スイーツバイキングという名の 戦場
只今ゲーム時間内で11時30分、第二回青空食堂スイーツバイキング開店まであと30分。今回は元国王様の計らいで運営の方々がお客様の整理のために、【フードコート】側と【始まりの街】側とで列の整理に手伝いに来ていただいた・・・っていうか来させた。
前回の反省点を鑑み、今回は60分一本勝b・・・60分入れ替え制で一回の入場は150人・3部制(最大450人)である事と簡単なルールをネット掲示板・【冒険者ギルド】・【神殿】等で事前に告知し、このルールに逸脱する行為をした人は強制退場と付け加えておく。
当日は運営が設置した集合場所に一度集合し、150人のグループに分け順番に【フードコート】に案内する事になっている。これは、【フードコート】前で集合→入場した人の食いっぷりを見て、待っている人たちが暴走するの様な危険がないようにする他、割り込み等の不正を事前に防ぐ事も考えての措置である。他にも整理券って話もあったが、徹夜組や転売等の不正も考えて、此処はゲームよろしく集合場所は当日の10時まで極秘とし、早い者順にグループを形成するようにしてみた。
開店15分前、最後のチェックをしている私の脇で運営の方々を取り仕切る元国王様に連絡が入る。集まったお客様は満員御礼の450人、只今第一陣の150名が集合場所を出発して此方に向かっているとの事だった。
テーブルには目玉商品のバケツプリンを中心に、色とりどりのスイーツの数々。卵を使ったスイーツをメインに、クリームやチーズを使ったスイーツも多々用意している。最近は現実世界で世界のスイーツを取り扱った本を読み、そのレパートリーを増やしている。その為、和・洋・中どころか、もう国籍に拘らず作れるものを片っ端から用意してみた。
ドリンクも、果実ジュースだけで無く、緑茶・紅茶・烏龍茶の他、珈琲やチャイもOKだ。
運営の人を先頭に、列は一糸乱れぬ四列縦隊、綺麗に足並みを揃え。獲物を狙う飢えた獣の様な眼光が鋭く光るその光景は『戦場へ向かう突撃隊の行進』の如く。狙うはテーブルの上のスイーツ達、私は今からあのお客様達に挨拶に行かなければならないのに、足が竦む・膝が笑っている・・・これが武者震いか・・・ってアホか!!
まぁ、その気迫や良し。思う存分私達の力作を味わって戴こうじゃぁないか・・・・・・足りっかな?
結果・・・足りませんでした(泣)
いや、2ラウンド目でスイーツのストックの底が見えてしまったので、慌てて追加を作りましたよ100倍速で。
結局追加分も含めると、スイーツを1200人分作った事になりましたが、ほぼ完食されました。なんだよ、一人平均2.5人前以上って、甘いものに飢えた女性はバケモノか・・・特に、王国の紋章の着いた鎧を着た女性達は軽く4人前は喰べてたぞ。
材料費や人件費等を考えるとぶっちゃけ大赤字なのだが、このイベントは運営がプレイヤーやNPC達からの依頼や会社の宣伝を兼ねてクラン【農協】へ出した依頼なので其処ら辺は関係ないようだ。私としても材料費を気にすることなく思う存分スイーツを作ることができるので願ったり叶ったりだ。スイーツ作成を手伝っていただいたり、給仕を手伝っていただいたプレイヤーの方々も大分疲れた顔をしていたが、〈スキル〉のレベルアップや確りと給金を払うことでお返しは出来たと思う、本当お疲れ様でした。
因みに、この騒動のあと、運営の医療担当者が発表したダイエット本『食べ放題でも気にしない・バーチャルゲームでダイエット』が一世を風靡した。その本には、ゲームの世界内のスイーツバイキングで飽きるまで甘いものを食べる事により、現実世界では甘いものを控えれば、身体に無理なくダイエットが可能だとのたまった本で、スイーツ大好きな女性中心に爆発的に売れたらしい。
以降、第三回・第四回と回を重ねるごとに混迷を極めていくスイーツバイキングは、最終的は私たちの手を離れることになり。私はスイーツのアドバイザーという事になり、〈製菓〉と〈給仕〉スキルが150lv以上の〈雇われ妖精〉達を大量導入しスイーツバイキングを運営する事になっていった。
この〈製菓〉のスキルは、運営が〈料理〉スキルの派生として生み出した、NPC専用の特化スキルである。スイーツバイキングの為だけに、特化スキルを作るなんて、運営は暇なのか?
個人的に、運営の方向性が混迷を極めていると思われる今日この頃だ。
お待たせいたしました。スイーツバイキングの終了です。




