視察して 会話して
翌日、アカツキさんと伴に街の裏手にある荒地を見に来た。其処は、石・岩なんかは見当たらないが、見渡す限りの荒れ果てた土地。もう、《king of 荒地》の称号を上げても良いかと思える位の荒地だった。
これなら一町歩、10000Gでも納得するわ。素人目に見ても、是れなら土地代よりも開墾費用の方がかなり高く付くぞ、間違いなく。しかし、隣のアカツキさんが荒れ果てた土地を見ながら震えているぞ…あまりにもの土地の荒廃具合に、ショックで失禁したか?
「開墾じゃぁぁぁぁ!!開墾するんじゃぁぁぁ!!」
いきなり叫びだしたぞ、このおっさん。
「最近の脱サラだかなんだかして農家になった○鹿者達は、やれ機械だ、ほら農薬だと行って初めから畑として出来上がった土地を無意味に掘り起こして勝手に自爆してまた都会に逃げ帰る輩ばっかりで、牛や馬達と土地を切り拓き、作物を育て、畑を慈しみ、その土地の自然と伴に生きていくこの辛さ、面白さを全く判ろうとせんのじゃぁぁぁぁ。」
「あぁ、婆さんや、天国で見ていてくれ。ワシはこの土地で、もう一度、もう一度、農家としての自分を見つめ直し、再び、地平線の向こうまで続く黄金色の稲穂を。七色に輝く果樹園を造ってみせるぞぃ!!」
今度は、盛大に独り事が始まったぞ。なんだ、その地平線だの七色に輝くだのって盛り過ぎじゃねぇのか。
まぁ、俺も人のことは言えないな、なんて言ったって、初めてこの世界に来て、巨嘴鶏を見た気なんかほぼ同じ反応したものだ。ただ、アクマでも脳内での話だ。俺は言葉にはしていないぞ…多分。
『おい、アカツキさんよ、少しは落ち着いてくれ。ハッスルするのは良いが、今回は見学に来ただけで、まだ土地を買うなんて言ってないぞ。』
「…えっ?」
『まず、土地を買って管理するのは良いが、土地を耕す道具はどうするんだ?肥料だって調達しなきゃならんだろう。金はどうする?』
「うっ…」
『次にだ、アカツキさんは総ての〈スキル〉がまだレベル1だろう?俺も余り偉そうなことは言えないが、ある程度補正ががかかるとは云え、レベルが低いと色々と苦労するぞ。』
「うぅ…」
『最後だが、此処に畑を作るにしても。俺とアカツキさんの二人だけじゃ、出来る事なんてタカがしれている。もっと仲間を増やそうじゃないか。せっかくのゲームだ、仲間を募って冒険にも行ってみたいじゃないか。』
「……そうじゃな。せっかくのゲームだ、楽しまなきゃ損じゃな。そして、目標の為に、今を楽しむのも良いかもしれんな。」
『あぁ、そうだ。差詰め、街の入口付近の草原と森でレベルアップだ。』
「応。だがな、ワシは全くの初心者じゃから、迷惑をかけるかもしれんが、宜しく頼むぞ。」
『任せろ。俺も初心者とそう大差ないから、くたばる時は一緒だぞ。』
おっさん二人のムサ苦しい友情が此処に出来上がった。処でパーティーってのは、どうやって組んだら良いんだ?今度こそ、教えて弟よぉぉぉぉ!!
むさくるしいおっさん二人の会話回となりました。一話一話が短いのは、仕様って事で勘弁してください。