冷蔵庫から取り出しました。」
まぁまて、其処からの説明は私がしよう。あの大量の挽肉は、先日のうちに料理人さんが一生懸命かつ一心不乱に包丁で叩いて、叩いて、叩きまくったミンチだ。
「叩いてって…牛と豚を1頭ずつですよね?」
あぁ、そうだ。と言っても、丁寧に掃除をした赤身の部分が主だからソコまでの量ではないが、それでも人ひとりで熟す量としてはバカみたいな量ではあるな。
「兄さん…あんた、バカだよ。果てしなく男らしい、バカだよ。」
そんなことは、どうでもいい。
「…っをい。」
ユウタロウ少年が作るハンバーグは、少年と彼女の二人分だけなのだから、ソコまで挽肉作りに苦労する必要はないのだ。しかし、料理人さんはそれを知っていて敢えて挽肉作成したという事は、大量に作って私の口にも入るって考えでいいんだよな?
さて、視点をユウタロウ少年に戻そう。事前にナナセさんが作ってくれたパンを乾燥させて砕いたパン粉を、少し大きめのボウルに入れ牛乳を注ぎ、パン粉にたっぷりと吸収させる。そこに先ほどの挽肉を豚が3、牛が7の割合で突っ込み丁寧に捏ねていく。途中、塩と胡椒で味を整えたらさらに粘り気が出てくるまで一心不乱に挽肉を捏ねていく。
粘り気が出たら、ハンバーグを捏ねる作業は終了だな。あとは、ラップをして冷蔵庫にしまっておけば、豚と牛の油脂が混ざり合うってもんだ。いい仕事をしたな、少年。
「だからっ!!もう少し兄さんにも焦点を当ててって、言っているじゃないか!!」
しつこいな、だって料理人さんの作業は早すぎて眼で追うのも大変なんだって言っているだろうが!!
あんな大量のミンチをいっぺんに捏ねくりまわして、挙句にはボウルで4つに分けそれぞれのミンチをハンバーグに形成するにあたって。ベーコンを巻いたり、パンで包んでみたり、チーズを包んでみたり、小さく丸にしながら油で揚げちゃったのなんて見てないんだからな。
あんなもん、間違いなく美味いに決まっているだろう。それを明日までお預けにされる位なら、見なかったことにして、記憶の片隅にしまってそっと蓋をしておくわ!!
「(我慢しているんだかしていないんだか…やっぱりこの人おかしいわ。)」
最後だ最後。料理人さんが取り出したのは腿肉だな…巨嘴鶏のだが。これをユウタロウ少年が少女の口の大きさに見合うような大きさに切って、ボウルに入れたら塩・胡椒・レモン汁や酒を入れて、これも一生懸命に揉み込んで味を染み込ませやすくする。
ここまでで本日の作業が終了だ。
弟君が口を挟む前に、料理人さんが何やっていたかというと。胸肉は酒蒸しをして、ほかの部位は一口大に切り分け竹串に刺していた。胸肉は棒棒鶏かな?串を刺したのは焼き鳥って事で良いだろう。
ちまちまと作業をしているように見えるが、ユウタロウ少年が鶏肉を切り終わる頃には、調理場の清掃まで完璧に終わらせていたりするんだからたいしたもんだな。
此処までで第一回の番組、前半戦が終了します。
「はい、カットォォ!!…お疲れ様でした。」
『いやぁ、疲れたわぃ。少年、お疲れ様。』
「はい、ありがとうございました!!」




