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第三章(1) 気になるあの娘の部活動

 テストが終わり、ようやく授業が本格化し始めた新学期の三週目の月曜日。

 静樹の課題は次のステージに移っていた。

「それで、静樹。今日はどこの部の見学に行くんだ? バスケ部? 剣道部? それとも、吹奏楽部かい?」

「剣道部は木曜、バスケ部は金曜日にもう行ってきた。吹奏楽部は無理。俺、オタマジャクシが読めねぇからな」

 バツ印が並んだ部活一覧表を眺めながら、静樹が髪をかき上げる。

「あ~あ。テストなんかより、ずっと楽な課題だと思ったんだけどな」

 手に持っていたシャーペンを机に転がすと、静樹は難しそうな顔をして、青春の掛け声が響くグランドへと視線を落とした。

「確かに、聞く分には簡単そうだけどね。『一週間以内に部活、または同好会に入部すること』なんてさ」

「だろ。俺も完全に油断してた。考えてみたら、そう簡単に入部させてくれるはずがないんだよな。俺を」

 静樹は入部に当たり部活動見学に回った先週末のことを思い出した。

 一言で言うなら、門前払いだ。それもそうだろう。どこの部活に行っても、部員の半数以上がどこかのファンクラブに所属していて、完全に静樹を敵視しているのだから。

 ファンクラブメンバーじゃない人が部長を務める部活もあったが、さすがに部員の半数以上の反対を押し切るのは難しい。それに、無理に部に加えれば、チームワークに波紋を呼ぶことになる。

 結果、すぐにクリアできると思った課題は、次週に持ち越しとなり現在に至るのだ。

「まぁ、冷静に考えてみれば、これも十分に無理難題だね。ちなみに、静樹。次の条件で、部員の中に一人もファンクラブのメンバーがいない確率って、何パーセントぐらいだと思う?」

・部員の数は最低でも5人

・八斗高校2年生120人のうち、ファンクラブのメンバーは8割(96人)。

「確率は、まだ習ってないから分かんねぇよ。そうだな、……10%ぐらいじゃないのか?」

 静樹が今までに全部の部活で断られたことを思い出しながら答えると、京介は妙に生温かい表情を浮かべながら首を横に振った。

「ざんねん、外れ。この確率は、『1、引く、少なくとも一人はファンクラブのメンバーである確率』で求められるんだけど。それで、具体的な式だと、『1、引く、120C5分の24C5』。これを小数点第3位までで計算すると『1、引く、99.925』。つまり0.075%だよ」

「……マジで?」

 具体的かつ絶望的な数値に、静樹の顔が引き攣った。

「まぁ、これは部員数が5人としたときの数値だけど。あくまで2年生だけで出した結果だからね。全生徒で考えると、まぁ、それこそ天文学的な数値になるわけだ。どう、参考になった」

 穏やかな笑みを浮かべる京介に、「まぁ……」と呟きながら席を立ち、楽観的に笑って答えた。

「零パーセント、って分けじゃないんだろ」

 期待通りの返答に、京介は思わず噴き出した。

「そう言うことになるね。それに、実際のところ幽霊部員とかもあるし、小さい部ならもっと希望はある。そんな部でよかったら幾つか候補があるけど、知りたいかい?」

 胸ポケットからスマートフォンを取り出した京介が、それを静樹の目の前で揺らして見せる。

 静樹は少し考える仕草を見せると、小さく笑って訊ねた。

「いくらだ?」

「一部800円。税抜き」

「だろうと思ったよ」

 ブレない幼馴染に静樹は元気を取り戻すと、カバンを手に持って席から立ち上がった。

「いいよ。せっかく部活に入るなら、ちゃんと部活動をやりたいしな。その辺は、自分の眼で見極めるさ」

「静樹。前々から思ってたんだけど、そんなに真面目で肩凝らないかい?」

「全っ然!」

 白い歯を見せて即答した静樹は、後ろを振り向かずに京介に手を振ると、残った部活に目を通しながら教室を後にした。


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