MMO始める。
今、俺はゲームの中の世界にいる。自分の中のゲームって云ったら、ゲーム機を繋いだテレビの前に陣取りコントローラーでカチコチ動かしていた記憶しかない。
古いと言われても、ホント小学生の頃の話だから、もうゥン十年前な話だからよく覚えていない。
しかし最近のゲームは、変なヘルメットを被って横になり、電源を入れたら別世界にこれるんだな。
でだ、何が凄いって、この自分の意志で動く腕と足だ。
一年前に交通事故に巻き込まれ、失った右腕と左足の感覚が有る。物を持つこともできるし走ることだってできる。全く対したもんだ。
これは、このゲームを教えてくれた弟に感謝をしなければいけないな。
さて、其れは兎も角として、対した説明もなく初めてしまったこのゲームだが…どうやって進めればいいのだろう?
ぶっちゃけ、この仮想現実の街に降り立つまでの過程は殆ど自動で進んできてしまった為、何をやっていいのか全くわからん。
「ログインおめでとう兄さん。」
うをっ、後ろからいきなり声をかけられた。声の方向を向くと、何やら首から下は如何わしい様な真っ黒な衣装と、ゴテゴテしたキンキラキンな装飾品で着飾った弟が居た。
『おお、弟か、吃驚させるな。しかし、大分趣味が悪い衣装だな?あれか、こすぷれって奴か?』
顔を赤くして反論してくる弟だが、“イント”だの“デックス”だの“ステータス”だの専門用語を言われても全く判らんし、軽くスルーしておこう。
まぁ、あれだ。この世界を教えてくれて感謝している事を伝えよう。
で、これからこのゲームで俺は何をすれば良いのだろ?
そんな質問に弟はこう答えた。
「やりたい事をやれば良いさ。なんたってこの世界は無限の可能性を秘めているからね。」
なんだろう、この心の奥に燻った火種が再び燃えるような感覚は…
もう一度。そう、もう一度、料理をする事が出来るって事だろうか。
やってみたい。もう一度、初めからで良い。料理の道を歩んでみたい。
弟に、このゲーム《無限世界の住人》の操作説明を聴いて、現実世界に戻ろう。自宅に帰ったら、早速始めよう。あぁ楽しみだ、これほど心が流行るのは何時以来だろう。
『で、弟よ。このゲーム、どうやって終わりにすれば良いのだ?』
あ、弟がコケた。