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【農協】 総力戦最終回

【フードコート】内の照明が全て落ちる、勿論窓にもカーテンを掛け明かりを一切シャットアウトする。私の方で蝋燭に火を灯しておいたお誕生ケーキ(少年の力作)を、給仕のお姉様(何時もとは違うメイド服バージョン)が少年達のテーブルに運ぶ。何故かバイオリンでのBGMが入るのはお約束なのだろう、曲名は〔ハッピーバースディ〕と言い、コアなファンが多い遊佐○森さんの楽曲だが、曲だけを聞いている限り良い感じの曲だ。

ケーキに刺さった蝋燭は10本、少女の年齢に合せた仕様になっており、そのケーキを少女の前に置く。そのタイミングで周囲の客や従業員問わず全員が一斉に歌い始める。そのまんまお約束のアレ(ケークの前で歌うヤツ)である。8割がたオッサンのぶっとい声に少年・少女伴にたじろぐが、まぁ、ご愛嬌で。

歌が終わったら、少女がケーキに灯った火を一息で吹き消して、お誕生会恒例の儀式(?)が歓声の中終了する。


給仕さんがケーキを切ろうとしたところを、少年が待ったをかける。要は自分で切り分けて少女に出したいそうだ。困った顔で私に伺いを立てる給仕さんに、OKを出してユウタロウ少年にケーキを切らせることにする。

ミルフィーユタイプのケーキは、切る際にナイフを下手に動かすとクリームの層が原因で生地がずれて見た目が悪くなってしまうので、長いナイフで上からバッサリと切ることが見た目を綺麗に切り分けるテクニックになる。そこら辺を踏まえたうえで、少年にケーキ用のナイフを渡してやる、さぁ、男を魅せる時だ。

まぁ、言いつけをしっかり守る少年なら、そこらへんは心配無いと思ってはいるがね。以前、同じ様に言ってまんまとケーキを駄目にしたヤツがいたもんでね。


10枚の黄色いクレープ生地に挟まれた9層のピンク色の苺ホイップクリームが、程良く縞模様を作り、見た目も綺麗なミルクレープとなっている。少し砂糖控えめな苺ホイップとクレープ生地で苺の風味を損なわないようにしているが、それでも甘味が足りないなら、天辺に振りかけた粉砂糖を付けながら召し上がっていただければ、丁度良い塩梅になるようにしてある。


さぁ、ユウタロウ少年が少女のために一所懸命こさえた料理を堪能してもらおうじゃないか。

ポテトフライは表面がカリッと中はホクホクに揚がっており、ディップとして用意して置いた、ケチャップ・塩コショウが程良く絡まれば、えも言われぬ充実感を醸し出す。

続いて鶏唐揚げだ、此方も下味がしっかりと付いているため、そのまま食べても溢れる肉汁が下味と絡まり充分に旨いが、更に檸檬・ケチャップ・タルタルソース等と併せると、相乗効果で更に旨くなる。


因みにポテトフライ・唐揚げ伴に〈料理魔法〉の〈保温〉をかけて有るので、揚げたての温度をキープしている。この魔法の凄い所は、〈保温〉と言っておきながら、料理の温度を保っているだけで、それ以上料理に熱が入らないのだ。要は、熱が入りすぎて唐揚げがパサパサになったりポテトフライがカラッカラになったりしないのだ。正直私的にはチート級の魔法だ。

話が逸れたな。


少女のお腹が一杯にならないうちに、本日のメインをお出ししよう。給仕服の七瀬さんがチョット低めのワゴンを押し少年達のテーブルに向かう、ワゴンに乗っているのは、七輪とフライパン・デッシュ(白い皿)が2枚と簡単な調味料と焼いてないハンバーグ。コレを今から目の前で焼いて出してあげようって訳だ。

火の入った七輪の上で、熱くなって行くフライパン。煙が出るくらいフライパンが熱くなったら、バターを落とすのだが、こっからがナナセさんの腕の見せどころになる。

厚めのハンバーグはそのままフライパンに載せるのではなく、先ずフライパンの上で側面を転がすように焼いてから両面を一気に焦げ目を付ける。そして、火を弱くしてから酒を振り入れ蓋をしてジックリと中まで火を通すって訳だ、こうすると、ハンバーグの肉汁がほぼ逃げることなく、中に逗まるって寸法だ。コレ(上手な焼き方)を二つ一度に行うナナセさんの技は素晴らしいと言っておこう。

ジュウジュウと音を立てるフライパンから肉が焼ける良い匂いが漂ってくる。ハンバーグが焼けたら皿に移し供される訳だが、少々お待ちください。フライパンに残った脂に醤油・酒・砂糖で味を整えソースします、このソースをかけて完成です。


しっかりと肉と脂が混じり合った肉厚のハンバーグ、その表面を先に焼くことで肉汁の流出を防ぎ、酒を振り入れ蒸し焼きにする事でしっかりと中まで火を通し、更にそれでも溢れた肉汁や油で作ったソースをかける事で完成した究極にして至高の一品。しかも目の前で出来たソレを食べるなんて、現実世界でもそうそう味わうことが出来ない経験だ。ナナセさんの一挙手一投足を見逃すことなく凝視していた少年少女の目の前に、今焼きあがったばかりのハンバーグが供された。

刺すフォークに何の抵抗もなく、切りつけたナイフの後から溢れ出る肉汁。一口噛み締めるたびにソースと肉汁そして肉の旨みが重なり合い、ハンバーグとしてこれ以上ない至福の局地へと導いていく味が精神を支配する。しかもこのハンバーグ(に限らずメインの料理)は目の前の少年が、自分の為だけ(・・・・・・)に命を掛けて準備したとなれば、その旨さも更にランクアップするってもんだ。


「ふえぇぇぇぇ・・・、美味しいよぉぉ・・・ユウタロウ・・・美味しいよぉぉ・・・」


もう、美味しいんだか、嬉しいんだかがごちゃ混ぜになり、感極まって泣き出してしまった少女を一生懸命慰めるユウタロウ少年。微笑ましい一面だが、そこらへんのフォローはお姉様方に任せておけば良いだろう。私としては折角の料理が冷めてしまってはもったいないので、〈保温〉の料理魔法をかけておいてやることにした。



少女が泣き止み、料理も平らげ、少年お手製のプレゼントも渡してお誕生会も終了となった。【フードコート】前で、本日のお別れの挨拶をする少年と少女だが、さり際に少女が少年の頬にキスをしていったのを全員で微笑ましく観ていたが、冷やかすのは無粋という事で、スルーすることがお約束ってもんだ。








さぁ、テーブルを片付けたら、協力者全員に約束通り料理を振舞おうじゃないか。

後日、ユウタロウ少年と少女が二人揃ってクランに入団してきたのは云う迄もない。

結構時間が掛かってしまった事を、待ってくだすった方にお詫びします。


かなりダイジェスト的な仕上がりですが、簡単に言ってしまえば、私にスウィートなお誕生会の描写なんて出来ないって事です。

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