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開催 青空食堂

さて、俺が病院へと通うようになり、ひと月が過ぎた。現在、畑はその面積を広げ4町歩程の広さになった。育っている野菜もそれなりの種類になるが、アカツキさんが内2町歩ほど農地を使い一番丹精を込めて育ててものは・・・小麦だった。

なんでも、米は立地的にも水源が近くに無いので水田は無理だろうし、何より美味い米なら現実で喰える(ウチのコメが一番)!!との事と。小麦を使った美味い料理が、イマイチよく判らんので、グンジくん宜しく(旨いもの喰わせろ)!!との事でこのチョイスに至った様だ。勿論、藁等の再利用も考えてもいると、後付けだが最もなお言葉も頂いた。


しかし、小麦なんか季節を跨がなきゃ出来ない程の長い時間を使って成長するものなのに、わずか一ヶ月で身を付け収穫できる程になるなんて、ゲームの世界は凄いな。

だが、この世界には、万能農作業機械(コンバイン)が無いので、風魔法の初級魔法〈鎌鼬〉で稲を刈取り、収穫する。アカツキさん監修、ササキさん作成の千歯扱きで脱穀した後は籾殻を外すため、風魔法で風を送り籾と身を分けていく。最後にコレを石臼で挽くことにより小麦粉が完成する事になる。


アカツキさんの事だから、饂飩じゃ納得はしないだろうし、何より出汁を採るための鰹も無い・・・ってよりも海産物が手近に無い。出汁を取るための鰹節・鯖節・コンブなどが無い為、美味い饂飩の出汁ができないのだ。鶏ガラスープでも良いんだが、ナントカの一つ覚えみたいなので個人的に宜しくない。


って事なので現在、全員に協力してもらい、畑の片隅に石窯を作っている訳だ。まぁ、想像に易いモノだが、イタリア料理の代表とも云われる“ピッツァ”を作ろうって魂胆だ。因みに、この石窯を作り始めた時は、このままこの土地に店を構えても良いかなと思ったりもしたのは内緒だ。


そして、農場で育成中の家族(シロ達)だが、オオガキさんの〈成長促進〉のおかげか、飼料の所為かスクスクと育ち、何時の間にかランクがアップしていた。

シロが巨嘴鶏(きょかくけい)から化石鶏(かせきけい)、通称コカトリスになり幾度となくオオガキさんを死に戻りさせている。因みにコカトリスは、【王都ジパング】の更に先にある岩山に生息するボスモンスターらしい。

クロベェは、体高3mを超す巨大牛になった。因みに乳が絞れるようになった為、乳製品には事欠かなくなってしまった。コイツもかなり先のフィールドに生息する暴突丑(ぼうとつご)と云うボスモンスターの様だが字面が嘘なんじゃないかと思うほど温和な牛だ。

最後のハクだが・・・大きさは然程変らなかったんだが、羽根は生えるわ、角が生えるわ、しまいにゃ火を吐くわでもう大変だった。こればっかりは弟に相談してみたんだが、一応ドラゴンじゃね?との答えしか返って来なかった。なんで(クエスチョンマーク)なのかと聞いたら、現行の《無限世界の住人》の世界にはドラゴンは存在しても、白い色のドラゴンは見た事無いって事と、全て成竜で有り幼竜は存在しないって事だ。

バグかも知れないから、扱いには気を付けてとのお言葉を戴いたが、現在ハクは俺の頭の上でお昼寝中だ。呑気なもんだ


そんな珍しいモンスター(家族達)を、見たいんだか倒したいんだかで、何度か不躾なプレイヤー達が、夜間に無人の農場に入り、悪さをしていた事も有ったが、この農場は“街の外”にある一般のフィールドと同じ為、悉くシロ達に退治されていたりする。そりゃぁ、最前線の攻略組の面々が徒党を組んで勝てるかどうかのボスモンスターが、小悪党に負けるはずがないわな。


ようやく石窯が完成した。勿論、その間にも時間を見つけては、クロベェの乳からチーズやバターを作ったり、トマトからソースを作ったりと事前に準備は万端にしておいた。他にもピッツァの具材になりそうなもので、作れそうな食材はソコソコ準備をしておいた。


今回は、我らの畑での青空食堂を臨時で営業するとの事にし、食堂は休んでいただき、女将さんや旦那さん、贔屓にしてくれている常連さん達、コウタロウくん達にも声を掛けての大試食会にしてみた。


まずは、ピッツァの生地を作っていく。小麦粉に水・塩・砂糖・オリーブオイルがないので溶かしバターで代用し、しっかり捏ねる。これにお馴染みの闇魔法〈腐敗〉をかけ醗酵させたら一段落。

この生地を薄くのばし、上にソースと具材を載せていく。まずは基本通りのトマトソースにチーズをのせ、焼いた後にバジルを散らして出来上がるのが“ピッツァ・マルゲリータ”。これは、トマトソースと溶けたチーズを味わうだけでなく、其れを受け止める生地の味もしっかりと味わうことができる逸品だ。

次に、生地の上にトマトソース・刻んだニンニク・オレガノ・最後に溶かしたバターを軽くかけて焼き上げる。これも基本中の基本で“ピッツァ・マリナーラ”。こっちは如何にもシンプル・イズ・ベストの言葉通り、生地・トマト・ニンニクが噛めば噛むほどダイレクトに口の中で混ざり合うイタリアの伝統的なピッツァ。

他にも、ハーブを使ったソースで作ったジェノベーゼ、トマトソースの代わりにクロベェの乳をタップリ練りこんだホワイトソースのピッツァ等色々作り上げた。

最後に出すのが今回のとっておきになる、鶏の照り焼きとマヨネーズのピザ。これは、食堂の看板メニューである親子丼と同じ、鶏と卵の組み合わせなので味に関して相性が良い為に間違いが無い。

親子丼と云うか丼物全般は、飯と具が絡み合って味の相乗効果が生まれる。それらを食べ慣れているアカツキさんだからこそ、此方の生地と具が絡み合う味の相乗効果を味わっていただきたいが為の一品だ。

最後に・・・これもクロベェの乳から作ったアイスを出して、試食会が終了となる。


アイスを食べて一息付いたのか、ほぼ終始無言でピッツァを平らげていた面々から感嘆の声が上がる。アチコチからの美味かった・旨かったとの言葉に薄らと涙が浮かび上がってしまう。勿論アカツキさんも俺の方を見遣り、親指を立てている処を見ると満足していただけたみたいだ。再度、参加者全員から旨かったとの言葉をいただき、全員で後片付けをし、本日は解散となった。



時間が掛かりましたが、今回書きたかった青空お食事会が完成しました。大した事はないかもしれませんが、今までの投稿よりは大分長い文章を書いてみました。

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