食いしん坊 万歳
昨日の夕食のメニューは、全員が目の色を変えて作業に向かうくらい熱狂した唐揚げだった。調子をこいて、オーソドックスな唐揚げ・竜田揚げ・ザンギ等揚げ方を変える他、トッピングもレモンだけではなく、黒酢の合わせ調味料やマヨネーズ・自家製ピクルスをふんだんに使ったタルタルソース等と気合を入れてこさえたら・・・泣かれました。
全員に料理が行き渡る様にこさえたんだが、殆どの方々が・・・
「ひとつの種類を腹いっぱい食べたい。でも、全種類試したいの。」
評価してくれるのは大変嬉しいのだが、かなりドン引きなお答えを頂いた次第で、全員にそれなりに唐揚げが行き渡ったんだが、全種類制覇する様な事ができず悔し涙を流す者。又は、少量ながらも唐揚げ・トッピング共々全種類制覇して嬉し泣きする者。果ては、新しいTKGの境地を開拓しむせび泣く者。
と、阿鼻叫喚の地獄絵図さながらに、全員が涙を流しながら熱く語っておりました。次からは、自重しましょう。料理は種類多く出さない事。
さて、本日のお話に戻りましょう。昨日の失敗を鑑み、本日のお昼は、【始まりの街】食堂のスペシャリティの親子丼に致します。普段は、巨嘴鶏を使いますが、アレはあくまで食堂限定品って事で。申し訳ないが、街で買ってきた普通の鶏肉(ちょっと高級品)です。しかし、それで味が墜ちたとか言われるのは癪なので、足りない肉の旨みは技量と出汁で補います。
鶏肉には【闇魔法】で熟成を促し、一度お湯を通したら醤油・酒・味醂・砂糖で薄く下味を付ける。
鰹・昆布の出汁に、事前に【闇魔法】で熟成させた乾物の貝柱を加え、更に味に深みを与える。但し、この際貝柱の量が多いと出汁のバランスが崩れるので、量は控えめに。
作り方は変えないが、肉体労働した後の皆さんは非常にご飯をタップリと召しあがりやがりますので、親子丼鍋は使わずに大きめのプライパンで親子丼を作る。
ラーメン丼位の器にご飯をタップリ入れ、フライパンの親子丼のアタマを半分乗っける。多少形は崩れるが、味は変わらない。
プルプルの卵と味の沁みた鶏肉、そしてご飯の醸し出すハーモニーは、食堂で喰べる親子丼に勝るとも劣らない味わいを与えることが出来る。
今回は親子丼の量が多いので、箸休めに漬物を小鉢で提供する。アカツキさんご謹製の、大根・人参・胡瓜・茄子を使った糠漬けだ。サラダでも食べられる野菜だが、漬物として塩味を持つことで、少々甘めの味付けの親子丼で染まった口内をスッキリとしたものにしてくれる。お吸い物も付けるけどね、やっぱり漬物最高!!
やはり皆さんの反応は上々。同じ親子丼でも材料しだいで味が変わってしまうが、今回の親子丼も十二分に美味かったとの声を聞ければ上等。此方も嬉しくなり、ついつい調子に乗ってしまうってもんだ。
再度コウタロウくん達から夕食のメニューを聞かれたが、未だ決めてない旨を伝えると・・・処々から、カレーが良いとの声が上がり、最後には全員でカレーをリクエストする大合唱になってしまった。
其処までお願いされたら、断る訳にいきません。その期待に応えてみましょうじゃぁないか。って事で、了承の旨を伝えたら、昨日同様全員が血相を変えて・・・寧ろ、その双眸に炎を宿し、作業に向かって行ってしまった。
カレー自体は問題なく作れるが、作業に時間が大分かかってしまう為、アカツキさん達にその旨を伝え、即カレーの準備にかかる。
必要なのは、ブイヨン(洋風の出汁)と香辛料各種。野菜はタマネギ・ジャガイモ・ニンジン・そして果物少々。肉は、ブイヨンとの相性が良い牛・・・のスジ。
野菜と香辛料以外は街で揃えるしかないがしょうがない。
ブイヨンは牛の骨を割砕き、臭いを取るために、香味野菜と一緒に鍋で煮込む。その際に灰汁が大量に出るので、しっかりと灰汁を取る。この作業をしないと味の澄んだブイヨンが出来ない。
次は牛スジを下拵え。一度30分位茹でて、ザルに上げる。冷たい水で冷やし、余計なゴミを掃除したら、食べやすい大きさに切り、再度30分位茹でる。で、ザルにあげておく。これは煮こぼしと云う手法で、圧力鍋を使わなくても硬い肉を柔らかくする事が出来る。圧力鍋ほど柔らかくはなりにくいが、繊維が崩れないため割と重宝する。
最後は・・・ってかほぼ牛スジの下拵えと同時に行うが、野菜の下拵えだ。ジャガイモ・ニンジンは皮を剥き、結構大きめに切って半分位火が通るまで炒めておく。タマネギは全てスライスにする。このタマネギは、飴色になるまで炒めて、果物と一緒に野菜の甘みとコクの素になる。
香辛料は、ウコン・クミン・コリアンダー・トウガラシ・タイム等を使い、細かく擂り潰したら、半分は先に炒め用、半分は後から投入用にしておく。
鍋に先ほどの炒め用の香辛料・小麦粉・入れ炒めていく。香辛料の匂いが立ってきたらバターを投入。溶けたバターの油で小麦粉が塊になっていくので、作ったブイヨンを鍋に入れて小麦粉の塊を延ばしていく。この時注意すべきは、延ばした小麦粉がダマにならないように・焦げないようにヘラで根気よく混ぜていくことだ。
その作業を繰り返しこの時点でカレー液が皆さんのお腹を満たす位の量より多くなっていれば上々。飴色タマネギ・擂り卸した果物・炒めた野菜・そして牛スジを加えて弱火でコトコト煮込む。この時点で、カレー液が緩ければ、小麦粉をブイヨンで溶かして投入して、自分好みのドロッとした固さに持っていく。
最後に残った香辛料を追加し、ひと煮立ちさせる。炒めた香辛料とフレッシュな香辛料、ダブルの香りが合わさり、食欲を掻き立てる蠱惑的な香りを醸し出す。味見をして、足りない味を整えれば、一旦完成。
鍋を火から下ろし、【氷魔法】で冷ましたら【闇魔法】で熟成させると、アッと言う間に翌日まで寝かせたカレーが完成する。
はい、今夜も皆さん大熱狂の夕食になりました。野外で喰べるカレーは美味しいね。




