料理人 密談する
少し軽目な内容となっています。
【フードコート】に到着した私を待ち受けていたのは、何故か意気消沈した女将さんやご主人・【フードコート】の従業員さん達だった。なにやらここ最近になって、タチの悪いお客が増えているとの事で、常連のお客《NPC》が怖がって来なくなってしまったとか。クランの面子や元国王様達が居る時なら、そっちで処理できるのだが、不在の時に来店したプレイヤー達は、結構な無理難題を吹っかけて来るみたいで、非常に迷惑をかけられている様だ。
まったく・・・食事ってのは、例えその瞬間だけでも伴にテーブルを囲んだ・同じ空間で食事をする人達との幸せな空気を共有できる素敵な時間じゃぁなくちゃいけないってのに、そのプレイヤー達は・・・いっそ〆るか?
まぁ、そこら辺も運営と話合わなくてはいけない処だな。いっそ、シロ達を門番の代わりに放し飼いにしておこうか?元が良いのか、教育の賜物かは判らないが、存外に頭が良いので、悪意の有る・無しで客の見分けを付けてくれるかもしれないしな。・・・実際にやってみた。
(注 オオガキさんはこの対象には入らない模様です。
「コケェェェェェェェェェェッ!!」
効果は抜群だった様だ。先程も女将さんの話せでは昨日も来たクレーマー的なプレイヤーを、シロが一睨みで石にして死に戻りさせた所だ。しかし、常連の気の良いNPCのお爺さんには大きなトサカを突き出し、撫でて貰ったりもしている。
クロベェもハクもシロと同じように、常連のNPCやプレイヤーのお客を中心に、心配して様子を見に来てくださった【冒険者ギルド】の職員さんや神官さん達、食事に来たプレイヤー達には愛想を振りまくが、それ以外の悪意が見え隠れするプレイヤーには、一撃必殺で死に戻りさせている様だ。全く頭の良いやつ等だな、後でご褒美に美味い飯でも食わせてやろうじゃないか。
その日の夕方頃に元国王様が【フードコート】を訪ねてくる頃には、死に戻りの数はゆうに五十を軽く超えていた。中には、完全武装で門番に挑む可笑しなグループもいたりする。最前線のレイドボスクラスが内二匹いるのに、何を勘違いしているのか・・・。その戦場にているすぐ傍を、少し酒に酔ったお客が街へと帰っていく光景は、多少なりとも溜飲が下がる気持ちにさせてくれる。
まぁ、いいでしょう。外の光景などお構いなしに晩酌をしている元国王様の対面に座り、話を切り出す。その際、つまみを一品持って行ってあげることを忘れない。今日は、ハク達のお陰で大変気持ちが良いので、奮発して生の才巻海老に片栗粉を確り塗し麺棒で叩いて薄く大きく伸ばして揚げた海老煎餅だ。スナック菓子とは違い、100%海老の身で出来ている為、味も風味も海老そのもの。揚げたてに塩を振って食べるのが通ってもんだ。
そんな海老煎餅を元国王様と摘みながら話した内容といえば、殆どが運営のメールの内容に相当する内容で、私的に詳細は必要ないのだが。一つ気になったのが、相対する番組出演者の中に、(自称)料理上手や(自称)料理研究家が居り、私に勝負を吹っ掛けてくるんじゃないかって所だ。普段は料理勝負など、下らないと思い受けないようにしているのだが、今回はそうは言っていられない状況なのは私も判るので、もしそう言った状況になったとしたら、完膚無きまでに打ち負かしてあげようじゃないですか。
しかし、私が料理勝負に対し是の意思を伝えたら、元国王様が真っ黒な笑みを浮かべる。どうせ完膚無きまでに叩き潰すなら、イーブンの対戦ではなく、大いにハンディキャップを与えてあげた挙句にブッチ切りで勝利する方が面白いだろうと。そう、私は総ての〈スキル〉を駆使して、相手の五十倍量の料理を作りながらも、味でも見た目でも圧倒して勝たねばならぬようだ。
それなら、多少なりとも相手を知らなければならないから、調べてみようかね。




