【農協】 総力戦その1
頂いたスキル宝珠で獲得した〈スキル〉は
①〈料理魔法〉・・・そのまんま料理に関係する魔法で、闇魔法で行っていた醗酵や熟成を含め、冷凍・解凍・乾燥等の技術を要するモノも思ったように調整してくれるっていう超便利っぽい魔法だ。要はメジャーな魔法〈スキル〉から、調理をするためだけに必要な魔法を色々とチョイスした料理特化の万能属性の魔法ということになる。良いのかそれ?
②〈召喚魔法〉・・・読んで字のごとく、ナニかを召喚する魔法。条件は、魔法使用者の知識にあるこの世界のモノ(生物・無生物の区別なし)のみ。召喚できる量は魔力によりけるが、あれだ、新鮮な食材の召喚が可能みたいだ。これも良いのか?
現状では、この二つしか修得する事しか出来なかったので、最後の一つは後の楽しみとしておこうじゃないか。
さて、長ネギをタップリ使った熱々の鉄砲鍋で元国王を撃退し、溜飲を下げた数日後。いつものように【フードコート】で腕を振るう私の元に、かわいい小さなお客様が来た。
「すみません、ココに料理人さんがいるって聞いて来たんですけど。」
見た目小学生位の男の子のプレイヤーだった。身体に不釣合いな位な重そうな鎧を着込み、体よりも大きい剣と盾を背負っている。そのアンバランスさに思わず笑みがこぼれてしまう。
このゲームは一応全年年齢対象だが、使用するヘッドギアはそれなりに高価なため、そこそこの経済力が無いと購入する事が出来ないと聞いたことが有るんだが、この少年の家はソコソコ裕福なのだろうと推測される。
『はいよっ、いらっしゃい。何の用だい。』
手を吹きながら調理場から出て、カウンター付近に佇む少年の前に赴く。
「は・・・はじめまして、僕はユウタロウと言います。き・・・今日は料理人さんにお願いがあって来ました。」
なにやら神妙な顔で、私にお願いと来たもんだ。まぁ、じっくり話を聞こうじゃないか。しかし、此処はダメだ、あちらこちらで出歯亀共が聞き耳を立てている。離れにある工房の休憩所に席を移そうか。
場所を移し、落ち着いたところで少年の話を来てみる。相談内容は、もうすぐ誕生日を迎える幼馴染の女の子を食事に誘いたいとの事。そんなもん現実世界でやりゃ良いだろうと、独身貴族の私は思いましたよ、あぁ思いましたともさ。
しかし、その幼馴染は昨年遠方に引っ越してしまい、現実では電話・メールでやり取りできても会うことは出来ない。でも、つい先日このゲームを始めたとの事で一緒に冒険をすることになった。一応、誕生日に間に合うようにプレゼントを贈ったが、折角だからこちらの世界でもお祝いをしてあげたいとの事で、食事に誘おうと思っているが、なにかいい案は無いかと兄のアドバイスのもと私を訪ねて来たみたいだ。
因みにユウタロウくんの兄とは、コウタロウくんの様だ。最近、王都の先のエリアが開放されたとの事で攻略組として最前線に赴いており現在コチラには来ていないのだ。
まぁ、【フードコート】食事をするのもいいだろうが、其れだけでは、少年の幼馴染の少女
への気持ちが伝わらないかもしれない。そこで少年も何か無いかと私の元を訪ねて来たのだから、その思いに報いたいと思う。折角ゲームの世界での事なのだから、この世界で出来るやり方でお祝いをさせてあげたいと思う。
「「少年、話は聞かせてもらったぞぉぉぉぉぉ!!」」
突然、ババーンっと扉を開けて大声で入ってきたのは、今さっき仕事を終わらせてきたであろうアカツキさんと暇を持て余らしていたササキさんだった。その後ろにはニマニマしている生産職のクランメンバー達、こいつ等さっきから話を盗み聞きしておったな。ほれみろ、少年が口を開けて呆然としておるだろうが、後でお仕置き決定だ。
それはさて置き、気を取り戻した少年を中心に、この休憩所で行われた会議(という名のひやかし)の内容は・・・
①折角なので、少年が食材を揃える。(手に入らないものは農場で採取する。)
②料理を作るのも少年が行う。(勿論、素人に無理な所は手伝うことになるが。)
③ついでにプレゼントも自分で作っちゃおうぜ!!(以下同文)
となった。
こうして、クラン【農協】のメンバーによる、ユウタロウ少年の幼馴染お誕生日大作戦プロデュースが此処に幕を開けたのだった。
少し短くなりましたが続編を書きました。
今回は短くしてシリーズ物としています。
え~、途中からの話の流れで大体想像が付くかもしれませんが、この回のBGMは、中島み○き様の地上の○でお願いします。




