【農協】 総力戦その3
「ブモォォォォォォォ!!」
大きく吠えて、ユウタロウ少年に突っ込んでいく暴突丑。その突撃を受け止めるため、ユウタロウ少年は構えていた大剣を地面に刺し、背中の大盾を両手に持ち構える。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!」
案の定、ポーンと軽快な音を上げて遠いお空のお星さm・・・いや、跳ね飛ばされた少年。突撃のダメージは軽微なれど、体重差により跳ね飛ばされてしまった様で、着地に失敗し派手に転がり実に満身創痍だ。クランの面子達が私に対しブーイングを雨霰のように飛ばしてくるが、それより先に回復させてやれよ。
まぁ、暴突丑の方も空気を読んでかどうだかは知らないが、次の突撃に向けてその場で力を貯めているみたいだ。ユウタロウ少年に街売の回復薬をかけてやり、一声かけてみる。
『少年、暴突丑は少年が逆立ちしても叶う相手じゃあ無さそうだ。こいつの召喚は私の責任だから、私が力を貸してやろ・・・(グバァァァァッ!!)・・・はい?』
何の前触れもなく暴突丑が火達磨になっってしまった。いや、先ほどの変な音は、私の頭上から聞こえた音だ。
間違いない、犯人は私の頭の上にいる。バッチャンの名にかけて!!真実はいつも一つ!!なぜなら、頭の上にいるハクの口から煙が漏れているからだ・・・コイツ、私が合図を出す前に火ぃ吹きやがった。
「何をやっているのユウタロウっ!!今がチャンスよっ!!」
ほぼ全員が呆気にとられているこの場にあって、凛とした声が響く。気を取り直したユウタロウ少年が、手に持つ盾を大剣に持ち替え火達磨になり転げまわる暴突丑に突っ込む。
「ヤァァァァァァァァ!!」
気合一閃、ユウタロウ少年の大剣が、暴突丑の頭を眉間から叩き割った。ドサリと音をたてて崩れ落ちる暴突丑と歓声を上げる観客を背に、ユウタロウ少年が声の主の方に顔を向けると・・・其処には、仁王立ちでユウタロウ少年を睨みつける、髪の毛を二つ結びにして軽鎧で大きなハンマーを背負った少女が居た。
助走を付けた飛び蹴りから始まり、一通りの折檻を行ってなお興奮冷めやらぬ少女を少年から引っペがし、一旦落ち着かせる為に【フードコート】に招き入れる事にした。ナナセさん特製のショートケーキを目の前にし、今の現状を把握した少女は、先ほどとは別人かと思われるかの如く借りてきた猫のようにおとなしくなった。まぁ、状況から察しなくても、この少女がユウタロウ少年の幼馴染の少女であるのは間違いないだろう。
いい年したオッサン達が、少女を囲んで話を聴く状況は傍目にとっても危ないので、ナナセさんを中心とした【フードコート】の女性陣にお願いすることにして。私は先程の暴突丑を血抜き・解体をする為に外に出ることにした。これでユウタロウ少年が調理をするにあたって、必要な食材が一通り揃った事になる。
さて、少女の話しに戻ることにしよう。どうやら少女は自分の誕生日が近づいているにも係わらず、少年との会話やメールが段々少なくなり、一緒に冒険に出ることも出来無くなってしまった為、不安になり、誕生日当日に来てくれと言われた【フードコート】に来てしまったとの事だ。
「だって・・・ユウタロウが構ってくれなかったから寂しかったんだもん・・・」
と、頬を赤く染めボソッと呟き恥じらうその姿に、おばs・・・ゲフンゲフン、お姉さま方が大興奮だったようだ。くそっ甘酸っぱいなぁこん畜生・・・私にゃぁこんな青春無かったからなぁ。
女性陣は、ユウタロウ少年が少女の誕生日に何を用意しているのかをコッソリ教え、それでも知らないフリで喜んであげるのがイイ女のお作法だと教えやり、無理矢理納得させて少女を街に送ってやるのだった。まぁ、本人が納得できたのなら問題は無いが、この話を私に話してくるということは、少なくとも料理のレベルを少女が期待するレベルを上回れ、しかも私達にも食べさせろ・・・という無言の圧力って事でファイナルアンサーですかね?




