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料理人 やらかされた(笑)

ある日、運営よりメールが入った。内容は・・・



[運営より重要なお知らせ


グンジ様、貴殿の所持スキル〈料理〉が最高レベル(レベル255)まで上昇し、目出度くカウントストップいたしました。《無限世界の住人》が運営を開始して一年半、初めて一つの〈スキル〉を最高位まで高めた貴殿に対し、運営より記念品及び貴殿専用の〈スキル〉を用意させていただきました。

なお、記念品・専用〈スキル〉の受け取りは、最寄りの【神殿】にお越し下さいます様お願いいたします。

これからも良い《無限世界の住人》ライフをお楽しみください。


《無限世界の住人》運営本部一同]



・・・最近〈料理〉のレベルが上がらないと思ったら、最高レベルだったようだ。私の感覚だともう少し上がるかなと思っていたんだが・・・残念だ。

しかし、ここまで〈スキル〉のレベルを上げたプレイヤーは、私が初めてだと言われても、ガチで冒険していたワケではないので複雑な気分だ。だって、命懸けの冒険なんてしないで、基本街の中で料理を作っていただけなんだからなぁ。


まぁ、記念品云々は置いておいても・・・新しい、しかも私専用〈スキル〉を頂けるのなら貰おうかね。一応〈スキル〉の空きスロットには二つくらいなら余裕があるからね。さて、どんな〈スキル〉が待っているのかねぇ。



ってな事で、やってきました【神殿】です。一応礼儀として、【神殿】の前に立っている案内係の方に名前を告げたところ、先導されてたどり着いたのは・・・豪奢な作りの大聖堂の様な所でした。天井付近のステンドグラスからは七色の光が、この世界(無限世界の住人)の神様であろう女神の像に降り注ぎ、実に神秘的な雰囲気を醸し出している。

その女神像の前、祭壇に一人の人物が佇んでいる、ステンドグラスからの光で遠方からではシルエットしか見て取れないが、恐らくこの方が【神殿】の最高責任者になるのだろう。案内係に誘導され、その人物に近づいて行くと・・・


「よぅっ!!」


気安く声を掛けられた。

聞き覚えのある声、無礼を承知で顔が見える距離まで近づいてみたら・・・


『・・・なんでアンタがこんな所に。』


元国王さまでした。


要は、国王の地位は息子に譲ったのだが、元々国王は、【神殿】の最高司祭も兼ねており、そちらも息子に譲ってしまうと、息子が慣れない仕事のしすぎで過労死してしまいそうだったので、コチラ(最高司祭)は継続して行うという事になったそうな。いや、ゲームの世界のキャラクターが過労死ってあるんかい。

まぁ、元国王さま曰く。基本【神殿】とは、運営とプレイヤーとの関係を円滑に取計らうために作られたシステムであり、要は運営の小間使いとの事らしい。良いのか?そのようなぶっちゃけた発言は。


って事で、運営の小間使いである【神殿】の最高司祭、元国王様が私に記念品と専用〈スキル〉の授与を行うそうな。


「さて、始めようじゃないか。」


ニヤけた元国王が右手をサッと挙げると、元国王との私の距離が開き――私が大聖堂の中央付近まですっ飛ばされた様だ――次いで楽団もいないのに荘厳な音楽が大聖堂に流れ出す。ステンドグラスから降り注ぐ光は少し弱く、柔らかく降り注ぐようになったが、代わりに雪のような、花のような、白い光の粒子が天井付近から降り注ぐ。恐らく、景色だけを傍から見れば物凄く美しい映像になるんだろうが、事の中心にいるのがむっさいオッサンだ、全く台無しだよ。


「クラン【農協】のリーダーにして、〈料理〉のスキルを極めし者、グンジよ此方に。」


何時になく、威厳のある声で私を呼ぶ元国王。景色に気を遣っていた私は我に返り、呼ばれたその声に導かれ元国王の前へ、そして跪く。


「グンジ殿、貴殿はこの《無限世界の住人》において、前人未到の〈スキル〉を最高レベルまで成長させる偉業を樹立した。この偉業を讃え、記念品の授与を行うものとする。面を上げるが良い。」


ん?記念品のみか?まぁいいか、元国王の顔を見上げると、真剣な表情を浮かべているので、この場は余計な言葉を挟むのは止めておこう。


「さぁ、コレを受け取ってくれ。」


元国王から手渡された薄いが幅広の木箱に入っていたのは、長さにして45cm、根元部分は少し厚みが有るが、先端に向かい薄くなっていく幅広の西洋包丁・・・通称・牛刀と呼ばれる包丁だった。いや、西洋包丁の中にあって万能包丁と云われる牛刀ですが、万能包丁なら切りつけ包丁が有るんですが・・・

不満そうな顔で元国王を見やるが、元国王は・・・


「知っているが、一応取っておけ。後で良い事が有るかもしれんぞ。」


ボソっと、漸く聞こえる位の声で囁いて来たので、有難く頂戴するとする。次に出されたものは、ガラスの様に透き通る位透明な珠が三つ。どれも中央部分に七色に煌く炎が揺らめいており、淡く神秘的な光を発している。


「これはスキル宝珠といって、中に何らかの〈スキル〉が入っており、使用する事により宝珠の〈スキル〉を得ることが出来る物だ。勿論、〈スキル〉のスロットに空きがないと使用できないのだがね。」


ほぅ、こうやって〈スキル〉をくれるって訳か。これなら現状スロットに空きがなくても、空きが出来るまで保管しておけば良いのだから便利だな。


「さて、記念品の授与は終了した。グンジよ、これからも精進し、他プレイヤー達にとって良き先達として、皆を導いてくれることを切に願う。そして、この世界(無限世界の住人)を更に楽しんでほしい。」


しっかしまぁ、普段【フードコート】で見る元国王とはうってかわっての真面目な表情を見ていると、この態とらしい位のギャップの差に笑いが込み上げてしまう。後でコレを肴に一杯引っ掛けてやろうじゃないか。


「これにて、記念品の授与式を終了する。」


元国王がドヤ顔っぽい表情と伴に、終了を宣言する。突然大聖堂を彩る総ての光が消えて暗転する。ほんの一瞬の出来事で、直ぐに式が始まる前程度の光が眼に入ってくる。


目の前には、最高司祭の格好の元国王もいるが、表情は何時も見ている砕けたモノに戻っている。


「まぁ、おめでとさん。そして、色々な意味でお疲れさん。」


謎の発言と伴に私の肩をポンポンと軽く叩き、元国王は大聖堂から出て行ってしまった。残された私は、頭に疑問符を浮かべながらだが、案内係の先導の元、来た道を戻り【神殿】から出る。

何故か【フードコート】への帰り道、ヤケに見たこともないプレイヤーから賞賛や感嘆の声をいただく事が多かった。【フードコート】に戻った後も、【農協】の面子から祝いの言葉をいただく事になったのだが、ヤケに生暖かい笑顔で言われたのが何だか引っかかった。






日を改めて弟に聞いてみたところ、大笑いしながら二本のプロモーションビデオを観せられた。内容は・・・いわずもがな授与式の映像だった。

一本目はほぼ普通の授与式の映像で、此方は、運営側が好意的(・・・)に編集してくれた《無限世界の住人》の宣伝用のプロモーションビデオで、中心人物である私の絵面は今ひとつだが、遠近両方の景色を使い割と良くできた映像となっている。

問題は次の映像で、開式のちょこっと前から、元国王が退場するまでを、ノーカット・編集なし、しかも元国王のコメント付きのヤバイ位残念な映像だった。しかも、この映像は当日の完全生中継で、私以外のプレイヤー全員に配信されていたのだ。だからこその、去り際の元国王の発言であり、プレイヤーの皆からの生暖かい視線&お言葉だった訳だ。









くそ、ちょっと元国王を懲らしめて来ていいですかね?

こんな感じで、全プレイヤー中で初の〈スキル〉カンスト。


運営さんから表彰されてしまいましたが、この小説はマダマダ続く予定です。

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