切ってみよう
次の日、俺は草原をうろついている。なんの事はない、歩けば見つかる食材が。季節感が全くないが、大根・人参・馬鈴薯などの根菜が主だ、これは〈植物知識〉と〈食材知識〉の恩恵だと思う。なぜなら、その〈スキル〉のレベルがポンポンと上がったからだ。
他にも鬱金や甘草、横文字の植物も有ったが、興味がないので今回はパス。畑とかではなく、自生しているだけなので、纏まって生えていないのが辛いが、時間をかけ注意深く周りを見て歩けば色々と見つけられる。
そういえば、この街の住人は何処から食材を見つけて来るのだろうか?
ふと、そんな事を考えたが、ゲームの中の話だし、細かい事は気にしない方が良いな。あっ、胡椒の蔓を見つけた。
大分、食材を確保したので、街へ戻ってきたのだが…どこで調理をすれば良いのだろうか。店で塩を買ってみたは良いが、そこに思い至り散々悩んだが、取り敢えず近くの飯屋に飛び込んでみた。恰幅の良い女将らしい人に事情を話したところ、渋々ではあるが、調理場を貸してくれる事になった。
まずは、手を洗おう。次に調理器具を洗う、一応作業台や流しは貸してくれることになったが(有料で)、調理器具は貸してくれないので、準備をする。で、次に用意したのが野菜。今回は火を使わずに野菜を切る練習をする為、取り出したのは、大根・人参・キャベツの3種類。
キャベツは水洗いした後、横から真っ二つに切り千切りにする。事故にあって右手を無くし今まで包丁を持てなかった為、大分不安が有ったが、体は覚えていてくれたみたいだ。最初は流石に怖々とバツンバツンと包丁を落としていたが、キャベツ一玉を切り終える頃には、軽快な音と伴に正に線の様なキヤベツの千切りが出来上がっていく。
隣にいたこの食堂の料理人と女将さんが口をアングリと開けながら此方を見ている事には気が付かないフリをする。ってか、包丁を使えるのが嬉しすぎて、包丁を使うのが楽しくて、周りに気を向けるのなんてもったいない。いまこの空間には、食材と其れを切る俺が居る。ただそれだけだ、其れだけで良い。
次は大根だ。頭の葉を落とし、包丁の刃渡りより少し短い程度の長さに切り落とす。余り大きい大根ではないので、二つ分しかできなかったが、これを、円周部に沿うように丸く丸く剥いていく。
簡単にいえば桂剥きだ。これも一つ目は、処々厚さが均等にならず、芯がデコボコになって大分ブサイクな桂剥きになってしまったが。二本目は綺麗に、かつ最後まで途切れることなく剥くことができた。
勿論これも千切りにし、刺身のツマのようにする。
最後は人参だが、これも桂剥きにする。大根より身が硬いため、少しでも気を抜けばアッと言う間に切れてしまうため、薄く薄く剥いていく。これは直径2センチ位の芯を残し桂剥きを終わらせる。
桂剥きの分は千切りにし、キャベツと大根の千切りに混ぜ込む。最後に余った人参の芯は、円柱の柱の部分に切込を入れ、上から下に半円を描くように剥いていく。そんな感じに向いていくと段々小さくなる為、剥き上がったモノを大きい方から順に、少しずらしながら重ねていくと、花のような剥き物が出来上がる。
其処で一息付き顔を上げた処、覗き込む人・人・人。其処畏で、スゲェスゲェと感嘆の声が上がっているみたいだが…いや、見せモンじゃ無いからな?。
でだ、千切りした野菜は、女将さんが買い取ってくれる事になったので、サービスでさらにキャベツを二玉ほど千切りにしてきた。しかも、機会があればまた(材料を持ち込みで)来て欲しいとのオファーも頂いたので、即了承の返事をして店を出たのだった。
因みに、今回の代金として1000Gを頂いたが、なんと〈料理〉の〈スキル〉が10も上がってしまった。
いいのか?
現在の〈スキル〉レベル状況
〈短剣:Lv2〉〈回避:Lv1〉〈食材知識:Lv3〉〈植物知識:Lv3〉〈料理:Lv10〉