勢いだらけの オッサン共
【海のある街・アル】から【始まりの街】へ帰ってきて二週間。私たちは、まだ期限が残っている〈雇われ妖精〉に畑仕事を託し、山に篭っていた・・・嘘です。夕方には食堂で晩酌したりしていたので、山に通っていました・・・が、正解です。さて、ナニをしていたかと云うと、農場拡張+家屋新築のための木材や石材の調達と、〈スキル〉のレベルアップを兼ねたモンスター討伐。で、ついでに【冒険者ギルド】の採集のクエストをチマチマとこなしていました。
実は・・・この状況には理由があって、食堂のご主人と女将さんに相談をうけた事に始まる。内容は、客が多くなり売上は増えたが、来店する客が多すぎて、今の店舗では捌ききれないとの事。ご主人の〈料理〉のスキルも大概に上がったため、現状今の店舗が満席になったとしても、その倍の人数を独りで裁くことが可能らしい(まぁ、私はその倍はこなせるがね)。
って事で、
『だったら食堂を大きくしよう、それが良い。』(これが私の発言)
でも土地は?
「なら、私たちの農場に併設しちゃいましょうよ、食材もいっぱい有るし。」(オオガキさん談)
食堂を作る材料は?
「ワシらに任せるがいい、山から切り出してくるわい。」(アカツキさん談)
誰が作るんですか?
「なぁに、俺たちに任せなさい。」(ササキさん談)
でも、農場って郊外ですよね?
『・・・其処ら辺は、弟に相談してみます。』
まぁ、弟に相談した結果、大爆笑していたが、運営に相談してみると言ったが、なんと即日返答があった。なんと、【始まりの街】から農場までの道を整備してくれたらその道と農場は【始まりの街】の一部として扱ってくれるため、モンスターが出なくなるらしい。しかも、農場で育った家族はそのままでOK、しかも家族が増えても大丈夫とのお墨付きまでいただいてしまった。
程良く温まってしまったオッサン達の脳みそは、ブレーキの掛からない特急電車のごとく暴走しっぱなしで、逆に相談を持ちかけたご主人と女将さんが冷や汗をかいていた様だ。この食堂移設&建設で一番ハッスルしていたのは、元大工のササキさんだったのは内緒だ。あんた、そんなに家を建てたかったのかい?
因みに以前も行なったが、この世界の植物は、大人の事情でナンボ引っこ抜いても翌日には生えている。なんと、其れは木にも当てはまるみたいで幾らでも手に入れることが出来る。で、他にもササキさんからの指示で家を建てるための材料なんかも揃えたりしていたが、金って何処から出ているんだろうと疑問に思い、そっとアカツキさんに聞いてみたところ・・・
「オゥ、ワシ達が育てた農作物を商人職のプレイヤーに売ったら、エラい金が転がり込んできたぞぃ。何やら、王都の農作物の何倍も良い出来だって話だ。」
そいつは驚いた。ってか、王都の何倍って・・・ここの作物が良いのか、王都の作物が良くないのか・・・出来れば前者が良いなぁ。確かにアカツキさんご謹製の野菜は素晴らしいからな。
そうそう、ササキさんが作った設計図をみせてもらったんだが、新しい食堂はなんと2階建てとなり、2階部分はご主人や女将さんの住居スペースとなり、一階部分が食堂となる。
調理場は、前食堂の3倍。客席に至っては、前食堂の4倍となっている。何故そんなに広いかと云えば、仮設で調理場を二つないし三つ作り、他のプレイヤーに調理場を店舗として提供しようとしているみたいだ。
女将さんやアカツキさん達が、私が食堂で使ってもらった経緯を覚えており、気軽に料理を造る・提供できる場所を一般のプレイヤーにも開放しようって事らしい。パッと見、食堂ってよりフードコートみたいな内装になっている気がしないでもないが、その考えには両手を挙げてでも賛成させていただきたい。
美味い料理を造る人が増えれば、そのぶん美味い料理を食べられる人が増えるって事だ。
しかし、一応食堂と名乗るなら、給仕をする従業員も必要だろう。前食堂では、女将さんが独りで切り盛りしていたが、それだって限界があるだろう。其処ら辺は女将さんにお伺いを立ててみたところ、【神殿】に求人を出したとの事。あぁ〈雇われ妖精〉か・・・と思ったら、なんと【神殿】はNPCの職業斡旋所も行っているらしい。おそるべし《無限世界の住人》。




