ちょっとした出来事
お食事会から一か月が過ぎた。リアルでは、義手・義足を使うリハビリを熟しつつ、料理の本を読む。《無限世界の住人》では食堂で料理をしながらも、農場の運営や簡単な狩りなども行う。そんなサイクルで日々を過ごして来たが、此処に来て《無限世界の住人》で大きな変化が二つあった。
先ず一つが《無限世界の住人》の大幅アップデートだ。これは夜間限定クエストへのクレームに近いものが運営に殺到し、運営が解決策として行ったモノで、ゲーム内の時間の流れがリアル世界の2倍になった事。要はリアルの世界での1日が《無限世界の住人》の中では2日になるというもので、ログインする時間を調節する事により、夜限定のクエストへの挑戦が簡単になった。
まぁ、リアルが忙しい人に優しくなったと言っても過言ではない。ただ、ゲーム時間で毎日同じことをする我々にとっては、かなり肉体的にも精神的にも重労働になってしまった。交代で畑の手入れや動物の世話はできても、どうしてもログインが難しい時間帯が出来てしまう。
このままでは拙いと思い、弟に相談したのだが…
「アップデートの時に案内があったけど、簡単な作業なら【神殿】で雇える〈雇われ妖精〉っていうNPCが代行してくれるって話だけど、見なかった?」
・・・はい、初めて聞きました。案内は殆ど見ておりませんでした。
しかし、それならば、能力次第では畑仕事を任せて遠出ができそうだな。どれ位の働きをするか一度【神殿】に行ってみようではないか。
って事で、やってきました【始まりの街】の【神殿】です。畑仕事の合間を縫って全員で訪れてみましたが、プレイヤーは殆んどいない。そりゃ〈雇われ妖精〉は一般の冒険者には必要無さそうなモンだ。生産職には必要かもしれないが、主な生産職は前線に拠点を構えているのが殆どだ。
そんなこんなでスムーズに〈雇われ妖精〉の事を取り扱っている神官さんに話を伺った処、二ヶ月(現実時間で一ヶ月)毎に料金が発生するが、〈スキル〉は雇い主が選ぶことができ、〈スキル〉レベルについても十レベルごとに値上がりすることを除けば、かなりの仕事をしてくれるみたいだ。〈農作業〉レベル50の〈雇われ妖精〉を二人?程借り受け、畑に赴くことにした。




