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柵造り 料理作り

その日のうちに土地を1町歩購入した後の我々が過ごした一週間は、アッと言う間に過ぎた様な気がする程の濃厚なモノだった。


現実世界で、朝4時に目を覚まし、朝食を採り身支度を整えたら、5時にゲーム(無限世界の住人)にログイン。一度ギルドに集まり、まず森に向かう。畑を囲う為の柵を作るに当たって、樹を伐る為だ。


元大工であるササキさんの見立てた真っ直ぐな樹を、大きな鋸を二人ひと組で使い伐っていく。その間一名は、周囲の警戒に当たる。木が倒れたらササキさんの出番で、手持ちの鉈で枝を打ち、樹の皮を剥いでいく。そのあとすぐに板に加工するのかと思いきや、一旦作業を中止し木材に魔法を掛ける。

この魔法は〈乾燥〉と言い、風魔法の初期魔法の一つで、木材を乾燥させる為に使うとの事だ。本来なら、数ヶ月から一年位かけて木材を自然乾燥させていくのが常道なのだが、今回は家を建てるわけではなく、畑を囲う柵を造る為なので、スピード重視で行うとの事だ。


そんな事より、ササキさんが平気な顔して魔法を使う事の方に吃驚したぞ。普通、其処は…


「べらんめぇ!、こちとら江戸っ子よ、魔法?はっ!!チャンチャラ可笑しいわい!!でぇく(大工)の使う木材ってのはなぁ、お天道様の下で天日干しってぇもんが決まりなんでぃ!!」


って考え方なんじゃないの?と思い、休憩の時に聴いてみたら。


「考え方が古いよキミぃ、せっかくゲーム(こんなこと)やってんだから、使えるモノや出来る事をフル活用しないと楽しくないじゃないか。」


笑われましたよ。古いって、俺はササキさんより大分年下の筈なんだがねぇ…斯く言う俺も〈闇魔法〉なんて取っていますが。


そんな木材の仕込みを五日間、残りの二日間を購入した土地に戻り柵の作成に充てた。まずは、ササキさんが木材を加工し杭を造り、できた傍からアカツキさんが木槌で叩き込んでいく。俺とオオガキさんは出来上がった杭や柵用の板を運ぶ役だ。

此処で気づいたのが良かったのか、悪かったのか、木槌や釘なんかはどうしたのかアカツキさんに聴いてみたら、この前の野草を乱獲した際の報酬で買ったとの事だった。そういや金額は聴いたが、その報酬をどうするか話してなかったから、必然的にアカツキさんが管理していた事になってしまったか、悪いことをした。


勿論、全員現実世界での生活もあるため、昼飯時に一旦休憩し、再度ログインしたら今度は夕方まで頑張って柵を造る。作業が終わったら、食堂で打ち上げをして終了だ。実際に、現実世界の自分の腹は膨るわけではないが、ひと仕事終わったあとの晩酌と飯が明日への活力!!と曰うオッサンが三人も集まればそりゃぁ呑むに決まってる。

其れを、包丁片手に調理場から覗き込む俺。寂しくなんかないんだからね。くそっ羨ましいな。


それはさて置き、ようやく桶の中の片栗粉が乾燥しきったので、新しい料理を造って行きましょう。


まずは“唐揚げ”から始めるか。余った鶏肉を一口大に切り、塩・胡椒・レモンで下味をつけてから、十分に片栗粉を塗し油で揚げる。よく片栗粉を醤油・酒で溶いたモノに鶏肉を漬け込んで揚げているのを唐揚げと詠っているのをみるが、アレは竜田揚げであり、唐揚げとはちょっと違う。まぁ地域により色々と由来はあるが、旨けりゃ良いんだ、旨けりゃ。


次に甘酢餡掛け。今回は魚が無いので、なんちゃってかに玉風の具沢山卵焼きの上に、醤油・砂糖・酢を合わせた甘酢に片栗でとろみを付けてぶっ掛ける。中華の卵焼きは、兎も角油を大量に使うので、其れをアッサリ濃厚な甘酢餡で油のコッテリ感を打ち消しながらも卵の旨みを引き立てる。今の現代社会じゃ考えられないが、技術としての中華は素晴らしい。


最後に、鶏ササミを薄く切り片栗粉をタップリと塗し、沸騰したお湯にくぐらせる。塗した片栗粉がトロッと表面をコーティングし、ササミに何とも云えぬ食感を醸し出す他に、お湯にササミの旨みが逃げ出さない為。薄切りのササミにも関わらず、濃厚な旨みを味わうことができる。

この料理は、たしか京料理の手法で、吉野葛で鱧等をお吸い物の具に使ったりする為のものだが。今回はそのままで、皿に盛り付け、柑橘系の絞り汁を加えた、醤油で召し上がれ。


他にも調子にのって、何点か料理を作ったが割愛しよう。女将さん曰く…


「すごく楽しそうに料理を作るのは結構だし、美味しいからいいんだが、料理のレベルが高すぎてウチの旦那には作れ無いものがあるのが困る。これじゃメニューに出せないからあんたが居なくなったら、ウチの商売が成り立たない。」


いや、そんなに難しいモノは一つたりとも造った覚えがないんだが?


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