声をかけられる
さて、最近は鶏肉の料理ばかり作っていたせいか、些か鶏肉も見飽きたな。〈食材知識〉のスキルはレベルが15から全く上がらなくなってしまった…って、この台詞は、以前使った事があるな?まぁ、いいか。
で、今日も今日とて食堂の為に森に入って来ては見たが…居ないぞ。巨嘴鶏が見当たらない。なんか、巣みたいなものを見つけたので覗き込んでみたが卵が三つほど転がっていただけだ。普通の鶏の卵に比べて、倍以上も大きい卵だ。
これなら卵一つで、何人前の茶碗蒸しができるだろうか。いや、出汁巻き卵も捨てがたい。いやいや、先にマヨネーズだって出来るぞ。
これは夢が広がるなぁ…ん卵?これって、羽化しねぇかな。勿論、有精卵じゃなきゃ羽化しないのは常識だが。しかしだ、いつも狩っている巨嘴鶏って雄鶏じゃなかったのか?
そういえばモツの中に卵が有ったくらいだから雌鶏かもしれん。そういや、此処ってゲームの世界だから雌雄同体ってのもありうる話だ。これは一先ず持ち帰って調べてみよう。結局のところ、本日は巨嘴鶏が狩れなかったので、親子丼をメニューに乗せることができませんでした。
って事で、巨嘴鶏が手に入らなかった事をご主人と女将さんに相談したら、今日は臨時休業だとの事で、急遽お休みになりました。暇を潰すため、街をブラブラ歩いていたら。
「ソコのシャッチョさん、ヒマならチョットミテッテヨ!!」
何故かカタコトの日本語で呼び止められてしまった。いや、若いお嬢さんの呼び込みなら喜んで其方を見ますが、俺位のおっさんの声じゃ気持ち悪いわっ!!。こんなモノは無視しするに限る。
足早に立ち去ろうとする俺に、今度は縋り付く様に嘆願してくるおっさん。
「いやいや、すまん、悪かったって。ゴメンなさい、謝るから俺の話を聞いてください。後生ですから止まってコッチを向いてください。」
啼いて縋り付くのは、中島み○きの特権だぞ。ムサイおっさんに縋り付かれて、衆目の視線を集めても仕方がないから止まってやろう。
「やっと止まってくれたか、いやぁ~まいったまいった。」
『それは良いからとっとと手を話してくれんか?周りの視線がかなり痛いんだが…』
「おぉ、すまねぇ。いやぁな、アンタ、あれだろ?あそこの食堂で親子丼作ったっていうおっさんだろ?」
『まぁそうだが、だからどうした。っていうかお前もおっさんだろうが、用はなんだ?サインだったらやらんぞ?』
「あはは、気持ち悪いおっさんだな。だれも、サインが欲しいなんて言ってないだろ。」
初対面の相手に、おっさんおっさん連呼されるのも尺だが、互いにおっさんと言い合うのもこんがらがる。久しぶりに同年代っぽい人に会って、たわいも無い会話をするのも良いが、本題があるのだろうから、何処かの茶店にでも入って話を聞くことにしよう。それと、おっさんよ、名を名乗れ。
おっさんの名前は“アカツキ”と云う。一週間前に、この《無限世界の住人》を遠方に住む孫に進められ始めたは良いが、何をやって良いのか判らなく途方に暮れていたみたいだ。このおっさんも俺と同じ仕事一筋に生きて来た為、ゲームなんかやった事がないらしい。因みにこのおっさん、俺よりも大分年上みたいで、自分の伴侶…所謂奥さんを亡くされて大分落ち込んでいた処を、見かねたお孫さん(っても成人しているみたいだ)が、この《無限世界の住人》を薦めてくれたみたいだ。
初めてログインして周りを見渡しても、若いプレイヤーばかりだし。その若者たちは、初心者のおっさんには見向きもしない。そんな中、ひとりで森に行ったり、定食屋の前で野菜を切っていたり、果ては料理を作ったりと、エンジョイ(死語)しまくっている俺を見つけ、声をかける機会を伺っていたみたいだ。
で、最初のあのテンションの第一声は何だと聞いてみた処…
「いやぁ…ワシ、女房以外にナンパってした事ないんだよねぇ。緊張して、大分テンパっていたみたいだわ。」
頬を染め、モジモジされても気持ち悪いだけだからな。始めに言っておくが、俺はソッチのケはないからな。
『それはそうと、アカツキさんは一体何の〈スキル〉を取ったんだ?云わずもだが、俺はメインは〈料理〉だな。後は〈食材知識〉と〈植物知識〉位か。〈短剣〉と〈回避〉はおまけだ。』
「ワシは、〈農作業〉〈畜産〉〈植物知識〉かのぉ。あと、〈槌〉と〈水魔法〉だな。わし、これでも農家だし。」
正に渡りに船か?もしかすると、アノ計画が出来るかもしれん。
ん~時間の関係で、話が中途半端になってしまったけど、今日はここまで。
新キャラのおっさんは、“アカツキ”で統一します。ご指摘ありがとうございました