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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ANSWER~それでも君をアイシテル過去編~

作者: YUKI

この話はそれでも君をアイシテルの続編です。

この話は乙女ゲーム製作所「イケプロ!!」のHP内であまりにサイトの主旨とかけ離れているため掲載を断念した作品です。

救いがなく、恋愛描写なども全くありません。注意してごらんください。

answer〜それでも君をアイシテル過去編〜








「てんちょう、おみせのそうじ。おわりました。」


ユズは、片言の言葉で私にそう言った。


「あぁ、ご苦労様。それでは、こちらを手伝っておくれ。」


私は作業をやめて、彼女の方を向き直り、そう答えた。


「はい。」


私がお願いすると、彼女は素直に返事をした。





彼女の名前は、ユズ。

もとは、異国からやってきた彼女は、珍しい毛色や瞳の色をしていた。

このさびれたドールショップに突然やってきて、私の人形に惚れ込んだから弟子にしてほしいと頼み込んできた変わった娘だ。


私は店番を雇うための金もないし、はじめは当然断ったのだが、彼女は給金がなくてもかまわないと言うので、仕方なく、ドールショップと自宅と工房を兼ねているこの家に置いてやることにした。



ユズは美しい娘だった。

人形を見に来たはずの客がいつのまにか彼女に見入ってしまう、それだけの魅力が彼女にはあった。



彼女がいては、人形が売れない。




だから、彼女はよく働いてくれるが、店にはほとんど出すことはなく、工房で手伝いをさせたり、閉店した店の片付けをお願いすることにした。


もともと人形作りを学びたかった彼女は、むしろそれをとても喜んでいた。




「あの、てんちょう?」


「?……どうした、ユズ。」


急に手伝いをしてくれていたユズの手が止まった。


こんなことは、珍しい。


いつもの彼女ならば、私が止めようと言うまで無言で黙々と作業をするというのに。


どうやら、彼女には聞きたいことがあるらしい。


まぁ、その疑問が何なのかは大体予想が付いていた。


「どうして、わたしにはにんぎょうのお洋服しかつくらせてもらえないのですか?」


私は、彼女にはいつも人形の洋服づくりばかり頼んでいた。


たしかに、彼女に人形の服を作らせて既に一年以上が経つ。


彼女はその疑問を持つことは予想していた。



「お前はまだ未熟だからだよ。」


私は、用意していた答えを言った。


「でも、ここにきて、ずいぶんたちました。そろそろ……おしえてはくれないのですか?」


彼女は、今までも何度もそれを言おうとして我慢していたのだろう。

表情にも若干の不満がうかがえた。



仕方ない。

少し話をしなければならないようだな。




「…そうだな、お前も随分手先が器用になったし、仕事も早くなった。そろそろ人形の作り方を教えてもいいかもしれないな。」


「ほんとうですか?!」


彼女は途端に嬉しそうな顔をした。


本当に、この娘の表情はコロコロと変わる。



「あぁ、少し話をしなければならないな。お茶を用意しよう。」


「あっ…それならわたしが。」


「いや、いいんだ。たまには私が淹れるよ。君は少し休んでいなさい。」


「ありがとうございます」





















「さて、人形作りの話をしようか。」


私は自分と彼女のお茶を淹れ戻ってきてからしばらくしてこう切り出した。


「はい、おねがいします!」


ユズはとても張り切っている様子が見て取れた。


私はそんな彼女の様子に思わず小さく笑ってしまった。



「私の人形は、特殊でね。その工法は私以外は現在誰も知らないんだ。」



「だから、なかなかわたしにおしえてくれなかったんですね。」



「そう。でも、お前もここにきてから随分経つ。私は、お前にならば私の全てを見せてもいい思う。」



口の軽いものに、私の人形の作り方をバラされては困る。


だから私は自分の編み出した人形の作り方を他人には明かさない。


まぁ……けして、誰もが真似できるものではないのだが。



「わたし、がんばります。がんばって、てんちょうのようなさくひんを、つくりたいです!」


ユズは確かにそう言った。


「………よろしい。それでは…付いてきなさい。」







お前に全てを見せてあげよう。





































一年もこのドールショップにいるのに、この店に地下があるのは、初めて知った。


うす暗く、寒いこの店の地下。


素晴らしい人形というのは、こんな環境で作られるのだろうか?









一年前、この店の前を通った時、店の前に飾られていた人形に私は大きな衝撃を受けた。



私の国にはない技術が用いられた、まるで今にも動き出しそうなその人形。


肌の質感はなめらかで、ぽってりとした唇は、弾力があるかのようにハリを持っている。


何より瞳は従来のガラス玉を思わせない、みずみずしさを持ち、今にも涙を流しそうだった。



私はすぐにその人形に惚れ込んだ。


そして、店の男に弟子入りを志願した。


男は、私を迷惑がっているようだったが、何度も何度もしつこくお願いし、ついにはこの家に置いてもらえることになった。




人形の為なら何でもやった。


早く一人前になって、自分もその技術を手に入れたかった。







そして、今日ついに念願叶う日が来た。


ようやく、人形の作り方がわかる。






それにしても、なぜだろう?


この薄暗さのせいで感覚がおかしくなっているのだろうか?


さきほどから……足がおぼつかない。


まるで柔らかい床を歩いているような、そんな感じがする。





何段下りたかわからない階段を経て、私はようやくその部屋に着いた。





この香りは…なんだろう…


独特の鼻に付く香り…それに…これは…鉄の匂い?









「今、電気をつける。」


彼の声は聞こえるが、姿は見えない。


足音が遠ざかってくのがわかった。














パチリ。











スイッチが入っても、その部屋はすぐには明るくならない。









徐々にぼんやり視界が開けてくる











なにかが…ぶらさがっている…。





あれは…足のパーツだろうか?









あっちは手…。








あっちは胴体……










ようやくはっきりと見えてきたパーツに、私ははっと息をのんだ。



















これは…人形のパーツのはずだ。














ならば…











ならば…

















何故、接合部が赤黒くなっているのだろう?

























何故、骨のような白い突起が見えるのだろう





















「わかるか?私の人形には特別な材料が必要だ。」



いつの間にか、男は私の背後にいた。












人形?











笑わせるな。





















これは……


















ツギハギの死体じゃないか。
























「どうだ、私が最高のパーツだけを集めた…人形は…」



「いっ………いやぁあああああああああああああああああ!!!」















私はその部屋の出口へかけだした。







しかし、足がもつれて転んでしまう。











「おやおや、そんな風に転んで…傷にでもなったらどうする?」









男はゆっくりと…確実に私と距離を縮めてくる。









「いっ…いや……こないで…」










どうして…



足が動かない…



視界がゆがむ…




逃げないと…





逃げないといけないのに…。













「君がさっき飲んだお茶に薬が入っていたんだよ。君はこのまま眠るように死ぬ。」





男は冷静にそう言った。




なにをいってるの…




だって…




だって…





「にんぎょうのっ……つくりかたをっ………おしえて…くれるん…じゃ……。」



「教えてやっただろう?まぁ、お前を人形にするとは言わなかったが。」




「わたしがっ……にんぎょうっ……?……」





私も……あぁなってしまうの?





「お前は美しい…。喜べ、そのパーツ分けることなく、全て使ってやる。」



男は私の足をさすりながら不気味に笑った。



「いっ…いやだッ……しにたくないっ……」





「なぜ泣くんだ?永遠に年を取らず、誰もがお前に目を止めるような人形にしてやるのに。」












狂ってる………








そんなものほしくない……







他の人形になった少女たちも、こんな思いをしたのだろうか?…













あの人形は……

















あんなに美しかったのに……







































通りに面したショーウィンドーに飾られたその人形は、そこを通る誰もがふりかえるような最高傑作となった。


今では、さびれていたドールショップにも随分と人が入る。


大金を出してもうちの人形をほしがる人間が大勢いるので、店は大繁盛だ。



まさか、生きている時よりもいい働きをしてくれるとは。


彼女は本当に良い人形だ。



「オーナー、この人形、新作かい?」


客の男が私に聞いた。



「えぇ、でもそれは非売品なのですよ。うちの看板のようなものですから。」




「そうか…。変わった毛色や瞳の色をしているな。

 今にも動き出しそうだ。名前はなんていうんだい?」







「名前は……ユズです。」














ユズ…

お前は、ここで永遠に、その美しさを保ち続けるんだ。






幸せだろ?




















誰か…私を連れ出して。

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